景観保護地区での挑戦! 街並みをそろえながら空間を広げた家「Stretched Home」
オランダのDelftnegという町は、昔からコテージのような三角屋根の住宅が並ぶ町。同じような形の家が並ぶ街並みはとても可愛く、なんだかリズムが生まれているよう。今回ご紹介するのは、その町に1900年から建つ家のオーナーが、建築事務所RV Architectureに依頼した、増築の計画です。
この増築を依頼した理由は2つ。単純に家族が増えて居住空間が狭くなったことと、周りの家が皆バックヤードに1階を増築していたこと。しかし、RV Architectureのデザイナーは、本当にこの家に必要なのは、リビングやキッチンなどの生活空間ではなく、2階にある各自の個室だということに気づきました。そうして、1階だけを増築するではなく、2階まで増築することになったのです。
しかし、この地域では高さ3mを超える増築は基本的には禁じられています。そこで、デザイナーは行政に認めてもらえるように説得。結果として、1階だけの増築よりも2階分まるまる増築したほうが、現存する景観を壊さず、他の家になじむという判断が下され、承認されたそうです。「良い景観を保つ」という目的を、ルールをただ守るだけではなく、それを超えてよりよい形で達成したデザイナーの手腕もさることながら、それを認めた行政の柔軟さも素晴らしいですね。
ハードルを乗り越え完成されたこのStretched Homeは、景観にとてもなじみつつ、なおかつ開口部の開け方を他と少し変えることで、家の個性も出しています。増築部分の2階はちょうど2人の子供達のための子供部屋が2つあるそうですが、大きい開口部から入る光がとても気持ちよさそうです。
最初は1階部分の増築だけのはずだった、この計画。終わってみると、2階分まるまるの増築に変更され、しかも行政が定めたルールを破る形で達成された計画です。しかし、全てが「古くからある良い景観を守りつつ、住人にとって使いやすい快適な家を作る」という目的を達成しています。目的に応じて、臨機応変に手段をデザインすることの大切さが伝わって来るような気がします。
Via:
design-milk.com