小屋×都市 #03 出会いと「ありがとう」がある小屋|都市を科学する〜小屋編〜 – オンデザインパートナーズ×YADOKARI

イラスト:千代田彩華

好きなことをやって、「ありがとう」と言われる。
そんなささやかな夢を、叶える小屋がある。
ほしいのは小屋そのものより、
出会いや、おもてなしの機会なのかもしれない。

人と出会う小屋

小屋は人と出会い、交流する場になる。

まず、小屋のかわいらしい姿が、人を惹き付ける。

ペットの犬をモチーフにしたコーヒースタンド。子どもたちに人気があり、似たような犬を飼う人にも親しんでもらっているという

 

自分が楽しいことを、集まってきた人に楽しんでもらえるようにする。

本が好きなら、移動本屋も良い。

本が好きな三田さんによる移動本屋「BOOK TRUCK」。様々なイベントに出店し、交流を楽しんでいる

 

前回記事で紹介した庭の音楽室も、玄関を開いて人を招けばコンサートステージだ。

小屋の中にはピアノも。 とっても小さな庭先音楽室 「Music studio」
Via: https://www.dezeen.com

 

人を集めて、ワークショップを開くこともできる。

味噌や醤油を製造する五味醤油(甲府市)は、富士山のような形の小屋で味噌作りワークショップを開いている

 

ちょうどよいサイズ感と、機動力

移動力を備えておけば、よりたくさんの人と触れ合える。

アメリカ各地を巡った、パタゴニアの古着お直しツアー「The Worn Wear Mobile Tour」
Via: wornwear.patagonia.com

 

工夫次第で移動力に加え、機能性も兼ね備えられる。

コンテナを使った飲食キオスク「PORCHETTA」。開閉式の三方の壁がデッキになる
© MUVBOX

 

小さく商売を始めるなら、軽トラックくらいのサイズも良さそうだ。

軽トラックを改造してつくったコーヒースタンド

 

キッチンカーも、いろいろなところで見かけるようになった。

イベントで見かけたビアスタンドとドイツ家庭料理店。店主は、飲食を通じたふれあいを副業として楽しんでいた

 

屋台や自転車も

厳密な小屋ではないが、簡易的な「屋台」も選択肢になる。

スペインのビルバオで活動する「世界一美しいホットドッグ屋」
Via: https://www.designboom.com

 

ダンボールの”屋台”でも「コミュニケーションツール」や「遊び道具」としての役割を果たす。

お金を投入すると、似顔絵を書いてもらえる「THE MACHINE」。もしもお店が動いたら。もしもお家が動くならより

 

「まずは小さくても、自分の店を持ちたい」という夢を叶えるのは、こんな形からなのかもしれない。

三輪自転車を改造した移動ケーキ屋さん。なぜ路上でケーキ屋をするのか?POMPON CAKESの立道さんに聞く小商いより

 

「ありがとう」を交わす小屋

自分の好きな世界に、人を招いてみる。
得意なことを、誰かのためにやってみる。
お店を、小さく始めてみる。
そうしてホスピタリティを発揮し、誰かに「ありがとう」と言われる。

小屋は、そんな夢を叶えるための、ちょうどよいツールになる。
(了)

【都市科学メモ】

小屋の魅力

人と交流するツールになる

生きる特性

外観の訴求力・発信力、開放性、移動能力、小さく始められる気軽さ

結果(得られるもの)

