白銀世界に現れた、伝統と現代が出会うX(クロス)型の山荘「Femunden Cabin」

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ノルウェー最大の湖のひとつでもあるフェムンド湖。世界遺産としても知られる炭坑の街、レーロース南部から30分ほど車で行ったところにある。この湖を含む一帯は南スカンジナビアで最大の自然保護地域として知られるフェムンドマルカ国立公園として有名だ。毎年、多くの人々が、釣り、カヌーやトレッキングなどに訪れる。

その湖畔に15㎡ほどの大きさの古いキャビンが2つあった。施主はその古いキャビンのリフォームをノルウェー人建築家アシュラック・ホーンススに依頼した。ひとつのキャビンは築100年を超えるもので、もう一方はその古いキャビンのデザインに併せて作られた。そこで施主は、今の二つのキャビンのデザインを生かしながら、新しいキャビンと一体化させてほしいと要望した。

施主の希望通り、建築家は100年前のデザインを元に地元の森林から調達した、ダークブラウンに染色されたパイン材を用い、同じ寸法の木材をそろえた。そこで建築家は微妙に角度を変えて建てられた2つのキャビンが重なるところまでそれぞれ増築し、新たに作ったV字型の建物をつなげた。そしてすべての建物をトタン屋根で覆った。トタン屋根は雪が降っても積もりすぎないよう、うまく滑り落ちるような角度に傾斜させてある。

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「Femunden Cabin」と名付けられたこのキャビンは総面積85㎡。全体が片持ちデッキによって地面より50㎝ほど高く作られるという特殊な設計だ。そして基礎となった古くからある2つのキャビンは土地への影響を最小限となるように考え、支柱で支えられた。一見、建物が宙に浮いているように見える。これにより、この建物周辺の自然はそのままに環境への影響が最低限に抑えることに成功した。

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もともとあった二つのキャビンはゲストルームと倉庫として使用され、新たに築いたキャビンにほとんどの機能が収まっている。新たなキャビンは二翼から成り立っている。西に向かって建てられた短い棟には浴室、サウナや機械室など、比較的小ぶりな部屋が収まっている。

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また暖炉のあるリビングとキッチンエリアは長い棟にあり、リビングにはフェムンド湖やその背後に広がる山脈が見渡せる大きな窓がある。室内は床も天井も壁も、すべて無垢なパイン材が使われて、外観と打って変わって明るい。現代的なアルミ枠の窓は新しいキャビンだけでなく古いキャビンにも採用された。南に伸びた部分にはベッドルームがある。家具はすべて建てつけになっており、低く突出した丸太の関節部分や壁の一部を利用してキッチンカウンター、ベッドや戸棚を固定している。

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建物と建物の間に設けられたアウトドアスペースは、建物をつなぐ渡り廊下としての役割と屋根のある中庭、そして玄関としての機能を持ち、どの棟に入るのにもここを通る。中庭のデッキに上る入り口には金属格子が床にはめ込まれており、外から入る場合、この部分で靴の泥を落とすことができる。上部のトタン屋根は半透明のプラスチック製で日中は明かり取りになっている。この半透明のプラスチック製のトタン屋根は他の居住部分にも採用され、室内の明かり取りとして機能している。

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「このプロジェクトでの建築目標は、伝統的な建築の大雑把な設計と現代的な建築の精密さとをつなげるということでした。成形品で作られていない昔ながらの手作りの建築に、現代に作られた精密な直角のアルミ扉や窓などをはめ込んでいく作業は、伝統と現代を横に並べてつなげる作業でした。」と建築家は言った。過去と現在をつなげた結果、生まれたのがこのクロス型のキャビンだった。

伝統的な部分を大切にしながら、新しい技術や柔軟な発想で生まれ変わった築100年のキャビン。これから更に100年、この家に住む住人を見守っていくことになりそうだ。

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