とことん環境に優しい3Dプリントキャビン「Ashen Cabin」

via: https://www.dwell.com/

今回の舞台はアメリカ合衆国。

アメリカ一の都市とされるニューヨークを本拠とするデザイン会社の「HANNAH(ハンナー)」とカーネル大学の建築学の教授助手が共同で制作に関わった。

このスモールハウスの名前は「Ashen Cabin(アシェン・キャビン)」

建設された場所もニューヨークではあるが、中心からは離れた森の中だ。

基本的にこのスモールハウスは3Dプリント技術を使って作られた。非常にロボティックな感じもしつつ、形としては杓子定規な感じはなく、非常にユニークで、木材も使われ有機的な感じもある。

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建物を支えている支柱も3Dプリントによって作られている。
よくみると水平のレイヤーで積み上げられた線が見え、実際に3Dプリンターで作られたことがわかる。

支柱の一つは長く、それがそのまま煙突となっており、まるでおとぎの国にいるかのようなクリエイティビティを感じさせてくれる。

そして、この3Dプリンタの支柱に支えられるかのように、このAshen Cabinは立っている。

外壁や内装に使われているこの木材は、実はアオナガタマムシにより、傷ついていてもまだ使えるトネリコの木を使用している。

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アオナガタマムシとは2002年ごろに貿易などの往来によってアメリカにやってきた外来種で非常に侵略性が高く、現在アメリカ国内の87億本ものトネリコ木々の生存を脅かしており、その数はニューヨーク州だけでも1/10の数になってしまった。

一度アオナガタマムシがトネリコの木に住み着くと、そこを腐らせてしまうか、活動エネルギーによって燃やしてしまう。
そして、そのどちらのシナリオを辿ったとしても、大気中にCO2を放出してしまうのだ。

あえて、ダメージを受けたトネリコの木を使うのは、それ以上CO2を放出させないためということと、木材として伐採され続けている木をこれ以上減らさないためと2つの大きな社会的意義がある。

また、通常なら「もう使えない素材」というものを使えるように、使いやすくすることは3Rの根本でもあり、環境問題に対して非常に効果的だ。

この家がAshen Cabinなのもトネリコの木(ash tree)から由来が来ていたのだ。

また、我々が普段使っているコンクリートに関しても、世界のCO2排出量の8%はコンクリートから発生しているものとされており、非常に膨大な量のCO2を排出していることがわかる。

その点においてもこのAshen Cabinは3Dプリント技術を効果的に使うことによって、必要な場所にだけコンクリートを正確に「置いていく」ことができるため、コンクリート作業の無駄を減らすことができるのだ。

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実際に中に入ってみるとリビング、寝室、キッチン、個室などしっかりと生活に必要なスペースがあり、実用的だ。

床も3Dプリンタで作られており、積み重ねて作った跡がそのまま床の模様となっている。
結果的にユニークで、デザイン的にも優れたものとなった。

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この家のディティール(詳細)を見てみても非常に細かく、よくできている。
壁に関してもトネリコの木を段々に積み重ね、綺麗な模様を作りつつ、窓のフレームには黒の合板を使いコントラストを高めてスタイリッシュさを演出している。

このような精巧な作りを可能にしたのはやはりコンピューターの作りで、イレギュラーな形の材木を一つ一つどのようにカットして組み立てていけばいいかエミュレートしていったのだ。

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家のデザイン全体としても、まるでトネリコの木から生えた枝をイメージし、アシンメトリカルにしていて、確かにこの家はトネリコの木の生まれ変わりのようだ。

3Dプリントや最新技術を効果的に使うことで社会問題や環境問題を解決する手がかりが見つかるかもしれない。