
アメリカ・オレゴン州北東部、イーグルキャップ原生保護区の近くに佇む「Signal Shed(シグナル・シェッド)」は、アウトドア愛好者のための短期滞在型キャビンだ。この地は、自然との共生や土地への深い敬意を重んじる文化を持つアメリカの先住民族「ネズ・パース族(別名:ニミプー)」の指導者チーフ・ジョセフの時代から、その美しい自然が多くの人に愛されてきた場所である。
このタイニーハウスは、快適な暮らしの場だけでなく、土地と歴史への敬意を込めた建築作品ともいえるだろう。

自然を尊重するデザイン
「Signal Shed」は、周囲の自然環境への影響を最小限に抑えることを目的に設計されたタイニーハウスだ。建物はピアフッティング(土台杭)で支えられ、地面への負担を極力抑えている。外壁には黒く焼かれた雨よけスクリーンが使われており、周囲の山々や木々の影に自然に溶け込むデザインとなっている。
この「焼き仕上げ」は、敷地内に残る焼け木や、かつてネズ・パース族がスモークシグナル(狼煙)を上げていた「シグナルマウンテン」の歴史を思い起こさせる。「シグナルマウンテン」とは、かつてネズ・パース族が通信手段として狼煙(スモークシグナル) を上げていた山のこと。「Signal Shed」の“Signal”は、この歴史的な背景から名付けられてるという。

自然を感じる開放的な空間設計
「Signal Shed」からは、シグナルマウンテンを望む大きなスライド式ドアが設置されており、室内にいながらアウトドアのような開放感を楽しめる。さらに、はね上げ式の小窓は、観光客に人気のワローワ湖トラムウェイとシグナルマウンテンを額縁のように切り取って見せてくれる。他の3方向の窓は外壁と同素材のスラット(木製ルーバー)で覆われ、無人時は全体を閉じてしっかりと保護できる。

シンプルで快適なミニマルな暮らし
室内には、ロフト、薪ストーブ、キッチンカウンター、折り畳み式のダイニングテーブルが備えられており、コンパクトながらも快適な生活空間が整えられている。夜になると、シダー材のスラット越しに漏れる暖かな光が、森の中で幻想的な雰囲気を生み出す。

環境に配慮した素材と自給自足の工法
このプロジェクトは、オーナー兼デザイナーが環境負荷とコストを抑えるため、リサイクル素材を使用して自ら建設した。建物は一般的な公共インフラ(電気・上下水道)には接続されておらず、必要な電力は発電機でまかなっている。
外壁材は、ウェスタンレッドシダーを使用し、廃材を再利用するポータブル製材所「Willamina Portable Saw Mill」から調達。窓やドアは ポートランドのリビルディングセンターで購入したリサイクル品を使用してつくられた。内装に関しては、フローリングや収納はIKEA製を活用し、その他の木材はワローワ郡とユニオン郡の地元製材所から調達したものだという。

自然と共に過ごすサステナブルな暮らし
「Signal Shed」は、自然の美しさと共存するための工夫が随所に散りばめられたタイニーハウスだ。このキャビンには、かつてこの地に暮らしたネズ・パース族の歴史と文化への敬意も込められており、敷地内の焼け木や、シグナルマウンテンで使われた狼煙の歴史を象徴する焼き仕上げの外壁が、その背景を物語る。
小さな空間ながら、環境への配慮、素材選び、先住民族の歴史へのリスペクト、そして居心地の良さが共存するこのキャビンは、アウトドア愛好者だけでなく、持続可能な暮らしを求める世界中の人々に新たなインスピレーションを与えてくれるだろう。

via: archdaily.com
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土地への深い敬意を重んじる文化を持つネズ・パース族に愛されたこの地に佇むこのタイニーハウスは、暮らしの場だけでなく、土地と歴史への敬意を込めた建築作品ともいえるだろう。