【アフターレポート】\ 未来団地会議「鶴川団地プロジェクト」/ 人を惹きつける新時代の団地暮らし 〜「地域の中庭」としての団地の未来〜
未来団地会議「鶴川団地プロジェクト」は、東京都町田市にある鶴川団地に住まいながら地域との関係性づくりに取り組む「コミュニティビルダー」を中心に、団地住民や地域に関わる人と一緒に、団地の新たな魅力を創造・発信していく取り組みです。そんな鶴川団地プロジェクトの2022年キックオフとなるオンライントークイベントが、6月29日(水)に行われました。
東京、埼玉のそれぞれのエリアで「団地」という空間を捉え直し、まちに根付いた活動をしている4人のゲストが集まり、「『地域の中庭』としての団地の未来」についてお話をしていただきました。
「地域の中庭」としての団地
1967年に入居を開始し総戸数1682戸を誇る鶴川団地は、かねてより住民だけでなく地域の人々にも開かれた場として、地域のお祭り会場などにも使われています。2021年に鶴川団地プロジェクトが始まって以降は、地域の魅力発信が行われたり、地域プレイヤーとの新たな繋がりが生まれたり既存の繋がりが可視化されたことにより、イベントや地域連携をはじめとした様々な活動が行われるようになりました。
このような活動を通して、「団地周辺の地域を『団地圏』というひとつのエリアとして捉えたときに、その中心に拠点として団地がある」という考え方から生まれたのが、本イベントのキーワードである「地域の中庭」です。本イベントは、団地の機能を「地域の中庭」という視点から捉え直すことで、人との繋がりから生まれる新しい暮らし方を考えるきっかけとなるよう、様々な「団地圏」で活躍するプレイヤーの方々に登壇していただきました。
➀鶴川団地@東京都町田市
石橋竣一さん:1993年 東京生まれ。インドネシア、シンガポール、アフリカの経て、鶴川に流れ着く。パーティー、イベントのディレクション、オーガナイズ、MC、などをしながら、プライベートで、都内のシェアハウスを主宰。ストリートダンスやコンテンポラリーなどを踊るダンサー。
鈴木真由さん:1994年 東京生まれ。フィリピンと日本のハーフ。イベントプランナーとして、イベントの企画や空間のディレクションに携わる。ウェディングパーティーのプランニング経験も多数。本を読んだり、イラストを描くのが趣味。
まず初めにお話してくださったのは、鶴川団地プロジェクトの石橋竣一さんと鈴木真由さん。2021年5月に鶴川団地に移住し、コミュニティビルダーとして活動されています。
敷地内に集会場や商店街(鶴川団地センター名店街)、郵便局、図書館、複数の公園がある鶴川団地。団地1階部分に商店が集まる商店街が特徴的で、これまでテナントに空きが出たことがほとんどなく、現在もすべてのテナントが埋まっている活気あふれる場所となっています。他にも公共の施設があるため地域の人も団地に足を運ぶことが多いうえに、団地周辺にも地域の活動拠点がたくさんあるため鶴川はコミュニティの繋がりが強いまちだと言われているそうです。
そんな鶴川団地にコミュニティビルダーとして入居している石橋さんと鈴木さんは、鶴川団地プロジェクト1年目の活動として、イベント開催や地域の方々との交流、そして地域の魅力や団地暮らしの発信などを行ってきたと言います。
鈴木さん「インタビューでは、50年以上鶴川団地で活動されている方や団地周辺で学習塾をやっている方、私たちと同じように団地に引っ越してきた同世代の方などにお話を聞き、web記事にまとめて発信を行ってきました。半世紀以上この場所に暮らし続ける理由、鶴川を盛り上げるために活動をしている理由、同じ目線から見た団地暮らしへの想いなど、それぞれの立場から見えている鶴川団地やこのまちのお話を聞くことができて、鶴川の知らなかった魅力に気付くきっかけになりました。」
石橋さん「昔から地域の自治会や商店会さんがやられているイベントに積極的に参加をさせていただいて、実際のまちの雰囲気を肌で感じるというのをこの1年間意識して生活をしてきました。コロナの影響で数年ぶりに開催となったイベントなどもあったのですが、これを楽しみにしている地域の方々がたくさんいらっしゃることが伝わって、こうやって育まれている地域の繋がりがあるんだなと感じました。」
従来からある地域イベントへの参加に加え、団地にある資源を活かした新たなイベントづくりも行ってきたそうです。
