ドイツの森に出現。現地の木でつくられたログチャペル「wooden chapel in germany」
一面真っ白な雪景色の中、丸太が積み上げられたように見えるのは、なんと、ログチャペル。このチャペルが建っているのは、南ドイツのニュンヘンベルグ、ストゥーツガット、ミュンヘンなどの大都市に囲まれ、ちょうど真ん中に位置するunterliezheim (ウンターリッツェイム) 。
遠くから見て、ほとんどの人がチャペルだと気づかないのでは、と、思えるこの個性的なログチャペルは、 john pawson(ジョン・パウソン) が「空間と物質に関して考える実験のようなもの」として作った。61本の現地のベイマツログを使い制作され、非常に趣のある教会となった。
使用したベイマツログは、dinesen (ディネセン)という現地の木製フロアリングの会社から、品質や適正などを一本一本厳選して購入したもの。
「木製のチャペル」と書くと、いかにも牧歌的な昔ながらの教会というイメージだが、このチャペルはむしろその逆で、非常にモダンで計算された新しい形の教会といえるだろう。
「できるだけシンプルなシルエット」がコンセプトのこのチャペルは、コンクリートの土台の上に、9メートルのベイマツの丸太を木肌もむき出しのまま横に倒して、7メートルの高さまで積み上げてそのまま乾かしたであろう制作過程が、完成形から見て取れる。
ログハウスの特徴は、高い調湿性と断熱性。木は伐採後も呼吸をするので、丸太のままだと自然に湿度を調整してくれる。さらに、木材に含まれた空気が断熱材になって、写真のように雪の降り積もる極寒のドイツでも凍えることなく過ごすことができる。ログハウスをこの環境の地に建てたのは理にかなっているということだ。
ログハウスの魅力は、年数が経つにつれて「木が熟成」していき、外観としてもさらに味のある感じになっていくところ。このログチャペルも年月とともに、森の中に自然に溶け込む存在になっていくことだろう。
このログチャペルには、くりぬかれたような小さな窓が一つだけ、それも土台のすぐ上の低いところに。チャペルで礼拝が終わり、のんびりと腰掛けて、外を眺められる目線の高さに合わせて窓をつくったのだ。眺める視線の先には、一面の雪景色。小さく切り取られた窓から見る景色は、一服の絵画のようだろう。
ますます、チャペルの内部に興味がわいてくる。
気になるチャペルに入ってみると、室内はとても薄暗い。そこでまず目に入ってきたのは、正面の木目の壁に自然光で輝く十字架。さらに、スリットされた天井からかすかに差し込む光が非常に神々しく、確かに、ここに何か神聖なものが存在するかのように思える。このログチャペルは、まさにこの自然光で浮き上がる十字架を見るために、室内が薄暗くなるように計算された構造になっているのだ。
先ほど人が腰掛けていたベンチはコンクリートの土台を利用していて、すべてにおいて無駄がない。低い位置にくりぬかれた窓は、腰掛けて外の景色を眺めるだけでなく、薄暗い室内の足下を照らす明かりにもなっている。
室内の壁は、外壁と異なり平らに加工され、木目や年輪の美しさが活かされている。コンクリートの無機質なイメージと、温もりを感じる木材の組み合わせが見事にはまっている。
このチャペルは、自然光で輝く十字架を拝むという感動的な瞬間のために、綿密に計算されてつくられたのだろう。雪景色の中、凜とした佇まいのチャペルでの礼拝は、心が洗われ清らかなものとなることだろう。
教会という極めて神聖な建物を、ラフでフランクなイメージのログハウスという意外とも思える製法で、しかもシンプルに作り上げたことで、このチャペルの設計者の「空間と物質に関して考える実験のようなものとして作った」というコンセプトは非常に的を得ていて、実験は大成功なのでは。年数がたち、木が熟成して、チャペルが森の中に溶け込んだ姿をみてみたいものだ。
建物における既成概念を取り除き、全くありそうも無い組み合わせを試みてみるのも、新しい発見につながるのではないだろうか。
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