「新」食材候補は“野草”にあり!今夜は野草料理でご馳走にしましょう。

人生で初めてモッツァレラチーズを食べた時。
人生で初めて海ぶどうを食べた時。
人生で初めてポン・デ・リングを食べた時。

“これを表す日本語を私はまだ習得できていない…”

となぜか味や食感への感動、そして衝撃を上回るスピードで自分の語彙力のなさを悔やんだものである。静かに味わってひと時を楽しめ、と言いたくなるものだが言葉で言い表したくなる性分がこれを邪魔した。兎にも角にも、今まで出会っていなかった食材を初めて口にする時のあの高揚感と想像以上の美味しさだった時の感動は記憶に残るものである。そう考えると、赤ん坊からすれば毎日が衝撃の連続なのかもしれない。

今回は「野草」の食材としての可能性がテーマだ。今回の執筆を以て、初めて野草ディナーを味わった私。おそらく読者の方々も野草を食卓に取り入れた経験のある人はなかなか少ないだろう。どうか、赤ん坊になった気分で新たな食材との出会いを楽しんでみてほしい。

そもそも野草とは?雑草との違いを考える。

「野草」と言えど、一体どの草が野草でどの草がそうでないのか。混在するであろう「雑草」との違いから、「野草」の定義を考える。

参考元:https://chigai-allguide.com/cw0186/#:~:text=%E9%9B%91%E8%8D%89%E3%81%A8%E3%81%AF%E3%80%81%E8%BE%B2%E8%80%95%E5%9C%B0,%E5%8C%BA%E5%88%A5%E3%81%A7%E3%81%8D%E3%82%8B%E3%82%82%E3%81%AE%E3%81%A7%E3%81%AF%E3%81%AA%E3%81%84%E3%80%82を基に作成

雑草と野草を区別するにあたって着目すべき点として、発生場所における「人による管理の有無」がある。雑草は、庭などの「人の管理がある土地」において食用や観賞用など栽培以外の目的で発生している植物を指す。一方、野草はその他の「人が管理していない土地」において発生する植物を指す。このように両者の違いは発生場所における管理の有無であり、植物の種類によらない。つまり、下記の図のように同じ「タンポポ」であっても自宅の庭で発生したタンポポと土手で発生したタンポポは前者が「雑草」、後者が「野草」と定義される。

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つまり、野草は植物の種類を問わず「人が管理していない土地に発生する」植物である。
しかし、同じ発生場所であっても人によってその植物に対する対処が異なる場合が存在する。例えば、自宅の庭で発生したタンポポを「邪魔だから引き抜こう」と考える住民もいれば「可愛いし、そのままにしておこう」と考える住民もいるだろう。

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そう。管理の有無に加えて、もう1つ野草を定義する上でポイントとなるのが「駆除の対象となるか否か」である。これは個人の捉え方の違いと言えばそれまでだが、仮に人の管理のない土手で発生した植物。一般的には「野草」となるが、「他の植物や人間に有害」と判断された場合は「雑草」となる。草からしたら、一気に地獄に突き落とされた気分だろう。とはいえ、「駆除の対象か否か」は野草や雑草に対する知見の度合いによることが多い。野草研究者のように豊富な知識を持っている方からすれば雑草である草を知識のなさゆえに野草と判断する恐れもある。そのため、厳密にいえば「捉え方次第」な区切りではあるが、大まかにはこの2点で定義する。

参考元:https://chigai-allguide.com/cw0186/#:~:text=%E9%9B%91%E8%8D%89%E3%81%A8%E3%81%AF%E3%80%81%E8%BE%B2%E8%80%95%E5%9C%B0,%E5%8C%BA%E5%88%A5%E3%81%A7%E3%81%8D%E3%82%8B%E3%82%82%E3%81%AE%E3%81%A7%E3%81%AF%E3%81%AA%E3%81%84%E3%80%82を基に作成

野草は「人の管理がない土地」で発生し、「駆除対象でない」と判断された植物である。

お金と時間をかけずに獲得できる食材は存在するのか、という疑問を抱いた。

今回、野草に着目したのはふと感じた疑問がきっかけである。普段、私達は食材を入手する際、当たり前だがそれが食べられると知った上で入手するトマトをスーパーで購入する時、家庭菜園で育てる時、「これは果たして食材になり得るだろうか」と考えてから購入する(あるいはしない)ことはなかなかないだろう。
そしてそんな食材として入手する過程で“お金”もしくは“時間”の消費は必要不可欠という観念を抱いていた。スーパーで食材を購入するにはお金が必要だし、家庭菜園で育てるにしろ時間とお金がかかる。

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しかし、だ。まだ自分が食材と認識していないだけで食材となり得るものはおそらく沢山存在する。もしかすると食材と知っているモノを遥かに上回る量で存在しているのかもしれない。一体どのくらいあるのだろう。

