【審査会レポート】入賞作品がついに決定!青梅市わがままライフコンテスト2023
美しい自然のなかで歴史と文化を育んできた東京都青梅市。ハイキング、トレッキング、サイクリング、渓流釣り、伝統工芸の藍染や地酒など魅力たっぷりの青梅市は、都心からアクセスがよく、リフレッシュに訪れる方も多いまちです。そんな青梅市では現在空き家問題が深刻化しており、なんと約9戸に1戸が空き家だといわれています。
この社会問題に楽しみながら取り組む機会として開催されたのが、「青梅市わがままライフコンテスト2023」。子どもから大人まで誰もが自由にアイデアを応募できるコンテストには全国各地から多世代の方にご参加いただき、青梅市のポテンシャルを引き出す100件以上の「わがまま」な暮らしの提案が集まりました。
固定概念や慣習に縛られない多様な「わがままライフ」のなかから、最優秀賞に選ばれたアイデアとは?3月中旬に行われた審査会の様子をレポートします。
審査員&審査方法
多様なジャンルでご活躍される7名の方々に審査員としてご協力いただき、それぞれの専門的な知見を交えて審査を行いました。1次審査・2次審査の2段階で作品審査を行い、最後は審査員同士のディスカッションを通して入賞作品を決定しました。
【審査員一覧】(敬称略)
長谷川 ミラ(モデル/ラジオナビゲーター)
山下 和希(アトリエ・アースワーク代表/一級建築士)
島原 万丈(LIFULL HOME’S 総研所長)
清水 有二(株式会社MOPTOP代表取締役社長・大工)
田中 志緒利(一般社団法人こーよ青梅)
水谷 岳史(株式会社On-Co 代表取締役)
上杉 勢太(YADOKARI株式会社 代表取締役)
※審査員の皆様のプロフィールは、青梅市わがままライフコンテスト公式HPをご覧ください。
1次審査
1次審査では審査員全員が1時間かけて全ての作品にじっくり目を通し、2次審査に残したい作品を数の制限なく選びました。会場を囲うように貼られた「わがままライフ」の数々に、審査員の方々は「作品の熱量がすごい」と声をもらす場面も。
38作品が1次審査を通過し、審査員は1次審査を終えての所感を共有しました。
「”青梅だからこそ”という観点があるかどうかに重点を置いて作品を選びました。リアリティがある作品もジャストアイディアな作品もあり面白いですね。」
「実際に青梅に住んでいるからこそ、作品を応募してくれた方は青梅をよく知ってくれていて、愛がある人が多いと感じました。実現したら、青梅に行きたくなるアイデアもあり、ワクワクしました。」
2次審査
2次審査では審査員それぞれが最優秀賞に相応しいと思う作品4つに投票し、選考理由を発表しました。
「青梅で自然アクティビティを楽しんでいる地元の人や観光客は実際にこういう施設を欲していると思う」
「都心にはいろいろなものが揃っているけれど、この施設が実現すればあえて”青梅市に”行きたくなると思う」
「どういう施設があるまちに住みたくなるかを考えたときに、”やりたい”を許容してくれるこんな施設があると良いと思った」
「青梅市の資源を有効に利活用しながら、実現可能性も高いアイデアだと思った。青梅市が抱える課題に対するアプローチも上手く表現できていると感じた」
上記のような他の審査員の選考理由を聞いたうえで、改めて最優秀賞に相応しいと思う作品に投票。審査基準の一つとなる得票点が2作品で同点になり、再度ディスカッションを行い最優秀賞を決定しました。
【最優秀賞】「OME BASE CAMP」
最優秀賞に選ばれたのは、八代翔さんの「OME BASE CAMP—街の空き家は0合目のキャンプ地—」です。以下に、審査員のコメントの一部をご紹介します。
「青梅のまちを一つのベースキャンプとして捉えなおすコンセプトが良かったです。青梅という土地の特性を活かしたアイデアですし、宿場町としての青梅の歴史にも親和性を感じます。ロードバイクやマウンテンバイクで青梅を訪れる人をターゲットにするなど、ハイカーに限らずこのスキームでいろいろ展開できる可能性がある点も評価しました」
「最近は若者のなかでキャンプを楽しむ人が増えている実感があります。このアイデアはZ世代はもちろん、子どもがいる世帯も利用しやすいのではと感じました。0合目のキャンプ地という、青梅の山があるからこそ生まれたアイデアもとても良いと思いました」
