【アフターレポート】二拠点居住の先輩や仲間に出会える! やまなし二拠点居住体験ツアー

新型コロナウイルスの影響でリモートワークが浸透し、多くの人の暮らしや働き方が変化しました。住む場所にとらわれずに働く場所を選び、働く場所にとらわれずに住む場所を選ぶ。コロナ禍で奪われてしまった自由も多いけれど、新たに獲得した自由もあるのではないでしょうか。

山梨県では、移住はもちろんのこと、都市部と地方部の双方に生活と仕事の拠点を持つライフスタイル「二拠点居住」を推進しています。やまなしでの暮らしをより具体的にイメージするために、やまなし暮らしの実践者の方々をゲストに迎え、昨年の秋より3回のオンラインセミナーを開催してきました。

そのイベントシリーズ「二拠点居住と山梨」の最後を飾ったのが、3月5日(土)に開催された「やまなし二拠点居住体験ツアー」です。当初は、甲府、富士吉田、北杜・韮崎の3コースを巡る現地ツアーを予定していましたが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で実地ツアーをオンラインツアーに変更しての開催となりました。

移住の足がかりとなる2つの施設の紹介、そして先輩移住者やこれからやまなしへの移住や二拠点居住を考えている仲間との交流が行われ、オンラインながら、やまなし暮らしへの気持ちがグッと高まるイベントになっていました。

Living Anywhere Commons 八ヶ岳北杜(北杜市)

1つ目の施設は、北杜市にある「LivingAnywhere Commons 八ヶ岳北杜」。プロデューサー兼コミュニティマネージャーの渡鳥ジョニーさんが施設を案内してくださいました。

webデザイナーとしても活躍するジョニーさんは、コロナ禍の遥か昔からリモートワーク、そして多拠点生活を実践し、日本全国様々な場所で仕事をしてきたといいます。八ヶ岳が肌に合っていたこと、そして色々なご縁が繋がったことで、2020年にLivingAnywhere Commons 八ヶ岳北杜を立ち上げ、住み込みでプロデューサー兼コミュニティマネージャーとして活動しています。

「LivingAnywhere Commons」は、共用の生活拠点であるシェアハウスとコワーキングスペースの特徴をあわせ持つコリビングサービスで、全国20都道府県32拠点を展開しています(2022年3月末時点)。日本最大級の物件情報サイト「LIFULL HOME’S」でお馴染みの株式会社LIFULLが運営しており、「全国各地にある拠点を利用しながら地域住民やコミュニティメンバーとの出会いを通じてどんな場所でも自由に働き・暮らせる将来の実現を目指しています。(参照:https://livinganywherecommons.com/corporation/)。

32拠点のうちの一つである「LivingAnywhere Commons 八ヶ岳北杜」は、もともと企業の保養所であった土地と建物を有効活用し、「『住・働・遊・学』のすべてがある場所」づくりを行っています。暮らしながら新しい働き方や暮らし方を試すことのできる実験場(リビングラボ)として、様々な企業や業者と共に、日々実証実験も行っているそうです。

「LivingAnywhere Commons 八ヶ岳北杜」は、八ヶ岳の南嶺、標高1000メートルに位置し、夏は涼しく冬は寒い場所です。しかし降雪量はあまり多くないため、山梨県のなかでも比較的暮らしやすいと言われています。水が綺麗でオーガニック系の農家さんも多いため、ジョニーさんいわく、美味しいお酒や食べ物がたくさんあるまちだそう。東京からわずか2時間半で到着するにもかかわらず、360度山々が望めるとても見晴らしの良い施設です。

ここからは、写真と共に施設をご紹介します。まず、建物に入ってすぐのところにあるラウンジスぺース。ここは利用者の方々が談笑したり仕事をしたりと、自由に使えるスペースだそうです。

ラウンジ横にあるワークスペースには、集中して作業ができる個室ブースが設けられているほか、プロダクトデザインや建築関係の仕事をしている人向けに、レーザーカッターやVRゴーグルも設置されており、幅広い職種の方が気兼ねなく利用できる空間となっています。

