小屋×都市 #11 オフグリッド、自給自足の小屋|都市を科学する〜小屋編〜 – オンデザインパートナーズ×YADOKARI
水、エネルギー、食糧、トイレ。
必要なものを自給する小屋がある。
山や森などの自然の中はもちろん、インフラが活用できる都市にもだ。
どんな方法が、あるのだろう?
なぜそんな小屋が、ほしいのだろう?
生活には何が必要? どう自給する?
必要なものを自給自足しながら過ごすための、小屋がある。
山や森、草原といった、都市から離れた自然の中で。
あるいは、敢えてインフラが活用できる都市の中で。
では小屋は、生活に必要な何を、どう供給できるのだろうか?
雨や空気から得て、浄化して、循環させる水
まず水は、雨を集めるのが分かりやすいだろう。
空気中の水蒸気から水を得るという発想もある。
排水を浄化して再利用する、“循環”も大事な考え方だ。
太陽や風などから効率よく受けるエネルギー
エネルギー源となる太陽光や風は、効率よく受けたい。
いつでも使うために、発電だけでなく蓄電の機能も必要になる
太陽光を電気に変えず、光や熱として活用することもできる。
暖房や料理の熱源には、薪を使うのもシンプルだ。
食糧や小屋自体も、つくって自然に返す
食糧も、工夫次第で生産できる。
トイレは草むらなんかで済ますこともできるが、コンポストトイレを備えるのも一案だ。
究極的には家までも、地元の資材でつくって自然に返すという考え方がある。
水、エネルギー、食糧、トイレ、家。
どうせなら、そのいくつかを同時に、効率的に得られるよう工夫したい。
自給自足の小屋が、なぜほしい?
ところで、必要なものを自給する小屋がほしいのは、なぜだろう。
都市から離れた自然の中で過ごしたくて、そのために必要だから?
それだけなら、外から持ち運んだ方が楽ことも多いし、都市に自給自足の小屋をつくる理由もない。
環境に調和しながら生きていきたいから?
太陽や風や雨を通じて、自然とのつながりを感じたいから?
インフラに依存せずとも生きていけることを、確かめたいから?
シンプルな暮らしで、本当に必要なものを見つめ直したいから?
どれも、推測に過ぎないけれど。
高度化、複雑化、都市化が進んだ社会にある、いろいろな欲求が見え隠れする。
(了)
<文:谷明洋、イラスト:千代田彩華>
【都市科学メモ】 | |
小屋の魅力 |
オフグリッドや自給自足の暮らしを実現できる |
生きる特性 |
小ささ、アレンジしやすさ |
結果(得られるもの) |
自然の中での時間、環境との調和、地球との接点、生きる力、暮らしに必要なものへの理解 |
手段、方法、プロセスなど |
何を自給するか、考える 本稿で取り上げた水、エネルギー、食糧、小屋の資材を中心に、何をどこまで自給するのかをまず、考えたい。自給自足は、それ自体が「目的」にも、自然の中で時間を過ごすための「手段」にもなり得る。目的や環境に応じて、都市インフラの活用や、持ち運ぶことを選択肢に加えても良いだろう。 |
自給する機能を得る 自給すると決めたものを、どうやって得るのか。試行錯誤して自作するもの楽しいし、必要な部分や、あるいは小屋全体を購入することもできる。発電や水の循環、トイレなどについてはテクノロジーが常に進んでいるので、最新情報をチェックしてみよう。 |
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時間をかけて、楽しんでみる 水は雨が降らなければ得られないし、食糧を生産するにも時間がかかる。曇りが続いて思うように発電できないこともあるかもしれない。コントロールしきれない自然に対して、どのくらいのバックアップを用意し、どのくらいのことなら受け入れるのか。自分らしく楽しみたい。 |
【Theory and Feeling(研究後記)】 |
日本科学未来館に勤めていた前職時代に、「循環」や「地球と人間の関係」を考えるようになりました。「有限の閉鎖空間である地球で、人類が生き延びるためにはどうするのか?」という問いがあるからです。
島根県にある海士町という離島を訪ねたときのこと。「外との境界がはっきりしている離島は、循環を考える良い場所なんじゃないかな」。島の学習塾のスタッフさんから、そんな話を聞きました。 未来館の毛利衛館長は、人が宇宙に滞在するための「国際宇宙ステーション」を「地球の縮図」と位置づけることがありました。国際宇宙ステーションは確かに、オフグリッドな閉鎖空間(食糧は運んでいくけれど)。「究極の小屋」と言えるかもしれません。離島、国際宇宙ステーション、そして小屋。有限性や閉鎖性のある場所で感じられることは、地球にも通じるような気がしてきました。(たに) 高度400kmに人が滞在する「国際宇宙ステーション」は”究極のオフグリッド小屋”? |
「都市を科学する」の「小屋編」は、横浜市の建築設計事務所「オンデザイン」内で都市を科学する「アーバン・サイエンス・ラボ」と、「住」の視点から新たな豊かさを考え、実践し、発信するメディア「YADOKARI」の共同企画です。下記の4人で調査、研究、連載いたします。
谷 明洋(Akihiro Tani) アーバン・サイエンス・ラボ主任研究員/科学コミュニケーター/星空と宇宙の案内人 1980年静岡市生まれ。天文少年→農学部→新聞記者→科学コミュニケーター(日本科学未来館)を経て、2018年からオンデザイン内の「アーバン・サイエンス・ラボ」主任研究員。「科学」して「伝える」活動を、「都市」をテーマに実践中。新たな「問い」や「視点」との出合いが楽しみ。個人活動で「星空と宇宙の案内人」などもやっています。 |
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小泉 瑛一(Yoichi Koizumi) 建築家/ワークショップデザイナー/アーバン・サイエンス・ラボ研究員 1985年群馬県生まれ愛知県育ち、2010年横浜国立大学工学部卒業。2011年からオンデザイン。2011年ISHINOMAKI 2.0、2015年-2016年首都大学東京特任助教。参加型まちづくりやタクティカルアーバニズム、自転車交通を始めとしたモビリティといったキーワードを軸に、都市の未来を科学していきたいと考えています。 |
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さわだいっせい / ウエスギセイタ YADOKARI株式会社 共同代表取締役 住まいと暮らし・働き方の原点を問い直し、これからを考えるソーシャルデザインカンパニー「YADOKARI」。住まいや暮らしに関わる企画プロデュース、空き家・空き地の再活用、まちづくり支援、イベント・ワークショップなどを主に手がける。 また、世界中の小さな家やミニマルライフ事例を紹介する「YADOKARI(旧:未来住まい方会議)」、小さな暮らしを知る・体験する・実践するための「TINYHOUSE ORCHESTRA」を運営。250万円の移動式スモールハウス「INSPIRATION」や小屋型スモールハウス「THE SKELETON HUT」を発表。全国の遊休不動産・空き家のリユース情報を扱う「休日不動産」などを企画・運営。黒川紀章設計「中銀カプセルタワー」などの名建築の保全・再生や、可動産を活用した「TInys Yokohama Hinodecho」、「BETTARA STAND 日本橋(閉店)」などの施設を企画・運営。著書に「ニッポンの新しい小屋暮らし」「アイム・ミニマリスト」「未来住まい方会議」「月極本」などがある。 |