フランスのエスプリ漂う、180枚の古ドアと廃材を使ったパビリオン「The Circular Pavilion」
2015年11月30日から12月11日まで、フランスのパリで開催されていた「COP21」(気候変動枠組条約第21回締約国会議)。200近い国と地域が参加し、温室効果ガス削減に関する取り決めが話し合われた大規模な国際会議で、世界中の注目がパリに集まった。そんな中、時期を同じくしてパリ市庁舎前広場にこんな建造物が現れ、パリジャンたちを驚かせたという。
広さ70㎡の建物の名前は、「サーキュラー・パビリオン」(the Circular Pavilion)。市民に無料で開放され、会議や展示会、ワークショップ会場として使われる多目的パビリオンなのだとか。
名前の「サーキュラー」とは円形を指すけれど、この建物はどう見ても円形ではない。その理由はカタチではなく、この建物を作るために使われた材料にある。
まず、一番目を引くこの扉たち。これはパリ19区の工事現場から回収された180枚の中古木製ドアなのだ。
ドアノブを外して位置をずらしたり多少のメンテナンスが加えられ、パビリオンの外壁を覆っている。ドア以外の外装素材も、基本的に廃材が利用されているというから驚きだ。パリの工事現場は、宝の山なのか?そればかりでなく、それをアレンジする建築家のセンスが素晴らしい。
建物の外側のみならず、内装やインテリアも「使い回し」が徹底されている。断熱材としてスーパーマーケットの屋根から取り外された素材が使われていたり、中に並べられている椅子50脚は全てリサイクル・ショップからのものだという。更に照明は、公共の街灯のストックから持ち出しているというから脱帽だ。
そう、名前の「サーキュラー・パビリオン」は物資の循環、建築材やインテリアを上手く再利用するコンセプトを表現しているのだ。そしてその古き良きものを再利用したパビリオンが、歴史ある建物に囲まれたパリにしっくり溶け込んでいるのも味わい深い。
この市庁舎前広場での設置は1月6日で終了なのだが、今後はパリ15区に移築されスポーツ協会のクラブハウスとして再活用されるそうだ。ぜひ新しい場所でも、人々に愛され続けて欲しい。
(文=倉田直子)