昔ながらの木の古屋をオマージュしたスモールハウス「Kynttilä tiny house」
ここは北欧フィンランド。
その西部、Nunnanniemi(ヌナニエミ)半島の森の中。
フィンランドらしい針葉樹林の森の中を進んでみるとひっそりとただずむのは昔ながらの木の古屋をオマージュしたようなタイニーハウス。
フィンランドの首都、ヘルシンキに本拠を置く建築会社「ORTRAUM Architects(オートラウム・アーキテクツ)」がこのタイニーハウスを設計した。
大きさは13.94平方メートルほどと、見た目の細長さ通りに非常に小さい。
正面からみた姿は素朴そのもの。
まるで、本当にムーミンが住んでいて、扉からひょっこりと出てきそうな雰囲気さえある。
このタイニーハウスはオフグリッドハウスでもある。
建築材としては、見ての通りほとんどが木材だ。
外壁は白のカラマツ材を使用し、スッキリとシンプルな印象に。
内壁にはCLT – クロス・ラミネーティッド・ティンバーを使用したものを使用した。
CLTは「ひき板を繊維方向が直交するように積層接着したパネル」で断熱性や遮炎性、遮熱性、遮音性に優れ、木材であるため、循環型資源であり、サステイナビリティの観点でも優れている。
加えて、プレハブ形式であるため、組み立ても取り壊しも非常に簡単で、なんとわずか1日でこのタイニーハウスは組み立てることができる。
通常、建築の工数が多くなり、建築期間が伸びれば伸びるほど、その自然に人が介在することになり、良くも悪くもその環境になんらかの影響を与えてしまうのだが、今回のこのタイニーハウスでは、その点においても周りの自然に与える影響を極力減らすことができる。
この古屋の名前は「Kynttilä tiny house(キンテラ・タイニー・ハウス)」
「Kynttilä」はフィンランド語でキャンドル、蝋燭を意味する言葉だ。
この、タイニーハウスは主に瞑想をするために作られ、また、日本の「禅」からインスパイアを受けて作成された。
それを反映してか非常にシンプルながら、スタイリッシュなモダンさを感じるデザインだ。
また、太古の昔から北欧神話が根付くこの土地にあることが、一際、その神聖な雰囲気を醸し出す。
ここでの暗がりにキャンドルに火を灯せば、そのスピリチュアルな雰囲気は他に勝るものはないものとなるだろう
その言葉通り、電気ではなくキャンドルに照らされた、火の灯りが非常によくマッチする。
タイニーハウスの入り口の反対側は、一面全て窓ガラスとなっている。
ここから、周りの環境、自然と直にコミュニケーションをとることができ、自分もその中で生きているということが理解できるデザインになっている。
ここから、朝の日の光が差し込み、その日の天気がわかり、1日のリズムを作ってくれるのがこのガラス窓の機能だ。
朝目覚めた時に見える景色は何にも変え難い贅沢だ。
近くに湖もあり、朝や夕方に表情を変えるその様子は素直に感動を覚える。
また窓側には小さなテラスがある。
このテラスの上にはタイニーハウスの屋根から飛び出た軒が上にあるため、雨が降ってきたとしても安心だ。
下に薪の貯蔵スペースもあり、ここに置いておけば雨に濡れてベチャベチャになる心配もなく、安心して火を灯す薪として使える。
中に入れば、フルサイズのベッドがすっぽり入るほどのスペースがあるのみだ。
かとおもえば、はしごをつかって2階部分にもアクセスでき、そこにもバンクベッドがあるため、必ずしも一人用のキャビンというわけではない。
ミニマリズムと禅、北欧神話と日本神話の思想はつながるところがあり、互いにいい影響を与えながら進歩し、その一つがこのような美しいタイニーハウスへと具現化して現れているのかもしれない。