石橋さん「団地内にある町田市立図書館の本や紙芝居を借りて、集会所で読み聞かせするイベントを開催したところ、地域の方から好評でシリーズ化することになりました。団地内にある音楽教室とコラボレーションをさせていただき、紙芝居と楽器の演奏を組み合わせた形で開催した回もあります。近くに幼稚園や小中学校があり子どもが多い地域なので、そういったところに目を向けた活動もしていけたらと思っています。」
コラボ企画を経て、読み聞かせをするボランティアに名乗り出てくれる方がいたり、会長さんをはじめとする商店会の方々がイベントの告知に協力してくれたり、駄菓子屋とコラボしてより大きなイベントとして『だんちでえほん』を開催したりと、だんだんと地域の方を巻き込みイベントが成長しているそうです。
石橋さん「地域で知り合った方々に協力していただき、2022年3月に昨年度の集大成として『鶴川万福祭』を開催させていただきました。この1年間ですごくたくさんの方々と知り合えた一方で、まだまだ知り合えてないクラスターの方もたくさんいらっしゃるなというソフト面と、団地のハードを自分たちの活動でどれだけ活かしきれてるかなという両面から、1年間分の活動をフィードバックしつつ、今後の団地の活動を考えていきたいと思っています。」
人々の活動が活発で賑わっているまちの中心に「鶴川団地」という拠点があることで、地域に点在していた賑わいが交わることができ、さらなる賑わいを生む。そんな団地の「中庭」としての機能を感じることのできるお話でした!
鶴川団地プロジェクトについてもっと知りたい方はこちら!
https://yadokari.net/type/future-danchi/
➁いろどりの杜@東京都足立区
山梨県北杜市生まれ。東京暮らし13年目・団地暮らし2年目。2019年4月から東京と地元・山梨の里帰り二拠点生活を開始。二拠点生活をする中で、暮らしに密着した人と人のつながり、地域へ拡張する家族のあり方から「暮らしの豊かさ」を再認識。その反動で東京の無機質でモノクロな生活に違和感を感じている時に、築56年のリノベ団地「いろどりの杜」に出会う。団地コミュニティビルダーとして、住民と一緒にDIYやBBQを楽しんだり、地域との接点を作る「パン祭り」や「街開きイベント」の企画・運営、「シェア窯PJT」や「あだちシティコンポスト」など外部からの持ち込みプロジェクトをはじめ、団地を舞台に様々な取り組みに挑戦中。
続いてお話いただいたのは、東京都足立区にある団地「いろどりの杜」の辻麻梨菜さん。いろどりの杜がリニューアルオープンした2020年2月より入居し、本業の傍らコミュニティビルダーとしてコミュニティ運営に携わっています。
いろどりの杜の前身は、1964年に建設された数十棟の建物からなる東綾瀬団地。建設当初、複数の団地が立ち並ぶいわゆる「団地群」があったそうですが、時代と共に徐々に建替えなどが進む中、取り壊されずに残されていた2棟をフルリノベーションし、2020年2月にリニューアルオープンしたのがいろどりの杜です。
辻さん「いろどりの杜は、“DIY〜Danchi is yourself〜というコンセプトを掲げていて、賃貸ですが壁に色を塗ったり棚をつけたり自由にカスタマイズすることができます。ただ、私のように初心者にはいきなりDIYと言っても難しいことも多いので、団地の住民で庭にある工房でお仕事をされている大工さんに相談し、器具などをお借りしながらDIYができる『シェア工房』という企画を月に1度行っています。
他には敷地内で火を使えるのが特徴で、小屋にある共用のアウトドア用品を使ってBBQなどが頻繁に行われていたり、同じく敷地内にあるシェア菜園で住民の方が野菜を育てたりしています。」
コミュニティビルダーとしての活動は「ライフワークの延長」と語る辻さんは、住人同士がコミュニティとして仲良くなっていくための仕掛けづくりとして様々なイベントを行っているそうです。
辻さん「住人同士の交流を深めるため、シェア工房やBBQ、たまたま住人がもらってきたドラム缶を利用した五右衛門風呂とそれに合わせたテントサウナなど、住人向けイベントの企画運営は積極的に行っています。
次いで、いろどりの杜からの発信で地域の皆さんにお越しいただくイベントを、大きなものは年に2回ほど開催しています。先日3度目を開催した団地パン祭りは、足立区にある人気のパン屋さんのパンをあえて我々が購入し団地住人が代理販売をするという、一般的なマルシェとは少し異なる方法で実施しており、住人が地域の方とコミュニケーションをとるきっかけになっています。もう1つの大きなイベントとしては、毎年秋にいろどりの杜の暮らしを体感してもらうための「団地タイム」というまちびらきイベントとして開催しています。」