「弊社で空き家に関わる事業を展開しているなかで、リフォームやリノベーションをせず空き家をそのまま使うことができたらと日々感じています。このアイデアは空き家をリノベーションせずとも、ハイカーたちがテントを張って宿泊したりテントサウナを楽しんだりというイメージが沸くので、その点を評価しました」
「他の作品と比べて実現性が高いことと、ここを目的に青梅を訪れる方が増えて観光にも寄与すると感じ、選ばせていただきました。青梅にたくさんある空き家を活用してこんな場所が作れたらまちの活性化にも繋がるでしょうし、この場所から次の展開に広がる期待感がある作品でした」
「ベースキャンプは複合的な機能を持つものだと思うので、空き家の大家さんたちがこのコンセプトに共感して複数の空き家を使うことができたら、次々に展開できる可能性があるのではないでしょうか。そういった体験を通して、空き家を貸した大家さんもパトロン的な視点で楽しむことができたら、広く展開していく可能性があると思います」
最優秀賞が決まった後は、審査基準と照らし合わせながら、それぞれの専門的知見を交えてディスカッションを行い、4つの入賞作品を決定しました。
【空き家活用賞】「青梅わがままバスストップ」
最後まで最優秀賞の選考に残っていた有信晴登さんの作品「青梅わがままバスストップ」は、空き家の使い方が最もユニークで実現性の高いアイデアを評価する空き家活用賞に選ばれました。
「バスで移動することで、青梅の良いところを実際に見て知ってもらうきっかけになり、移住にも繋がる可能性がある点を評価しました」
「青梅が抱えているテーマに対して、まちを活性化していく手段として有効かつ魅力的な提案だと感じました」
「空き家とバスの停留所を掛け合わせそこにバスというモビリティを走らせると、とても面白い場所になりそうだなと感じました」
など、最優秀賞を決めるディスカッションのなかでも審査員から、まちと人を繋ぐ機能として高い評価を集めていました。
【コミュニティ賞】「おうめ+(プラス)」
空間と人の集い方が最もおもしろいアイデアに贈られるコミュニティ賞には、東海林直さんの「おうめ+(プラス)」が選ばれました。
「都心で働いている人間から見た『地方創生』的な発想ではなく、住んでいる人が実際に求めているのはこういった施設ではないか」、「住民目線で考えた時に、この施設が実現したら青梅での生活が面白くなりそうだと感じた」、「この空き家のなかでいろいろなことが生まれる可能性を感じた」など、まちに暮らす住民の視点から高い評価を集めました。
【SDGs賞】「おおきなごみばこ」
SDGsへの貢献度が最も高いアイデアに贈られるSDGs賞には、岩崎颯汰さんの「おおきなごみばこ」が選ばれました。
青梅に限らず全国のまちが抱える「ごみ処理」という社会問題に楽しくアプローチしている点、実際に青梅にあるお店の名前を作品に取り入れている点などが評価されました。
【ユニーク賞】「空き家・神秘領域」
実現性よりもアイデアが最もユニークだった作品に贈られるユニーク賞には、満場一致で森田優作さんの「空き家・神秘領域」が選ばれました。
「ここまでアーティスト性の高い作品は他にない」
「神秘という言葉で表現されているこの作品が、いわゆる『意味を求めすぎている』ようなよくあるコンテンツとは一線を画していて一番良いなと思いました」
「アートとして自然にそのまま朽ちていく家というのは神秘的で良いなと思いました」
と、そのインパクトの大きさや独創性が、水谷さんをはじめとする審査員の方々から高い評価を得ていました。
審査を終えて、、
多様なジャンルで活躍する審査員の皆さんがそれぞれの視点をすり合わせて審査を行った青梅市わがままライフコンテスト2023。審査員の皆さんからコンテストを振り返り、総評をいただきました。
長谷川さん「情報で溢れている現代社会では、アイデアというものはリサーチしようと思えばいくらでも定型的なものを見つけられると思います。そのなかであえて視点を変えていかないと、これからの社会やまちづくりの課題は解決していかない。今日はさまざまな作品に触れて、私自身創造性が活性化されたような気がしています。とても楽しい時間でした」
