契約金2億円のメジャーリーガーの家はレトロなワーゲンバス!「A Volkswagen Westfalia named Shaggy」

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2015年のMLB(メジャーリーグ)公式成績予想ランキング(全体)で17位となった、トロント・ブルージェイズ(※)のDaniel Norris投手。2011年、当時18歳の彼に提示された契約金はなんと200万ドル。若くして億単位の金額を手にしたルーキーならば、自分へのご褒美は富の象徴のようなポルシェやフェラーリなどを選びそうなもの。しかしDanielさんが選んだのは、1978年式のレトロなフォルクスワーゲンの、ウェストファリア製キャンパーでした。

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Danielさんが子供の頃から憧れていたワーゲンのマイクロバスは、売るつもりのなかった前オーナーに頼み込んで譲ってもらったという思い入れのある車。ワーゲンのマイクロバスやキャンパーは熱狂的なファンがいることで知られていますが、これまでメジャーリーガーがこのタイプの車に食指を動かすことはあまりなかったのではないでしょうか。

Danielさんが他のメジャーリーガーと比べて異色なのは車の趣味だけではありません。一般的にメジャーリーガーの住まいと聞いて思い浮かべるのはプールや専属のシェフがいるような豪華な邸宅でしょう。けれども彼の選択はこれまでのメジャーリーガーの住む家のイメージとはおよそかけ離れたものでした。

現在の所、Danielさんには広いプール付きの豪邸はおろか、彼の愛車を泊めるガレージすらありません。あるのは「Shaggy」の愛称で呼ぶ、このマスタードイエローのワーゲンのマイクロバスだけ。そう、彼の邸宅は彼の愛車であり、Shaggyがオフシーズン中の彼の根城なのです。


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Shaggyで暮らすにあたって、Danielさんはソーラーパネルとベッドを新たに付け加えました。時には車内のベッドではなく、外にテントを張って眠ることもあります。しかも食事はキャンプ用のコンロを使って調理と、ブルージェイズのユニフォームを着ていなければ、誰もあのDaniel投手だと気付くことなく通り過ぎてしまいそうです(つい最近も車の中で寝ていたら見知らぬ男性からホームレスの人と間違われ、お金を持ってきたその親切な男性にお祈りまでされたそう…)。

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春季キャンプが行われるフロリダ州のダニーデンへも、彼の実家のあるテネシー州から約1カ月の車上生活を経て辿り着きました。なんでも肩や体幹のトレーニングを兼ねたサーフィンを満喫するため、道中6ヶ所以上のポイントをまわっていたら1カ月もかかってしまったのだとか。サーフィンと野球には通じるものがあると語るDanielさんは、豪邸のプールには興味が無いようです。彼は海こそが我がプールと考えるようなシェア精神の持ち主だからです。

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そんなDanielさんにとってアウトドアでの遊びは子供の頃からの習慣でした。彼の父親はテネシー州で長きにわたって愛されるマウンテンバイクショップのオーナー。Danielさんの家族は昔から週末になると一家総出で自転車を駆り、キャンプに出掛けてはハイキングやロッククライミングに興じていたという生粋のアウトドアファミリーなのです。

彼の育った環境を見れば、アウトドアがDanielさんの中で重要な位置を占めているという事が理解できます。常に集中力が求められるプロ野球の世界において、自然の中に身を置き、自然と対話することで自分を取り戻すことのできる時間が彼には必要なのでしょう。Danielさんがオフシーズンの生活の場にワーゲンのマイクロバスを選んだのも、至極納得の行く選択だったのです。

サーフィンに最適な波を求めて気ままに海岸線を移動し、海を眺めながらゆっくりと食事を取る。彼にとってそんな自由を与えてくれるのは、動かすことのできない広すぎるお屋敷ではなく、このShaggyだけなのかもしれません。

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またDanielさんがこのようなライフスタイルを送るようになったのには、アウトドアが好きという以外にも理由がありました。

Danielさんの両親は彼が幼い頃からDanielさんと二人の姉たちにシンプルなライフスタイルの尊さについて説いて聞かせてきたと言います。子供の頃を振り返ると、欲しい物を充分に買い与えられた記憶が彼にはありませんでした。友達がシーズン初めにバットとグローブを新調しても、Danielさんは以前のシーズンと同じ物を使いました。しかしそのような経験を通して、彼は次第に与えられた物に対する感謝の気持ちを学んでいくのです。

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わずか18歳で2億円以上の大金を手にした時、これは自分にとっての試練だとDanielさんは考えました。急激な生活の変化に自分自身が染まらないように、彼はあえて子供の頃の憧れの車で生活を送ることで、本来の自分を見失わないよう努めていたのではないでしょうか。

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一生懸命働き、シンプルな生活を送る。両親から繰り返し聞かされたこの言葉のおかげか、彼は若くして10万ドルもするような高級車に乗ることはありませんでした。今も少しのお金で生活できているのは、これまでの両親の育て方のおかげだとDanielさんは言います。

彼にとっての贅沢は、オーシャンビューを前に、たっぷりの食事とフレンチプレスの温かいコーヒーを飲みながらビーチで暮らすこと。メジャーリーガーとなって何不自由ない暮らしが送れる身分となった現在も、「足るを知る」生活をごく自然なこととして楽しんでいるDanielさん。その様子はマウンドで彼の左手から放たれる速球のごとく、新しい住まい方を求める人々の心の奥に、「自分らしくいることの大切さ」をズシンと投げかけてくれます。

(文=伊藤愛)

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※2015年7月デトロイト・タイガースに移籍。

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