1階の奥には本格的な料理をつくることもできる共有のキッチンスペース、さらにその隣には食事やミーティングができる広々とした食堂スペースがあります。

1階と2階には宿泊用の個室があります。和室と洋室の2パターンあり、それぞれのお部屋にお手洗いや洗面台もついています。

そして2階の奥にあるのが、自慢のお風呂!男湯・女湯共に、晴れていたら浴槽から大きな富士山が見えるとのこと。朝風呂が最高に気持ちいいそうですよ!脱衣所の前には洗濯スペースもあるため、心おきなく長期滞在ができますね。

2階にも共有スペースがあり、こちらでは利用者の方がお酒を飲んだりと、交流の場となっているそうです。

建物を出て地下に回ると、工房スペースが。こちらにもデジタルファブリケーションが設置されているため、会員の方は家具やモバイルハウスを作ったりしているそうです。

最後にご紹介するのは、建物の前にある3000平米の広大な更地です。焚き火を焚いたり、ヤギを飼ったり、サウナトラックでととのったりと、心身ともにリラックスすることができる空間になっています。テントの奥には川があるため、サウナに入り、水風呂として川に浸かり、戻ってきて富士山を見ながら安らぐこともできるそうです。

3月にはグランピング施設がオープンし、水、電気などのインフラから切り離されたなかでどこまで都市型の生活ができるのかというオフグリッド生活の実験場として活用していく予定だそうです(イベントが行われた3月5日時点では準備中)。

ジョニーさん「LivingAnywhere Commons 八ヶ岳北杜は、新しいチルとワークのスタイルをみんなで楽しみながら実験していく場所です。もし新生活が上手くいかなくても困らないくらいお安い価格でやっているし、東京からも近いので、まずは足を運んでもらうと良いと思います。一度やまなし暮らしを体験してもらうと、良さが分かるんじゃないかな。うちでの滞在を足がかりにして移住先を探す人も結構いるので、そういう使い方もしていただけたらと思っています。」

アメリカヤ(韮崎市)

2つ目の施設は、韮崎市にある「アメリカヤ」。アメリカヤを運営する、リノベーションに特化した建築会社「IROHA CRAFT(株式会社アトリエいろは一級建築士事務所)」の代表である千葉健司さんが施設を案内してくださいました。

千葉さんが登壇した第1回目のオンラインレポートの記事はこちら

https://yadokari.net/uncategorized/72731/

1967年に建設されて以来、韮崎市のシンボル的存在だったアメリカヤ。しかしオーナー様の逝去によって空きビルとなり、15年以上が経った頃には、千葉さんいわく「お化け屋敷のような状態」だったそう。

「これからは作る建築士よりも直す建築士が重宝される」と考え、リノベーションに重点を置いて仕事をしてきた千葉さんは、その集大成として、韮崎高校時代に憧れていた「アメリカヤ」ビルのリノベーションに着手しました。

地元の方の力も借りながらリノベーションした「新生アメリカヤ」は、2018年4月に複合商業施設としてオープンし、地元・韮崎はもちろん、日本全国のメディアに取り上げられるなど、大きな反響を呼んでいます。アメリカヤを足がかりに韮崎市へ移住する方も多く、移住者と地元の人が共存しながらまちを盛り上げているそうです。

屋上には、アメリカヤを象徴する看板が。こちらは55年前の建設当時のものを、手を加えずにそのまま残しているそうです。天気が良い日には、富士山はもちろん、八ヶ岳、茅ヶ岳など、360度、山梨県の代表的な山々を眺めることができるんだとか。4階にある「IROHA CRAFT」の事務所に声をかければ、どなたでも屋上に登ることができるそうです。

屋上から外階段を降りると、5階にはどなたでも自由に利用できる、開放的な共有スペースがあります。Wi-Fiも完備されているので、大きな窓から富士山を眺めながら仕事をすることもできちゃいます!

