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【特集コラム】第4回:日本でだって手に入る、夏の家(サマーハウス)の様々なカタチ|豊かさってなんだろう?北欧から学ぶ暮らし方

田村千夏プロフィールアイコン | 2014.11.13
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北欧の「夏の家(サマーハウス)」を切り口に、豊かな暮らしとは何かを考えていくこの連載。最終回となる今回は、いよいよ日本での暮らし方・住まい方の展開や可能性を探っていきたいと思います。

日本には「別荘」という文化がある、けれど…

第3回までは北欧をはじめとする「夏の家」についてお伝えしてきたこの特集。
地域や建築家の思想によって「夏の家」にはさまざまな解釈はあるものの、日常を離れ、自分流のライフスタイルを実現し満喫するセカンドハウスとしての存在意義には共通するものが感じられたことと思います。

日本にも、「別荘」という文化はありますが、第2回で所有率について少し触れた通り、その割合はわずか0.63%に留まっています。その理由には、土地や住宅の価格が高く、ひとつの住まいを所有するだけでも手一杯、という現実があります。
また、日本では北欧に比べ労働時間が長く、夏の休暇も数日だけ…別荘を持っていてもそこで過ごす時間が十分にない、という実情が、別荘獲得への意欲を減退させているのかもしれません。

日本も北欧のような社会になってくれたら! と願うばかりでは前進しませんので、現状の日本でも北欧の「夏の家」がもたらすような豊かな暮らしを手に入れるためにどうすればよいか、その方法を考えてみたいと思います。

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なんとしても「夏の家」を手に入れるなら

まず、「夏の家」=セカンドハウスを持つことに主眼を置いた場合。いかにコストを抑えて満足して過ごせる第2の家を手に入れるかがポイントになってきます。

あくまで「別荘」という枠組みで、低価格な「夏の家」を探す

未来の住まい方会議と連携している「休日不動産」のサイトでは、200〜400万くらいの手頃な価格の別荘がたくさんあります。この価格帯なら、貯金してなんとか手が届きそう、という希望も出てきそうですよね。
たとえ建物が古くても、その風合いを生かしながらリノベーションして自分流の空間づくりを楽しむこともできそうです。

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Via:休日不動産

「夏の家」をシェアする

シェアハウスなどの住まい方も広く浸透してきている今、親戚は友達はもちろん、意識を共有できる人と一緒に「夏の家」をシェアする可能性も考えられます。

休暇を合わせて大勢でわいわい利用してもいいし、それぞれの休暇に自由に使うこともできる。シェアすることでコストが抑えられ、さらに家自体の利用頻度が増えるので、一年ぶりに訪れたらクモの巣だらけで、まず大掃除から始めなくてはならない、なんてこともなくなります。

管理のことを気にせず、もっと手軽にリゾート感を楽しみたい人には、東急電鉄などの企業が提供している「タイムシェア型別荘」という選択もあります。使用頻度に合わせて利用権を購入する仕組みで、通常の人気のリゾート地で別荘を所有するのに比べると、コストをかなり抑えられます。

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Via:
東急ビッグウィークステーション
フェザント山中湖
笹沢建設 タイムシェア事業

郊外に週末住宅を持つ

長期休みがとれず別荘に行く時間がない、という都心部で働く人にとって、週末を利用して自然に囲まれた土地で定期的にリフレッシュ、というのは魅力的な選択肢ではないでしょうか。
『週末は田舎暮らし』の著者、馬場未織さんは、東京生まれ東京育ちで、共働きの子育て世帯。南房総半島の農地を手に入れ、都会で働きながら週末は田舎で農業を楽しむ暮らしに挑戦されています。

車で2〜3時間のところなら、往復も実現性を帯びてきます。そして現実に、都心からそのくらいの距離の範囲でも、自然豊かな里山での田舎暮らしが可能なのです。
田舎へ旅行するのではなく、実際に家を持ち、新たなコミュニティを築くことで、里山を守ることへの意識など、新しい発見もたくさんありそうです。

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Via:ダイヤモンド社書籍オンライン 『週末は田舎暮らし』刊行記念トークイベント

二地域居住の広がり

このように、ふたつの家を定期的に往復するスタイルは、もはや「別荘」ではなく「二地域居住」という枠組みにカテゴライズされます。北欧でも「夏の家」を年中利用しているケースもあるようですが、これは休暇に過ごす非日常の場としてではなく、日常の延長として生活の場にしていこうという考え方です。

「二地域居住」という言葉は2005年に国土交通省が提唱したもので、主に40〜50代を対象に、老後のライフスタイルとして地方に第2の家を持つことを推奨することから始まりました。
しかし、近年ではむしろ若い世代の二地域居住への関心が高まっていることから、国土交通省では2013年に若い世代を対象に実態を調査し、その課題と可能性について報告しています。

その中で、都市部と地方部を往復し、地方部に滞在中はコワーキングスペースを利用する事例や、サテライトオフィスを拠点に二地域で仕事をする事例なども紹介されています。
空き家バンクを設けたり、空き家情報を公開している自治体も増えていますし、二地域居住への入り口は広がってきています。

Hanalab.
tokushima
Via:
平成25年度 地方部における新たなライフスタイルの実現に関する調査報告書
Coworking Space HanaLab.
Tokushima Working style

拠点を定めながらも豊かな暮らしを手に入れるなら

魅力いっぱいの二地域居住スタイルですが、その実現には、仕事の内容や家族構成によって制約が出てきます。

IT関係など、パソコンがあればどこでも仕事ができる場合や、アーティストやデザイナーのように場所を選ばず発信できる場合でなければ、離れた地域で仕事をするのはなかなか難しいものがあります。

