まさかの変身!海軍造船所をアパレル企業の機能的なオフィスにリノベーション

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廃業した商業施設の建物を再利用しようとすると、同じ用途で使おうと考えてしまいがち。 廃校なら手っ取り早く別の学校として再利用しよう。レストランなら新しいレストランのテナントに入ってもらおう、などなど。つい元の性格にとらわれて同じ使い道を連想してしまいますよね。
しかし、アメリカのフィラデルフィア州にある急成長中のアパレル企業は、ファッションとは縁もゆかりもなかった施設を自社ビルとしてリノベーションしました。そのスケールの大きさや、ファッショナブルに生まれ変わらせたセンスが話題を呼んでいます。

6つに分散したオフィスを集結させた元海軍造船所オフィス

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話題となっているのは、フィラデルフィアに拠点を置く「Urban Outfitters」というアパレル系企業のオフィス。

「Urban Outfitters」の前身は、1970年にオープンした小さなリサイクル・ショップ。当時23歳だった二人の若者たちが始めた、中古の家具や洋服を販売する小売店でした。ユニークな取り扱い製品や魅力的な店舗デザインが人気を呼び、ショップは顧客を増やし続け、1990年代には女性向けのオリジナル・ブランドも手掛けるアパレル企業に成長していきます。

企業が成長するということは、中で働く社員も増えていくということを意味します。2000年代に入ると10年で社員は当初の3倍にも膨れ上がり、最盛期にはフィラデルフィア内に6つのオフィスを構え、社員を分散して配置していたのだとか。どうしても社員の連携や情報共有などの点から、10年以上も「全社員が同じ場所で働けるオフィス」を切望していた「Urban Outfitters」は、ある日その願いを叶えてくれるであろう場所を発見します。

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それは、1876年から1996年まで120年間もフィラデルフィア海軍造船所(PNSY)として使われていた場所。新しい造船所に海軍が拠点を移したことにより、485万㎡以上もの広大な土地と建物が廃棄されることになったのです。

そこに開発業者の手が入り、その広大な土地は「The Navy Yard Philadelphia」という商業施設に生まれ変わり、さまざまな企業がその土地に拠点を移すようになりました。そしてその広さに目を付けた「Urban Outfitters」も、そのうちの一つの建物にオフィス移転を決めました。

しかし、元造船所であった場所をアパレル企業のオフィスにリノベーションするのは一筋縄ではいきません。予算の都合もあり、建築デザイン会社と「Urban Outfitters」は度重なる打ち合わせを行いました。そしてそんな努力の甲斐あり、2011年には彼らの素晴らしいオフィスが完成したのです。

明るくて働きやすい!社員の気持ちを明るくする「The Navy Yard」

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かつて海軍の船を収容していたほど広大な3万2千㎡の新オフィスには、6つのオフィスに分散していた社員を集結させることができました。

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総務的な役割のヘッドオフィスから現場のクリエイティブ部門までが集結したことによって、すべての業務がこの新オフィスで完結できるのです。オフィスのあらゆる場所で自然な光を浴びることができるので、社員たちは非常に気分よく働くことができるのだとか。

デザインは「社員が孤立して働くような個室をなるべくなくし、社員同士が自然にコミュニケーションをとり合い状況を把握できるようなオフィスを生み出す」という方針がありました。この元造船所の広大な空間は、オープンオフィスを作り上げるのにうってつけの舞台でした。

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ところどころに造船所時代のパーツの名残があるのも、歴史を感じさせます。

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ミーティングや来客用のスペースもふんだんに設けられているので、打ち合わせに集中することができます。

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さらに、社員の健康を考慮してカフェテリアやフィットネスジムまで完備されています。すごい!こんなオフィスで働いてみたいですね!

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「Urban Outfitters」の調査によると、オフィス移転後に社員の仕事に対するモチベーションが目に見えて上昇したのだとか。全部署が集結したことによって仕事がスムーズに流れるようになったことが原因と考えられるようです。社員の疾病率も低下し、離職率もオフィス移動後に11%低下したそう。これはつまり、優秀で経験豊富な社員が長く会社に貢献してくれることを意味します。「Urban Outfitters」のオフィス移転は、会社にとっても社員にとっても良いことづくめの結果になりました。

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アパレル企業らしいファッショナブルな内装でありながら、社員の健康や労働環境までに考慮した「Urban Outfitters」の「The Navy Yard Philadelphia」オフィス。そのスケールの大きさについつい目が行ってしまいますが、本当に目指したのは社員の働きやすさだったのです。

「The Navy Yard Philadelphia」が造船所のままだったら、この素敵なオフィスは誕生していなかったでしょうし、「Urban Outfitters」の社員の満足度は依然低かったかもしれません。本来の用途に執着せず、大胆なリノベーションが成功した好例ですね。

日本でも「箱物」と呼ばれる公共施設の廃墟化が問題になっているようですが、その場所を必要とする人たちのためにどんどんリノベーションして活用していってほしいものです。

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(提供:ハロー! RENOVATION