他にも、同じく足立区にある「読む団地」の住人との交流やコラボレーションイベント、地域のプレイヤーと共にいろどりの杜や足立区の魅力を発信するオンライントークイベントなどを開催しているそう。さらに、こうした活動を続けているうちに、地域の方から「いろどりの杜でこんなことできない?」という持ち込み企画が届くようになったと言います。
辻さん「足立区で生ゴミの堆肥化に取り組む『あだちシティコンポストプロジェクト』さんが企画を持ち込んでくださり、いろどりの杜の庭に家庭ごみの二次処理をするためのボックスが設置されました。家庭から出た生ごみをボックスに入れ、それを発酵させることで堆肥にしているのですが、その堆肥をシェア菜園に使用し、シェア菜園で採れた野菜をBBQに使用するというように循環が生まれる場所へと育ってきています。」
個性的でまさにいろとりどりな活動が行われているいろどりの杜。強制されたものではなく、自由でゆるやかな日常のエンタメとして団地暮らしを楽しんでいる様子が印象的でした。何かをしてもしなくてもいい、だけどやりたいことがあったらそれを実現することのできるハードもソフトも整っている。この頼もしさが、「地域の中庭」として団地が人々を惹きつける理由の一つなのかもしれませんね。
いろどりの杜についてもっと知りたい方はこちら!
https://irodorino-mori.life/
➂北本団地@埼玉県北本市
1986年生まれ。埼玉県北本市を拠点としたまちづくり会社「暮らしの編集室」所属。マーケットの企画・運営、場の運営、文筆、編集、まちづくりなど、活動は多岐にわたる。本業は写真を撮る人。北本市内でシェアキッチン&シェアスペース「ケルン」北本団地「中庭」、シェアアトリエ「てと」の三つのスペースを運営中。
続いてお話いただいたのは、埼玉県北本市でまちづくりを行う「合同会社 暮らしの編集室(以下、暮らしの編集室)」のメンバーである江澤勇介さん。カメラマンとしてお仕事をする傍ら、北本出身・在住の30代で立ち上げた暮らしの編集室に所属し、多面的に北本駅西口エリアのまちづくりに携わっています。
暮らしの編集室は、荒川周辺の自然エリアを活用したマーケットやフェスの開催、市役所の芝生広場を活用した月に1度のマーケット、マーケット自体を1から作るワークショップ「マーケットの学校」マーケットの学校発のイベントである「&green market」、まちを日常的に楽しむためのシェアキッチン&スタジオ「ケルン」の運営など、北本市を盛り上げるために様々な取り組みを行っています。
「暮らしの編集室」をもっと知りたい方はこちら!
http://kitamotokurashi.com/
このように北本市で様々な活動を続けてきた暮らしの編集室が主体となり、2021年に北本市・UR都市機構・良品計画・MUJI HOUSEの5者連携事業である「北本団地活性化プロジェクト」が始まりました。1971年に生まれた北本団地は総戸数2000以上の大型団地で、全て賃貸なのが特徴です。2021年6月時点では、団地の中心にある北本団地商店街は半数以上が空き物件になっていたと言います。
江澤さん「自分が住んでいた頃、北本団地商店街はもっと賑わっていたのでやるせない気持ちがあり、これまでの活動の延長で何かやりたいと思うようになりました。5者で連携をしながら、建物1階でお店をしながら2階の住宅で暮らすという店舗付き住居のプランで移住者を呼びかけ、ジャズベーシストの旦那さんと間借りカフェなどの活動をしていた奥さんご夫婦が入居されました。お二人のご希望で2021年6月にジャズ喫茶『中庭』が誕生し、『中庭』を中心としたスペースをご夫婦とプロジェクトメンバーが共に運営をしています。」
江澤さん「オープンして1年になりますが、『中庭』は週に3,4日ジャズ喫茶として営業をし、週に1回ほど生演奏のジャズライブも行っています。その他の空いている日はレンタルスペースとしても運用しており、社会福祉協議会、手話で注文できるカフェ、不登校の子どもが集まる居場所、タップダンス教室、レンタルキッチンなど想像以上に多様な使われ方をしています。
先日開催された『中庭』のオープン1周年イベントでは、商店街のスペースを利用してキッチンカーの出店や地元の農家さんによる軽トラでの野菜販売などが行われ、普段あまり『中庭』を利用しない層の方からも『また開催してほしい!』という反響のメールなどをいただきました。シャッターが閉まっていても使い方次第で楽しみを作り出せるし、繋がりが生まれていくことを感じた出来事でしたね。」