交流の場と機会、小さな商売・収入、「ありがとう」、笑顔

手段、方法、プロセスなど

交流のテーマや方法を考える
小屋はあくまでツール。何をテーマに、どんな交流をしたいのかが大切だ。趣味なのか、商売なのか、あるいはボランティアなのか。自分が好きなことをベースに考えたい。それが決まれば、どんな小屋が良いのか、屋台でも良いのか、移動能力は必要なのか、などの機能面を検討しやすくなる。
市販品を活用する
目的に合った「タイニーハウス」や「屋台」を購入して、自分なりのアレンジを加えていくこともできる。下記は参考サイト
TINYHOUSE ORCHESTRA
WOODPRO BASE Web Store
とにかくやってみる
「交流すること」「小商いすること」が大事なのであれば、まずはできることからやってみよう。地元のフリーマーケットに出店したり、自転車の荷台に箱をひとつ載せたりするだけで、ひとまず実現できるかもしれない。そして楽しかったら「小屋」への発展を考えれば良い。
【Theory and Feeling(研究後記)】
ぼくが欲しいのは、この「交流」目的のモバイルハウス。望遠鏡を積んでおいて天体観測会をやったり、パソコンの映像を壁に投影して「バーチャル宇宙旅行実演」や科学ワークショップやったりしたいんですよね(筆者はもともと天文少年で、以前は科学館に務めてました)。

コーヒーやビールを楽しみながら交流して、そのまま眠れる場所になるような。


こんな感じのことを、あちらこちらでできるようにしたい

ただ、1人でやるのはちょっと寂しい気がするので、仲間を探したいです。(たに)

 

2018.11.27 イベント開催!

こちらの連載と連動して、都市を科学する〜小屋編〜「第1回:人はなぜ小屋に惹かれるのか?〜まちの中の小さな居場所を紐解く〜」|オンデザイン×YADOKARIを2018.11.27 イベント開催します。詳細は以下より。
都市を科学する〜小屋編〜「第1回:人はなぜ小屋に惹かれるのか?〜まちの中の小さな居場所を紐解く〜」|オンデザイン×YADOKARI

 

「都市を科学する」の「小屋編」は、横浜市の建築設計事務所「オンデザイン」内で都市を科学する「アーバン・サイエンス・ラボ」と、「住」の視点から新たな豊かさを考え、実践し、発信するメディア「YADOKARI」の共同企画です。下記の4人で調査、研究、連載いたします。

谷 明洋(Akihiro Tani)
アーバン・サイエンス・ラボ主任研究員/科学コミュニケーター/星空と宇宙の案内人
1980年静岡市生まれ。天文少年→農学部→新聞記者→科学コミュニケーター(日本科学未来館)を経て、2018年からオンデザイン内の「アーバン・サイエンス・ラボ」主任研究員。「科学」して「伝える」活動を、「都市」をテーマに実践中。新たな「問い」や「視点」との出合いが楽しみ。個人活動で「星空と宇宙の案内人」などもやっています。

小泉 瑛一(Yoichi Koizumi)
建築家/ワークショップデザイナー/アーバン・サイエンス・ラボ研究員
1985年群馬県生まれ愛知県育ち、2010年横浜国立大学工学部卒業。2011年からオンデザイン。2011年ISHINOMAKI 2.0、2015年-2016年首都大学東京特任助教。参加型まちづくりやタクティカルアーバニズム、自転車交通を始めとしたモビリティといったキーワードを軸に、都市の未来を科学していきたいと考えています。

さわだいっせい / ウエスギセイタ
YADOKARI株式会社 共同代表取締役
住まいと暮らし・働き方の原点を問い直し、これからを考えるソーシャルデザインカンパニー「YADOKARI」。住まいや暮らしに関わる企画プロデュース、空き家・空き地の再活用、まちづくり支援、イベント・ワークショップなどを主に手がける。

また、世界中の小さな家やミニマルライフ事例を紹介する「YADOKARI(旧:未来住まい方会議)」、小さな暮らしを知る・体験する・実践するための「TINYHOUSE ORCHESTRA」を運営。250万円の移動式スモールハウス「INSPIRATION」や小屋型スモールハウス「THE SKELETON HUT」を発表。全国の遊休不動産・空き家のリユース情報を扱う「休日不動産」などを企画・運営。黒川紀章設計「中銀カプセルタワー」などの名建築の保全・再生や、可動産を活用した「TInys Yokohama Hinodecho」、「BETTARA STAND 日本橋(閉店)」などの施設を企画・運営。著書に「ニッポンの新しい小屋暮らし」「アイム・ミニマリスト」「未来住まい方会議」「月極本」などがある。