また、週末住宅を持っているケースでも、大人だけの世帯や子どもが小さいうちはよいですが、子どもが部活に入ったり、学校や習い事などでのコミュニティが生まれてきたりすると、休みの日も普段の住まいを離れられなくなることも。
何より、二地域に住居を構え、それらの維持と往復にかかるコストを考えると、なかなか踏み切れない場合が多いのではないでしょうか。

そこで、このコラムのテーマの枠を少し広げて、セカンドハウスとしての「夏の家」を持つことにはこだわらず、拠点を定めながらも豊かな暮らしを手に入れることについても考えてみたいと思います。

思い切って移住する

日常の喧噪を離れる、という「夏の家」の意識を、そのまま日常の暮らしに一体化してしまう、という選択肢もあります。つまり地方へ移住してしまうのです。

9月末に、R不動産が中心となって運営する新しいサイトがオープンしました。その名も「real local」。住まいだけでなく、働く場所としても総合的に移住エリアを考えられるサイトです。
住まいと共に働き方を変えることで、豊かな暮らしを手に入れられる。新しい可能性にあふれていて、見ているだけでわくわくしてきます。

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Via:real local 働く場所も自由に選ぶ、R不動産の移住マガジン

都心に住みながら新しい暮らし方を模索する

やっぱり移住はハードルが高い、という人は、もう少し現状に引き寄せて、「夏の家」的な快適さを都心の暮らしに持ち込むことが必要になってきます。
「夏の家」の醍醐味は、日常の喧噪を離れてリフレッシュできることや、生活習慣などの制約にしばられず自由に空間構成を考えたり、DIYにより自分好みの空間を手に入れられることです。最近では、賃貸でもそうした住まい手のこだわりを反映できる物件が増えてきています。

DIY可能な物件を紹介するサイトもありますし、計画段階や施工中、あるいは入居前に住まい手がどんどん意見を出して住みやすく手を加え、マイホームを建てるように愛着をもって住まいをつくれる仕組みを積極的に取り入れている事例もあります。

【青豆ハウス】
2013年3月に竣工したブルースタジオ設計の「青豆ハウス」は、計画段階から入居者がすべて決まるという、賃貸の集合住宅としては異例な物件です。完成前の内覧イベントを、入居予定者が近隣住民の人を巻き込んで行ったり、入居者自身がそれぞれの部屋の壁の色を決めて塗装するワークショップが行われたり、住まい手がつくる段階から関われる仕掛けがありました。

オーナーであるメゾン青樹の青木純さんは、池袋の賃貸マンション「ROIAL ANNEX」も運営されていますが、こちらも入居時に住まい手が壁紙や床材などの素材を自由に選んで、自分なりの空間にカスタマイズできるようになっています。
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Via:
青豆ハウス
行列のできる賃貸住宅の大家さんの嫌いな言葉は「原状回復」。メゾン青樹・青木純さんが示す暮らしの自由 [暮らしのものさし]

【荻窪家族プロジェクト】
シェアハウスやオーダーメイド賃貸は若い人向け、という印象ですが、若い人からお年寄りまで、多世代で集まって暮らすことを目指した賃貸もあります。

2015年春に竣工予定の「荻窪家族」は、地域開放型の賃貸共同住宅。荻窪家族プロジェクト代表の瑠璃川正子さんは、建築家の連健夫さんの設計案をベースとしながら、近隣住民など一般の人を集めてワークショップを行うことで、設計案を改変していくという「竣工前事前リノベーション」を試みています。

住まい手を想定し使い方を具体的に考えながら、通常竣工後に出てくることが予想されるクレームや要望に事前に対処していきます。
ワークショップの運営を若い世代の建築家ツバメアーキテクツが行っていることで、多世代の意見が柔軟に組み合された新しい共用空間が構想されています。

第一回使い方ワークショップ
第四回ナラティブワークショップ俯瞰
写真提供:ツバメアーキテクツ

Via:
荻窪家族
ツバメアーキテクツ 荻窪家族事前リノベーションプロジェクト

以上、日本で北欧の「夏の家」のような豊かな暮らしを手に入れるために、考えうる方法や事例を広範囲に挙げてきましたが、日本でもここ数年、新しい住まい方が実践されてきて、これまでになかった多様な暮らし方の可能性が見えてきています。

北欧のように国レベルでの体制をきちんと整えていくために国土交通省の今後の取り組みなどにも期待したいところですが、根本を変えるには時間がかかりますし、個人ではどうにもできないこともあります。まず自分たちの身近な状況を受け入れつつ、小さな工夫から始めてみることが大事です。

小さな積み重ねから大きく発展していけるのが日本人の国民性であり、強みだと思います。その強みを生かすことで、自分に合った豊な暮らしを手に入れることができるのではないでしょうか。

私たちの暮らしへの意識が改善されていくことで、社会全体の幸福度も少しずつ向上していくと思います。これから先、10年、20年後の日本の暮らしがどうなっていくか楽しみですね。

[参考]
・国土交通省の住み替え・二地域居住支援
http://www.sumikae-nichiikikyoju.net/

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YADOKARI「未来働き方会議」オープン!

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Writer 田村千夏

たむらちなつ。東京在住、出版社勤務を経てフリー。

大学で建築設計を学び、建築をつくることだけでなく、建築や街ができるプロセスや、そこに関わる人々の手痕を伝える編集的な仕事に惹かれる。
もっと建築の可能性を探っていきたいという思いから「未来の住まい方会議」に参加。

近年中に地方へ移住を計画中。地方に軸足を置いた活動の広がりや、地方から発信していくことにも興味がある。

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