4階は「IROHA CRAFT」のオフィスとして使われており、千葉さんイチオシのバルコニーがあるそうです。

3階には5つのブースがあり、1つはお花屋さんのアトリエとして使用されています。店主さんは韮崎市出身で、昨年の10月に東京からUターンしたそうです。

店主さん「東京で10年働いていましたが、いずれは地元に帰ってきたいと思ってました。コロナ禍の影響もあり、このタイミングでUターンして、アメリカヤでお花に携わる仕事を始めました。お客さんのなかには、山梨に移住したい方やこの近辺で家を探している方も多くいらっしゃいます。」

同じく3階にある輸入壁紙専門店「WALLPAPER STORE」は、ショールームとして様々な壁紙やカーテンを展示しています。週末には輸入壁紙を使った手帳や椅子づくりなどのワークショップを行い、アメリカヤを盛り上げているそうです。

2階には、「IROHA CRAFT」が運営するDIYの専門店「アメリカヤDIYサービスセンター」があります。ホームセンターに売ってないような照明器具や木材などを多数取り扱っており、DIYやセルフリノベーションの魅力を発信する拠点となっています。

工具や塗料、「IROHA CRAFT」のリノベーション現場で出た建築資材を自由に使用してDIYができる工房も併設されています。

「アメリカヤDIYサービスセンター」では、都内の大学でまちづくりを学ぶ学生さんがアルバイトをしていました。コロナ禍で授業がリモートで行われるようになったため、地元である韮崎市に帰省し、アルバイトを始めたそうです。2階のサービスセンターでアルバイトをし、時間になると、5階の共有スペースでリモート授業を受けているんだとか。

学生さん「大学3年生からコロナ禍だったので、アメリカヤで学生生活の半分を過ごしたと言っても過言ではないくらいです。この3月に大学を卒業した後も、高校の先輩でもある千葉さんのもとで仕事をするので、アメリカヤから韮崎市や山梨の魅力を発信していけたらと思っています。ぜひ韮崎に来てください!」

オープン当日のカフェボンシーク

アメリカヤの玄関口となる1階にあるのは、「食事と喫茶ボンシイク」。パスタやハンバーグ、カレーが美味しく、千葉さんおすすめのお店だそうです!

アメリカヤの再生によって、周辺エリアが盛り上がっているのも韮崎市の特徴です。アメリカヤのオープンから1年半後に、アメリカや向かいにある解体予定だった古い長屋をリノベーションして作られた「アメリカヤ横丁」には、複数の飲食店が出店し、韮崎の夜を明るくしています。

アメリカヤの真横にある専用駐車場「アメリカヤスクエア」は、週末はコミュニティスペースとして利用されています。コロナ禍前に開催した「にらさき夜市」には500人以上の人が訪れる大盛況だったそうです。

千葉さん「韮崎商店街には若い人たちがどんどんお店を開業していて、IROHA CRAFTがリノベーションやDIYをサポートしたお店も多数あります。僕は基本的にはアメリカヤの4階にいるので、まずはお気軽に相談に来てもらえれば、空き物件をどんどん紹介しますし、改修補助など補助金制度に関するお手伝いもします。

韮崎市は、市長をはじめ、行政が若い人たちをバックアップして、どんどんチャレンジさせてくれるまちです。コロナ禍をきっかけとした県外からの移住者が多く、移住者と地元の人たちがうまく共存しながら、一緒にまちを盛り上げています。韮崎は良いところですよ!」

仲間と繋がるオンライン交流会

 

施設紹介の後は、3人~4人のブレイクアウトルームに分かれて、参加者の方々の交流会が行われました。現地ツアーで案内をしてくださる予定だった甲府エリアの武井えみりさん(二拠点居住実践者)、桐山祐輔さん(CROSS BE プロデューサー)さん、富士吉田エリアの北田萌さん(移住経験者、ドットワーク富士吉田 コミュニティマネージャー)も参加し、今回ご紹介することのできなかったエリアの魅力をお伝えいただくこともできました。

イベント参加者の方がリアルタイムでコメントできるチャットには、

「参加者同士が繋がる機会って大切ですよね!」

「山梨行きたくなりますね!」

とコメントが寄せられていました。

二拠点居住と山梨

半年にわたって開催されたイベントシリーズ「二拠点居住と山梨」。やまなし暮らしの先輩たちのリアルな声を聞き、そしてやまなし暮らしを考える仲間と出会えたことで、新しい生活への期待とイメージがグッと膨らんだ方が多いのではないでしょうか。「二拠点居住と山梨」で画面を通して出会った仲間が、やまなしの地で初めて顔を合わせる。そんな未来がやってくるのが楽しみです。

イベントに参加してくださった皆さま、そしてやまなし暮らしや二拠点居住に興味を持ってこの記事を開いてくださった皆さまが、自分らしい素敵な生活を見つけることができますように。

取材・文/橋本彩香