現代人に届けたい。森に囲まれたオフグリッドな家で心穏やかに過ごす術
時間や仕事に追われ、毎日疲れている気がする方。仕事の量も遊びの量もセーブしてのんびり暮らしているつもりなのに、なんだか疲れる方。どうしてなのかはわかりませんが、私達は、気づかない間に心が疲れてしまう時代に生きているのかもしれません。
じゃあ、どうしたら心穏やかに過ごせるのだろう?そんな問いかけを自分にしたことがある方は、この家をご覧になっていただけますか。
この森の中にあるツリーハウスのような家は、建築家のGreg Duttonがアメリカ・オハイオの田舎にあるご家族所有の土地に建てたオフグリッドの休息場所なのです。彼は、持続性があること、そしてまわりの環境にうまく溶け込むようにこの家をデザインしました。
このThe Hutは、オハイオ・バレーにある牧場の森の中の湖を見渡せる高い土手の上にあります。
56㎡(600平方スクエア)の住居は、もともとの自然のたたずまいとDuttonの土地へのこだわりで形づくられています。
「僕の家族は、この土地を40年間にわたって所有し利用してきました」と、Midland Architecture社の社長であるGreg Duttonは語ります。
「だから、この土地に関しては、深いつながりと関係性があります。この建物がある場所は僕が子供のころ、兄弟達とハイキングしていた場所なのですよ」と、彼は説明してくれました。
彼は、このThe Hutをツリーハウスにいるような感覚を味わえるように、コンクリートの柱の上に土砂を積んでつくったスロープの上に置くことをデザインしました。
「最初の閃きは、木のなかのロフトにいるような感じにしたいというアイデアでした」と、彼は言っています。
「この効果を得るために、私達はこの小屋を崖のふちに置きました。建物の中に立って、南窓からほんの少し斜めを見ると、崖の下にある森に入り込んでしまうかのように見おろすことができます」。
ありのままの手を加えていない杉で覆われた屋根は、風雨にさらされて灰色になっていくでしょう。灰色になるころには、きっとこの家は森に溶け込んでしまいますね。
家はオフグリッド仕様、つまり電気や水道設備はありません。その代わりにこの住居はすべて太陽光を利用しています。そのため、南からの太陽の光を利用できるよう、建物は南向きです。
床から天井まで届く窓は壁の一部を使い、外の景色がまるで切り取ったポートレートのように見えます。そしてまたこの窓から一年中明るい光が入ってくるのです。自然の光に包まれながら暮らす生活、とても贅沢ですね。
そのほかに環境にやさしいデザインとしては、自然のそよ風を利用した換気システム。雨水を水源に使うシステムがあります。
今の私達の暮らしは、電力会社がつくる電気に頼っている生活。家も電力会社からの電気がないと暮らしづらい構造。なにかに頼っている生活が疲れを呼び込んでいるのかもしれませんね。
でも、この家に住んでいると、自然の力に感謝しながら、優しく暮らせます。
The hutの中は、シンプルなレイアウトです。キッチン、バス・トイレルーム、そしてリビングエリアへつながる通路のみ。リビングエリアと眠るためのスペースはつながっています。
インテリアもミニマルです。2種の松を組み合わせた壁と天井。このデザインはスカンジナビアの建築様式と、デンマークの心地よい暮らし方hyggeが取り入られています。
家の中で自然を感じられるように、モノや色は極力控えてあります。
「牧場で育ったから、田舎の美しさからたくさんのインスピレーションを受けました。だから、その美しさを取り込めるように、シンプルなインテリアを心掛けました」と、建築家は話しています。
気候変動がエコシステムや自然資源を脅かしている今、多くの建築事務所は持続可能なデザインを提案しています。
いままでDezeenのサイトでも、ワシントン州のLot 6 Cabinやテキサス州のYoki Treehouseを取り上げています。
オフグリッドであること、それは自然に優しいシステムであるということかも。そんな家で時間を過ごせば、自分自身も自然の一部になって、ストレスや疲れが取れてくる気がしませんか。
こんな家に住めればいいですよね。日本でも探せばどこかにあるかも。もしくは使われなくなった別荘を探して、この家の様にオフグリッドの家にリノベーションするのも楽しいかもしれませんね。
それが難しくても、The Hutのインテリアを参考にして、シンプルなインテリアで自然の美しさを感じられるようにする。そんなことから穏やかな暮らしが始まるかもしれませんね。
Photography is by Lexi Ribar.