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そしてそんな未知数の、未だ出会えていない食材の中でお金や時間以外の手段を以て獲得できるものは果たして存在するのだろうか。

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そんな疑問が、今回の野草GOならぬ野草を求めて三千里の旅へと誘われる発端となったのであった。

羞恥心を捨て、「食材となる野草」を探しに向かってみた。

野草と巡り合える場所は大きく3つに分類される。

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林や森などの山間部、生活圏内ともほど近い道端や空地などの中腹地。そして用水路や川のほとりなどの水辺の3カ所である。私は新たなる食材との出会いの場として「水辺」を選択した。特段、大きな理由があるわけではないが、自宅周辺を流れる多摩川の近くに「新・食材候補」の可能性を感じたためだ。

今回、私に「食材となり得る草か否か」の助言をしてくれた存在を紹介する。植物判定アプリ「Picture This」と書籍「野草と暮らす365日」である。ものの数十秒で、植物の種類を判定し、名前や詳細を教えてくれるアプリに、季節ごとの野草とその調理法について示した書籍。この2つを使いこなせば怖いものはナシである。こうして、最強の相棒である書籍と携帯電話を手になんとも現代的な新・食材候補を探す旅に出掛けたのであった。

今回は、巡り合えた野草の中でも特に見分けがつきやすく、手軽に食材として生活に取り入れられそうなものを紹介する。私自身が見つけやすさを重視しないとまだまだ間違えそうな野草新参者であることもそうだが、仮にも読者の方々が安心して野草を暮らしに取り入れられるようにしたい。

巡り合えた「新・食材野草候補①」:ツユクサ

昼前の多摩川の河川敷。ゴミ拾いをして回る野球少年達の邪魔にならぬよう必死に野草を探し始めた私。まず目に飛びこんできたのは小さな青色の花が特徴の「ツユクサ」である。

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ツユクサは朝に咲き、昼過ぎには萎んでしまう。この特徴が朝露を連想させることから名付けられたそう。一年草ではあるが夏は新芽が柔らかくクセの少ない食材として暮らしに取り入れやすい。

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茹でると、色鮮やかな緑色になる他食感も柔らかく非常に食べやすい。調味料とも味が馴染みやすいのも嬉しい点である。今回私は、シンプルに胡麻和えにしていただいた。

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柔らかくシャキシャキした食感が、クセのない春菊を思わせた。この他にも、白和えや卵スープなど様々な料理に取り入れられそうな野草である。ちなみに「野草と暮らす365日」ではツユクサのシャーベットが紹介されている。夏場のお楽しみに最適なデザートに違いないと読みながら、次回試したい調理方法に胸が躍る。

巡り合えた「新・食材野草候補①」:ムラサキツメクサ

ツユクサをそそくさと持参したビニール袋に詰め、次に私が見つけたのは「ムラサキツメクサ」である。淡い紫色が可愛らしい花を持つムラサキツメクサは別名「アカツメクサ」とも言われる。

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幼い頃、友人と草むらでシロツメクサの花冠を作って遊んでいたことを思い出す。

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西洋ではハーブティーなどに活用され、女性の美容と健康に効果的であるとして広く食材として取り入れられていたそう。可愛らしい花を今回はガッツリと食材として取り入れるよりは、アクセントとして加えてみた。

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きゅうりとわかめの酢の物という“美味しいのに見た目の色味が地味すぎる料理”に加えることで気分も晴れてくる。

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また、同じ植物についていたと思えない程に様々な形の葉がついているムラサキツメクサ。少々、アクが強いのでアク抜きをして湯がいたらクッキーのアクセントにしてみた。アクセントのある見た目に女子力も上がったような錯覚に陥る。魔性の野草だ。

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手軽にこんなに可愛らしい一皿のアクセントになるのであるから、恐るべし野草である。

野草探しの旅に出て。

スーパーへ行くと“お金”がかかり、家庭菜園をするには“時間(というより歳月)”がかかる。自分の知っている範囲での「食材」を手に入れるためにはそれが当たり前だと思い込んでいた。しかし、「食材になり得るもの」に対する知識が広がることでお金や手間をかけずに手に入れることが出来る食材が増えることに気付かされた。今まで気に留めていなかった存在に急に焦点が当たり、食に対する選択肢がグンと広がったように感じた。開始20分間のみの羞恥心と引き換えに、新たなる食への知見とお金のかからない食材が手に入るならもっと食べられる野草について知りたい。そう思わせてくれる朝から河川敷で格闘した私の、夜の振り返りである。

(参考文献)
山下智道『野草と暮らす365日』山と渓谷社
「雑草」と「野草」の違いとは – 違いがわかる事典
野草はどこで採れる?身近にある野草採取場所を紹介
食べられる野草 | 日吉津村 ひとのえがおづくりができる村