フィンランド流。ミニマリスト製造ハウス 「Nolla Cabin」
ここは北欧の国フィンランド。首都のヘルシンキから少し南東に位置する島Vallisaari(ヴァッリサーリ)。2016年から一般人がアクセス可能になったばかりで、今注目を集めている島だ。
フィンランドの厳しい自然のため、この島は5月から9月までの限られた期間しかアクセスが許されていないが、首都ヘルシンキのカウッパトリから水上フェリーが出ており、およそ20分で行くことができる。そのため、ヘルシンキの人がピクニックや、自然に触れ親しみたい時に出かける人気の場所となりつつある。今回紹介するのは、そんな自然豊かな島にある小さなキャビン。
ビーチの目の前に佇む三角形の家。名前はNolla Cabin(ノラ・キャビン)、Nollaはフィンランド語で「0」を意味する言葉だ。
この小さな三角形の家は、地元フィンランドの建築会社のStudio Mr. Falck(スタジオ・ミスターフラック)の代表であるRobin Falck(ロビン・フラック)によって設計された。すべての側面で「周りの自然に配慮する」というイデオロギーを持っていて、「建っている」というよりもむしろ「置いてある」という言葉の方がしっくりくるのかもしれない。
あえて意図的にローテクなアプローチを使い、主に松の木やベニア板などの木材を使って設計されている。再生可能な素材で、地元で採られた素材、つまり環境に優しくなるように建設された。
総面積は9平方メートルほどなので非常に軽く、重機などを使う必要もなく簡単に運ぶことができる。スクリュードライバーなども使わず、ピース上のパネルを嵌め合わすだけで建設可能なので、解体や再構築も簡単だ。
先ほど述べたように面積は、たった9平方メートルほど。「家の狭さ」という特徴のおかげで、むしろ「少ないもの」で生活せざるをえない。
しかし、そんな面積でも十分に充実した生活を送ることができる。
中を覗いてみればそれがわかる。扉を開けて見えるのは、2台のベットと1つの小さな机。シンプルでも機能的で、美しい北欧デザインの遺伝子が組み込まれ、ミニマリズムを体現している。
「トイレやシャワーはないの?」と思われたかもしれない。しかし、そもそも伝統的に、室内にトイレやシャワーを作らないのが北欧人流。
ここの滞在者は、水源を700メートル離れたところから汲んでくる。スペースの削減になるだけでなく、「人間から出た汚れをためずに自然に返す」という人間の根源的な活動を通じて、日頃の生活を見直し、新たな気づきを得ることができる。
壁の側面は三角形の大きな一枚窓になっており、そこから見えるのは美しいオーシャンビュー。「置いた」ロケーションのおかげで景色を遮るものは何もない。
外から中を覗いてみると、中と外の境界線がないように見え、まるでそのまま寝室に通り抜けられるように感じる。
三角形を形作る屋根の側面部分は鏡面加工を施しているため、ある方向から見ると背景が消えて見え自然と同化する。
このスモールハウスが置かれているのはゴツゴツした岩の上だ。もし地面などを掘り、柱を「建てる」という方法をとれば、このような岩の上に建築することは難しくなる。しかし、このように「置く」スタイルをとることによって、どのようなロケーションでも対応できるスモールハウスとなっている。加えてこのように「置く」ことによって、環境に害を与えることなく、設置が可能となるのだ。
シンプルなライフスタイルを送れば、排出物を「Nolla」、つまり「0」にできるのだ。
この家は他でもなく、都会に住む新たなミニマリストを生むために作られたといっても過言ではない。そして、キャビン、ロケーションなどトータルして、忙しい都会の生活を忘れて、リラックスするための理想の場所ということができるだろう。
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