アルミニウムの殻を被ったSFチックな円筒形の物体は、どんな過酷な環境でも耐えられるプレファブキャビン。フラットパックのキットで配送され、現地で組み立てられます。地形に応じて、木や崖から吊るすことも可能。おにぎりみたいに転がる心配はないんでしょうか？

「Fuselage（飛行機の機体）」は、英国 Tree Tentsが2018年に発表したキャビン。同社は、木から吊るすプレファブ式テントを、グランピング施設向けに提供しています。Fuselageは、航空宇宙学にインスパイアされたデザインとのことですが、ひさし部分を含めてどちらかというと防犯カメラに似ている印象。ポータブルな軽量キャビンは、防水・耐食性にすぐれたアルミニウムで守られているため、高地の森林地帯やウォーターフロントなど、あらゆる地形や気候に適応できます。

Fuselageの大きさは、長さ5.3m・幅2.9mで、80%リサイクル・アルミニウムのシェルで覆われた、持続可能な木材を使用したフレームで構成されています。クジラの肋骨のようなフレーム構造は、4つのアルミ製チューブの背骨によって支持されます。

フレームのCNCフライスでカットされたマリングレード合板は、できるだけ軽量になるように設計されており、それぞれが構造の負荷を分散させる仕組みになっています。合板フレームは、吊り下げワイヤーの取り付けポイントが均等になるように、一定の間隔で配置されています。これによって、キャビンをワイヤーと大きなベルトを接続して木から吊り下げたり、ボルトを使って岩に取り付けることが可能になっています。

Fuselageは、地元から調達されたリサイクル可能な材料で造られ、無駄を最小限に抑える製造工程を通してサステナビリティに貢献しています。重機を使用せずに支柱によって高床式に設置できるので、基礎工事が不要になり環境負荷を低減します。

キャビンは、テーブルとシートを展開してセットアップするダブルベッドと、サイドの2段ベッドで2〜4名が宿泊可能。両端には2重ガラス窓が設置され、ランドスケープを望む寝室の開閉式ウィンドウから、新鮮な空気を取り込むこともできます。寝室と逆側にあるエントランスの外には、小さなウッドデッキが接続されています。ロケーションによって、前後どちらの方向を向かせて設置させるかも自由です。

キャビンの壁は、3層構造の断熱材を使用してバーチ材で内張りされていますが、極寒地でも快適に過ごせるように、薪ストーブや放射暖房をオプションで追加可能です。その他のオプションとして、エアコン、ソーラーパネルとバッテリーを備えたオフグリッド電力システム、アルミニウムに代わる木材の外装、トイレ・シャワー付きバスルーム、簡易キッチンなどが選択できます。

Fuselageのベーシックモデルは、26,000ポンド（約385万円）に税金と設置費用を加えた価格から。モジュール構造は1.5m単位で拡張することもできます。

キャビンは、プレファブ製作されたキットの形でフラットパックにて届けられます。構造のカスタマイズやオプションによって日程は変化しますが、納品までの期間は通常6〜8週間とのこと。自力で組み立てて設置することも、Tree Tentsの専門チームに依頼することも可能です。専門チームの場合なら、およそ2〜4日で設置完了できるとのことです。

Tree Tentsは現在、ニューモデルの「オクラ」を開発中。こちらは地上設置タイプのグランドキャビンです。

木から吊るしたキャビンなら地面に定着していないので、日本では建築物とならずに、建築確認取得や固定資産税が不要になるかも。一瞬いいアイデアかと思いましたが、自動車が吹き飛ばされるほどの大型台風が来たら、ころころと転がっていくようで不安です。

Via:
treetents.co.uk
instagram.com/_tree_tents/
newatlas.com