第3回:McKee & Jeannette|アメリカンヴィンテージ・グラスウェア

今回は、アンカーホッキング社のFire Kingよりも古い歴史を持つ、McKee(マッキー)とJeannette(ジャネット)の2つをご紹介したいと思います。

Laurel.cups.saucersMcKee Laurelのカップ&ソーサー

McKeeの歴史


通称「McKee」と呼ばれるグラスウェアは、1853年にペンシルベニア州ピッツバーグで誕生しました。 当時の会社はMcKee and Brothers Glass Worksと言って、「クリスタル」と呼ばれるクリアなグラスウェアの製造販売で成功し、その後、商品の20パーセントはヨーロッパに輸出販売されるようになりました。

1888年、McKee and Brothersはピッツバーグ近郊に新しい工場を設立すると共に、工場の労働者のための町も作りました。その町は、会社の設立者McKee氏の妻の名前にちなんでJeannetteと名付けられ、「Glass City」というニックネームで呼ばれるまでに拡大。1901年からはNational Glass Companyの傘下でMcKee-Jeannette Glass Companyとしてグラスウェアの製造を続けます(その後社名をMcKee Glass Company に変更)。

McKee Glass Companyは、ミルクグラス(白いグラスウェア)、ブラックグラス(黒いグラスウェア)、淡いブルー(デルファイト)、そしてJadite(翡翠色)のグラスウェアを主流に製造していきました。1917年には、その当時人気だったCorning社のPyrexに対抗しようと、高温のオーブンでも使用でき、なおかつ冷凍庫でも保存可能の自社ブランドGlasbake(グラスベイク)を製造販売。しかしながら、1961年にはJeannette Glass Companyに買収されてしまい、McKee のグラスウェア会社としての役目は終ります。

glasbake.mug.casseroleGlasbakeのAnnieマグとフレンチキャセロール

 

Jeannetteの歴史


McKeeのように「Jeannette」の愛称で親しまれたのはJeannette Glass Companyのグラスウェアです。Jeannetteという名前からあるように、McKee氏が自社の労働者のために作った町に工場があったため、その町にちなんで名付けられました。

Jeannette dripping jarJeannette Dripping Jar
昔はこういう容器にベーコンなどから出た油を保存し、後で料理に使用したりしました。

元々はJeannette Bottle Worksという瓶を製造する会社でしたが、1898年にJeannette Glass Companyに名前を変更。そして前会社と同じく、食料品用を保存する広口瓶などを製造していました。1900年に入る頃にはランプや食器などを製造するように。その頃は他のグラスウェア製造会社と同様にJeannette Glass Companyも全盛期で、1930年代には世界大恐慌時代に流行ったディブレッショングラスをたくさん製造することとなります。

1961年に、他の子会社だったMcKee Glass Companyを獲得し、McKeeのブランドであったGlasbakeをJeannetteの自社製品として会社が閉鎖される1983年まで製造販売しました。

Jeannette canisterアメリカでも人気のJeannetteのTeaキャニスター。
蓋が凹んだり汚れていますが、これでも状態が良いほう。
ちょっと見にくいですが、右下の写真がJeannetteのトレードマークの三角に「J」が入った印。

 

McKeeとJeannetteの種類


McKeeのグラスウェアは先にご紹介したFire KingやHazel Atlasと違って、キッチンで使用できるものが主流です。例えば、大きめのソルト&ペッパーのシェイカーや保存用のリフリジエーター(通称リフ)、ミキシングボウルなどがMcKeeの代表的なグラスウェアです。その他、Laurel(ローレル)と呼ばれる月桂樹の模様が美しい食器のシリーズもあり、シリアルボウルやディナープレートなど普段の食事に使用できるものも存在します。

McKee LaurelMcKee Laurelのシリアルボウルとディナープレート。
右上の写真がMcKeeのトレードマークである「McK」の印。

 

一方、JeannetteもMcKee同様に多くのキッチンウェアを製造販売しました。ソルト&ペッパーシェイカーや、コーヒーや紅茶を入れるキャニスターもありますが、グラス類やディナープレート等もたくさん製造されました。色はMcKeeのように、Jaditeカラーや淡いブルーのデルファイトが人気です。Jeannetteの有名なパターン(模様)は、さくらんぼ模様が可愛らしい「チェリーブロッサム」ではないでしょうか。チェリーブロッサムは普通の食器だけでなく、子供のままごと用品としても存在します。

McKeeとJeannetteはFire Kingよりも先にJadite(翡翠色)を自社のグラスウェアに使用しました。ただ、Fire KingのJaditeは濃いグリーンに対し、McKeeのものは少し黄味がかった薄めのグリーンです。

そして、McKeeもJeannetteもFire Kingよりも色ムラがあるのが特徴。これは工場で発生したファクトリーマークと呼ばれるもので、欠陥品ではありません。この時代のものは縁の作りが粗いため、綺麗に加工されていません。同様に、Fire Kingよりも厚めのガラスで作られています。なので、どちらのグラスウェアも重くずっしりとしています。

McKee factorymarksMcKeeのカップに見られるファクトリーマーク。
左が工場で発生する色むら。
右は持ち手の部分のギザギザ。このギザギザから欠けることがあるので気をつけて。

 

McKeeのトレードマークは「McK」。大抵グラスウェアの底についているので探しやすいです。Jeannetteは三角の中に「J」とシンプル。ついていないグラスウェアもありますが、色や形を見れば大体Jeannetteの商品とわかると思います。

ここで気をつけてほしいのが類似品。McKeeやJeannetteのグラスウェアに似た商品が売られていますが、大抵が中国製か台湾製。色が微妙に違うので違いがわかる人は大丈夫ですが、わからない場合は事前に調べてから購入したほうがよさそう 。

日本でもアメリカでも Fire Kingのグラスウェアは断然人気。私がヴィンテージのグラスウェアを収集し始めた7年前は大体どこでもFire Kingがお手頃な値段で見つかったものです。それが最近ではさっぱり見つからなくなってきたうえに、以前もお話しましたが、あってもかなりの高値で売られています。むむ、これじゃ買っても使えないじゃない、と購入を諦めることしばしば。McKeeやJeannetteはFire Kingよりも古いグラスウェアなので、場合によってはFire Kingと同等またはそれよりも高い値段で売られていますが、McKeeとJeannetteを知らない人もたくさんいるので、アメリカでは意外とお手頃価格で見つかることもあるんです。以前立ち寄ったアンティーク屋さんで、McKeeのプレート10枚ほどを30ドルで購入。通常ならばディナープレート1枚で30ドル前後するので、この時は本当にラッキーでした。

インターネットではMcKeeもJeannetteも高値で売られているので、もしアメリカにいる方やアメリカに来る機会のある方は、アンティークショップを地道に回ってみるといいかもしれません。McKeeやJeannetteのようなFire King よりも古いグラスウェアも、インテリアまたは普段使いのキッチンウェアとして映えるのではないでしょうか。

Laurel and Alice手前がMcKeeのLaurelで奥がFire KingのAlice。
同じ花柄でJaditeカラー、どちらが好きですか?