第20回:加計呂麻島での家探し|女子的リアル離島暮らし

現在、天気が不安定なことが多いのですが晴れれば港の海も突き抜けるように青です。
現在、天気が不安定なことが多いのですが、晴れれば港の海も突き抜けるように青です。

『未来住まい方会議 by YADOKARI』をご覧の皆様、こんにちは。小説家の三谷晶子です。
5月に入りましたが、加計呂麻島は連日雨。先日は隣の島、徳之島で50年に一度の大雨が降ったとか。そろそろ太陽が恋しい今日この頃です。
さて、本日は、加計呂麻島内で引っ越しをしたことについてお話します。

移住して3年目、二度目の引っ越し

第1回でもお伝えしたように、私はこちらに来た当初、加計呂麻島自然海塩工房という塩づくりをしている工房にお世話になっていました。工房のご主人と奥様の暮らす家にいわゆる居候のような形で、塩作りや家のお手伝いをして数か月暮らし、それから家を探したのです。

一年半以上住んだ家は、第2回でも書いたように港のフリーWi-Fiを使って仕事をしている時に声をかけてくださった大家さんから借りることになった場所。
台風の時には「うちに避難しなさい」と言ってくださったり、クリスマスにチキンを差し入れてくださったりと家族ぐるみでお付き合いをさせていただきました。

都会とは違う、家の退去の理由


私が以前の家から引っ越しをすることになったのは、大家さんのご家族が島に戻ってくることになったのが理由です。

昨年の夏、奄美大島にLCCのバニラエアが就航し、大家さんのご家族がいらっしゃることになりました。大家さんのご家族は当時は東京住まい。

「家族をこの夏、島に呼びたいんだけどバニラエアの予約方法がわからない。インターネットで予約をしてくれないか」

そう言われて、私はフライトの予約のお手伝いをし、その後、大家さんのご家族がいらした時、宴席をご一緒させていただきました。

大家さんのお孫さんはその時、6歳。海を見るのも初めてだったそう。

「もう、毎朝、『今日も海へ早く行こう』と言われて起こされて困るんだよ」
と楽しげに話をしてらっしゃいました。

夕暮れ時のビーチで遊ぶ来島してくれた友人のお子さんと同じ移住者のご家族と飼い犬。毎日のようにある、のどかな風景です。
夕暮れ時のビーチで遊ぶ来島してくれた友人のお子さんと同じ移住者のご家族と飼い犬。
毎日のようにある、のどかな風景です。

それから、今年の3月。
大家さんから、現在東京に住むご家族が戻ってくることになったというお話を聞きました。超高齢化が進む加計呂麻島では、上京したご家族が戻ってくることはとてもおめでたいことです。

「急な話で本当にすまない。引っ越し先はこちらでいくつか目星をつけてある」

そのように大家さんは言ってくださり、紆余曲折もありましたが、無事に次の家も決まり引っ越しをすることになりました。

このように、島に限らず田舎の家は急に大家さんの都合が変わることがあります。そもそも、不動産会社がない場所ですと、家を借りるのは大抵人づてです。そうなると、賃貸借契約書を交わすこともそうありません。こういった形で家を借りるのは、島に限らず田舎暮らしではよくある話だと思います。

トラブルを防止するために、大家さんと交渉し、不動産契約について学んで個人間で賃貸借契約書を作成する人もいれば、不動産会社や仲介業者に頼んで手数料を支払い契約書を交わす方も。もちろん、そのまま口頭での約束で住み続けている人もいます。

私の場合は、大家さんのご厚意で同じ島の同じ集落で次に暮らす家が見つかりましたが、もし何かあった場合は、必ずしもそのようにうまくいくとは限らないということは頭に入れておいたほうがいいかもしれません。

都会の『普通』と田舎の『普通』


加計呂麻島の俵という集落にある民俗資料館にあった縄を結う機会。地方で家を借りる時はこのような古い品物が家に残っている場合も。
加計呂麻島の俵という集落にある民俗資料館にあった縄を結う機械。地方で家を借りる時はこのような古い品物が家に残っている場合も。

このように、加計呂麻島では、家を借りることも都会と同じやり方ではできません。
都会での「普通」と田舎での「普通」は、全く違うもの。
「普通だったらこうでしょ」、「都会だったらこうなのに」。
そんなことを言っても始まらないのが、田舎暮らしの実情です。

住む場所を決める時に、重要視する部分は人それぞれ違います。
都会でも、家賃、交通アクセス、日当たりや風通し、周辺環境、築年数など、どれを優先するかしないかは家選びについて回ることです。
田舎だとさらに、大家さんとの交渉や契約書をどうするか、床の凹みや雨漏りなど大掛かりな修繕が必要な場合はどちらが経費を持つか、改装はどの程度可能か、大家さんのご親戚などの荷物が残っている場合は処分していいのかなど、都会で家を借りる時には考えることなどない事案が発生します。

何がOKで何がNGなのかは人それぞれですが、お互いの「常識」や「普通」は違うものだと認識し、理解しようと努めることから、その場所に住むことが始まる気がします。

時間と手間暇をどこにかけるか


波が作る砂の模様。景色も都会とは全く違い、人の足跡ひとつないビーチがそこら中にある島です。
波が作る砂の模様。景色も都会とは全く違い、人の足跡ひとつないビーチがそこら中にある島です。

現在、私も新しく引っ越した家で、家の木枠に巣食うキクイムシという虫に驚いたり、裏庭に生えた竹が家の床を突き破りそうでどのように処理をすればいいのか戸惑ったりしています。

その度にどなたかに聞いたり、自分で調べたりして対処しているのですが、
「そりゃ、自然が近いんだもん。虫もいるよね」
「竹の生命力ってすごいんだな」
と、当たり前のことながら新鮮な発見をしたような気持ちになったり、島の方から聞く虫や植物への対処法や知識を興味深く聞いたりしています。

契約面の話と同様に害虫や雑草の問題も、都会では不動産会社や仲介業者にお金を払い、管理会社に連絡すれば済むことです。
けれど、島暮らしでは、自分でどなたかに聞くなり、調べるなりをして、時間と手間暇をかけ対処しなければなりません。

しかし、お金を稼ぐのも、家や庭の手入れをするのも、「時間を使う」「手間暇をかける」という点では変わらないものだと私は思います。

引っ越してより近くなった家の最寄りのビーチ、諸鈍長浜の夕陽。
引っ越してより近くなった家の最寄りのビーチ、諸鈍長浜の夕陽。

自分の人生において何に時間を使うか、手間暇をかけるか。そして、それらをしている間、楽しみや喜び、発見があるかどうか。

都会では当たり前の「便利で虫もいず雑草も生えない新しい住居」がないからこそ思う、自分に対する問いかけは、「住む」ことや「暮らす」ことにつながる何か大事なことに結びついている気がします。