さらに2022年5月には、北本商店街にまちの工作室「てと」というシェアギャラリー&アトリエが誕生したそうです。
江澤さん「『中庭』に来た近所の作家さん3人が商店街を気に入ってくださり『私たちもこの商店街に場を作りたい』ということで、『暮らしの中に”つくる楽しみ”を生み出す』をコンセプトにしたまちの工作室『てと』をオープンしました。ワークショップや教室、作品の展示販売などを行い、『中庭』とは異なる”ものづくりの場””ができたことで、相互作用が生まれ、商店街がさらに活性化し始めています。プロジェクトが始まり約1年が経ちますが、空き店舗は9まで減り、活用希望のお問い合わせも増えています。」
まちのなかで複数の小さな賑わいをつくり、それらが少しずつ地域の中の人を巻き込み外の人を惹きつけ、渦を巻くように広がっていく。同じまちの異なるフィールドで同時多発的に活動を行うおもしろさを感じると共に、「団地」というハードが持つ特異性をより強く感じることができるお話でした!
北本団地についてもっと知りたい方はこちら!
http://kitamotokurashi.com/category/%E5%8C%97%E6%9C%AC%E5%9B%A3%E5%9C%B0/
ジャズ喫茶「中庭」についてもっと知りたい方はこちら!
https://www.instagram.com/nakaniwa_danchi/
まちの工作室「てと」についてもっと知りたい方はこちら!
https://www.instagram.com/teto_kitamotodanchi/
➃富士見台トンネル@東京都国立市
1983年富山県生まれの建築家。2010年よりノウサクジュンペイアーキテクツ主催。故郷の高岡で手がけた「高岡のゲストハウス」で第15回ヴェネチアビエンナーレ国際建築展にて特別賞受賞。長崎県五島列島でのプロジェクト「さんごさん」に参加。2019年より国立市の富士見台団地にてシェアする商店「富士見台トンネル」をスタート。現在、東京理科大学、芝浦工業大学、東京都市大学にて非常勤講師。
続いてお話いただいたのは、東京都国立市の国立富士見台団地にあるシェアする商店「富士見台トンネル」のオーナーである能作淳平さん。建築設計を生業とし全国へ飛び回ることも多いなか、8年前子育てをきっかけに国立富士見台団地に移住されました。
能作さん「子育てが始まるタイミングで郊外住宅地の富士見台団地に引っ越しをしました。子どもを育てながらまったり仕事をしようという気持ちで移住をしたのですが、ありがたいことに仕事が忙しくなってしまい、ワイン関係の仕事をしていた妻が一次的に本業ではないパートタイムの仕事をしながら子育てをするという状況になりました。
郊外での暮らしは気に入っていたのですが、打ち合わせなどがある度に都心に出向くライフスタイルに疑問を抱くようになり、また妻のキャリアが一時停止していることも気掛かりで、まちで働く場所を作ることはできないかと考えるようになりました。」
1965年に開発によって建設された飛び地型の国立富士見台団地。谷保駅に最も近い第一団地にメインの商店街があり、能作さんはその一角にある空きテナントを利用して2019年にご自身の事務所兼シェアスペースである「富士見台トンネル」をオープンします。
能作さん「富士見台トンネルは、『妻のワインバー、事務所の横でやったら?』という家族の話から始まりました。しかし保育園のパパ友ママ友と話していると、ベッドタウンというまちの特性もあり、私たち家族と同じような境遇の方が多いことに気が付いたんです。生活のなかでママさんたちが持っている経験やスキルが埋もれてしまっていると感じ、それを掘り起こして発揮することはできないかという思いから富士見台トンネルの構想が生まれました。」
能作さん「商店街入口にある空き店舗を利用し、週1回でも月に1回でも良いからとにかく自由に使えるという場所を作りました。空間のなかに大きなテーブルを1つ置いて、レジカウンター、キッチン、ミーティング用のデスクなど様々な機能を集約させ一体感を生んでいます。朝僕たちがミーティングしている横でコーヒーを売っているというカオスな状態が生まれて、そういう光景がすごく面白いなと思っています。」
ハード面の初期投資が不要で自分のペースでスキルを売ることのできる”シェア商店”では、これまで多種多様なイベントが開催されてたそうです。
