世界の小さな住まい方

若手建築家三人が仲間と作った、工夫で一杯のハンドメイドハウス「THE DOGBOX」

石井敦子プロフィールアイコン | 2015.5.1
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世の中には様々なアーティストがいる。絵を描く者、立体作品を作る者、文章を書く者など。その中でも建築家は作品を作ること自体が容易ではない。

ニュージーランドの建築大学を卒業したばかりのベン・ミッチェル-アニオンとサリー・オーグルとティム・ジットズという3人の若手建築家たちの悩みは、大学の授業以外では、なかなか実際に家を建築する機会がないということだった。
2010年、彼らは金を借り、仕事を辞め、パッチワークアーキテクチャーとして新たな人生の船出を果たした。彼らは自分たちの腕を試すために何か月にもわたり安価で手に入る土地を探していた。

「僕たちはエキサイティングで実験的でなおかつ、控えめでシンプルなものを建てたいと熱望してたんだ」とはベン・ミッチェル-アニオン。

彼らが見つけたのは、ウェリントンから2時間半ほど行ったところにあるノースアイランド西海岸のワンガヌイ。のんびりとした雰囲気の街にある土地は、資材を車で輸送するのも難しい急な丘の上にあった。3人は仲間たちの手伝いを借りて、資材を手で運び、家も自分たちの力でまさに一から手作りで建てた。「The dogbox」と名付けられたこの家が今回ご紹介するスモールハウスだ。

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建築資材も錆びた鉄のトラス(梁)や松の棒束などの安価なものを選んだ。また地元で調達されたローソンヒノキも家の外壁用として採用された。家は一見複雑に見えるが、内部は2階建てで、レイアウトも長方形のシンプルなものだ。寝室が二つある88㎡の家屋部分を屋根の半分が覆い、残りの半分の屋根はベランダやデッキを覆っている。

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2階のベランダやデッキには運動器具が置かれたトレーニングルームや洗面所などがある。その周りはポリカーボネートパネルで囲まれ、程よくプライバシーが守られる。また夜になると半透明のパネル内のライトが柔らかく外に漏れ、巨大なランタンのようになる。このポリカーボネートパネルの一部は引き戸のようになっており、開けたり閉じたりできるので、明るさを調整したり、空気を入れ替えるときにも使い勝手が良い。

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大胆なデザインは2階の廊下にも表れている。2階の室内にある二つのベッドルームと浴室をつなぐのは外部に作られた渡り廊下だけだ。室内にあえて廊下を作らず、外部に設置したことで、より開放的で明るくなった。

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彼らはコストダウンを図るために、建築資材のほとんどは仕上げを最低限に抑えるか、そのまま使用した。このように安価な資材を使用したが、細かい部分を注意深く組み合わせ、外観を美しく見せることに腐心した。

1階の室内の壁面はコンクリートの打ちっぱなしが使われ、床のコンクリートは研磨されたものが採用された。異なる質感のコンクリートが合板の壁と共にシックな雰囲気を作っている。そこに、外観にも効果的に使われた明るいブルーとイエローのインテリアが差し色となって、内装にポップな印象を与えている。

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設計者たちは美しい木目のモントレート杉のキッチンキャビネットやコンクリートの床など、家の中のすべてのものを制作した。「肉体的に最もきつかったのが、雨の中、信じられないほど滑りやすい泥道でコンクリートを吸い上げるのに格闘したことだったよ」とミッチェル-アニオンは振り返る。リビングとキッチンにつけられたエナメルのペンダントライトはヴィンテージだ。

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2階の展望台は、現地での発見から生まれた。1階部分の骨組みを作った後、彼らは西側の眺めが美しいことに気づき、窓を追加することにした。

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「コンピューターモデルや図面からは分かりえないことが沢山あるということを身をもって体験したよ」と、ミッチェル-アニオンは話す。
パッチワークアーキテクチャーは、この家でオークランド建築協会賞を受賞した。彼らのこれからの活躍を期待したい。

Via:
smallhousebliss.com
patchworkarchitecture
dwell.com

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石井敦子プロフィールアイコン

Writer 石井敦子

世界の小さな住まい方ライター担当。

1970年東京生まれ、鎌倉育ち。幼少から未知の世界を求めて三輪車で近所を徘徊。米国への留学をきっかけに徘徊の規模が世界へと広がる。好奇心旺盛で、異文化への興味は特に強い。お呼びがかかれば、インドの結婚式にも馳せ参じるフットワークの軽さと、虫以外はなんでも食べる食欲がウリ。異国の住民目線の生活を好むため、旅の手段も現地人の家に転がり込む居候型。世界中で家族を増やす計画を実行中。鎌倉在住。好きな言葉「Nothing is useless(人生に無駄な経験なし)」

TW:@azkoishii
HP:Nomad Azko的世界放浪

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