山下さん「A3の中に濃い内容をギュッと凝縮して皆さん一生懸命に提案をされていたので、我々も真剣に向かわせていただきました。これだけの応募が集まるということは、それだけ皆さんが青梅市に注目しているということだと思います。まちづくりはどの市町村にとっても重要なことなので、青梅市さんがこういったコンテストなど一生懸命やっていることが全国に広がって、ただお金を支援して移住者を招くのではなく、地域の魅力を発掘しながらそれに賛同してくれる方々が移住する流れができたら良いなと思います。今回のコンテストは、そういった未来へのヒントになるのではと感じました」
島原さん「良い作品が多く、惜しくも選考に漏れてしまったもののなかにも特別賞を出したいなと思うようなものがいくつかありました。応募数も多く、最終選考に残った作品はかなりレベルが高いと感じました。それは、青梅がやりがいのある素材だということを意味していると思うんです。料理人が良い食材を前にすると腕を振るいたくなるように、青梅には歴史的にも建築的にも、アイディアを出したくなるようなネタがあるのだと思います。今回は、そういった青梅のポテンシャルを浮き彫りにしたコンテストだったのではないでしょうか」
清水さん「青梅に住んでいる身としては、青梅のことを知っている人、青梅への愛がある人が応募しているんだなと感じました。仕事柄、実際にこんな提案をもらったらどうしようと思うようなわがままライフがあり、とても勉強になりました」
田中さん「青梅に来たことがある方もない方も含めて、全国各地から想定を超える100作以上の作品が集まったのはすごいことだと感じています。青梅がこういうふうになったらいいなと考えたり、実際に現地に足を運ぶきっかけとなるコンテストになったのではないでしょうか」
水谷さん「今回はアイデアを募集するコンテストでしたが、せっかくこれだけの作品が集まったので、弊社が運営するさかさま不動産のサービスにアイデアを掲載できたら面白いのではと思いました。実際にアイデアを実現してくれる人が現れて、作品が具現化する流れになったら良いなと思っています」
上杉「作品を提出してくださった方のなかには、青梅に所縁のない方も多いと思います。他社や他の自治体さんともご一緒するなかで、コンテスト企画の魅力は応募者の方が現地に行くことだと感じています。今回の応募者の方からも、『青梅に行ってきました』という熱いメッセージがたくさん届いています。そして継続していくことが再来訪のきっかけになるので、今度は受賞した人たちが当事者になって審査をしたり、受賞しなかった作品をイベント的にまちの体育館に掲示したりと、青梅市を自分事化して、参加者の方に足を運んでいただくような流れが作れたらと理想だなと思いました」
最後にコンテストを総括して、青梅市地域経済部シティプロモーション課の白鳥美樹子さんよりコメントをいただきました。
白鳥さん「今回のこの企画は、移住・定住プロモーションの一環として実施したものでしたが、応募いただいた作品からも、審査いただいた皆様の審査中のコメントからも、移住・定住を目的としたものだけじゃないアイデアがあふれていました。様々な視点に触れさせていただきとても参考になりましたし、生まれ育った青梅市、皆さんに愛していただいているまちなんだなと改めて実感しました。もっと青梅の魅力をみなさんに知っていただけるよう、引き続きプロモーションを行っていけたらと思います。」
青梅を自分事化するきっかけに
200件以上の事前エントリーをいただき、多くの方に青梅のことを考えてもらう機会となった青梅市わがままライフコンテスト2023。応募いただいた方からは、
「今回コンテストに応募するにあたり、青梅市の観光資源や特色などを知ることができ大変有意義でした。実際に青梅市に遊びに行き、自然の豊かさと、空き家や高齢化問題などを肌で感じ学びにもなりました」
「この作品は兄弟で一緒に考えて作りました。もうみんなアラフォーの4兄弟で、私以外は青梅から離れて暮らしていますが、生まれ育った青梅が大好きで、『どうしたらもっと青梅がよくなるか』、『青梅の良いところって何だろう』、『こんなのあったら良いよね』と毎週リモート会議で話し合って作品を作りあげました」
といった声も届いています。
青梅市に暮らしている方、かつて住んでいた方、そして今回のコンテストをきっかけに青梅市に興味を持ってくれた方。さまざまな視点を持った方々が青梅市に思いを馳せて生まれた「わがままライフ」のアイデアは、このまちにどんな変化をもたらすのでしょうか。皆さんの熱意を受け取った青梅市の今後に、ぜひご注目ください!
コンテストにご応募いただいた皆さん、ありがとうございました。