能作さん「富士見台トンネルでは、モーニングのみそ汁専門店、セミドライのフラワーアレンジメント教室、メイド喫茶、ノンアルコールバー、スナック、タコスにおはぎにマカロンにワインにオリジナルビールなど、本当に多種多様なお店が開かれています。出店者同士の交流も活発に行われており、3名の方がそれぞれの分野を持ち寄りコラボレーションして出店されたこともあります。
ジビエの飲食店を出店していた方は、富士見台トンネルの3軒隣にジビエを主役とした自然派バル&カフェ『urban’s camp Tokyo富士見台店』をオープンしたり、スナックをしたことのある当時女子大生だった方が卒業後に団地近くのスナックの跡を継いでママになったりと、まちの中に『おもしろく働いていいよね』という空気がだんだんできてきた気がしています。」
団地が単に「人が集まる場」ではなく「自己実現の場」として機能することで、まちのなかに埋もれていた住民のポテンシャルが具現化し、まち全体が賑やかな空気をまとっていく。富士見台団地を中心とした周辺エリアの歩みからは、「地域の中庭」としての団地の新たな可能性を感じることができました。現在は第2弾として「シェアするコンビニ」プロジェクトが始動しているとのことなので、今後の富士見台団地の動きもぜひチェックしてみてくださいね!
富士見台トンネルについてもっと知りたい方はこちら!
https://fujimidaitunnel.com/
トークセッション
ゲストの方から個性的で魅力的な団地での取り組みをご紹介いただいた後は、トークセッションが行われました。チャットに寄せられた参加者さんのコメントも拾いながら、活動をしていて感じていることやお互いの団地についての感想などをお話いただきました。その一部をハイライトとしてお届けします。
―団地住民・地域の人たちと心地よい繋がりを生むために意識していることはありますか?
いろどりの杜・辻さん「いろどりの杜が本日参加している団地さんと唯一違うのが、商店街みたいなスペースがないことなんです。住居スペースしかないので、お店で立ち話をするような、誰かと日常的に出会えるスペースが団地のなかにないので、地域の行けるところにはなるべく顔を出して積極的に繋がりを作っていくことは意識しています。いろどりの杜の隣に昔からやっている駄菓子屋さんがあって、店主のご夫婦はいろどりの杜になる前から団地を知っているので、そういう方と交流して昔のお話なども聞きながら少しずつ輪を広げています。暮らしながら地道に関係人口を増やしていく感じですね。」
ーそういった地道な関係性づくりで何か難しさを感じたエピソードなどはありますか?
鶴川団地・石橋さん「商店街の中に鶴川出身の方が店主をしている『夜もすがら骨董店』というカフェを併設した骨董店があるのですが、コミュニティビルダーは僕たちじゃないんじゃないか?と思うくらい、鶴川団地や周辺に住む常連さんがいてコミュニティができていたのが驚きでした。住み始めたばかりの頃はドキドキしながらお店を訪ねていたのですが、夜もすがら骨董店さんは僕たちをすごく暖かく迎えてくれて、今では居心地が良いのでここにばかり通ってしまっています(笑)。」
辻さん「いろどりの杜はリノベーションしてリニューアルオープンしているので、0からのスタートだったからこそやりやすかった部分はあると思います。住んでいるのが20~40代の1人暮らしの方やカップル・夫婦が多いので、自分の時間やお金をやりたいことに自由に使える住民が多いからこそ、この2年で多くの人を巻き込んで一緒に暮らしを作っていくことができたのだと思います。」
ーたしかに同世代が多いというのはコミュニティを作るうえでキーワードになりそうですね。北本団地では多世代の方々が自然に交流されている印象を受けたのですが、最初に仲間を集めていく段階で何か意識していたことはありますか?
北本団地・江沢さん「辻さんがおっしゃっていたように、商店街の有無など団地内の共有空間はすごく重要な要素だと思います。僕らが小学生のときは団地の公園に行けば常に誰か友達がいるという環境でしたが、少子高齢化で人口の層が変わってくると、当時僕らが遊んでいた場所に朝から年配の方が集まっていてお酒を飲んでいたりするんです。
共有空間がそういった使われ方しかされていないと見栄えが悪いという意見が出てきてしまうのですが、ジャズ喫茶『中庭』で買ったコーヒーを飲んでいる人がいたり、コーヒーを飲んでいる人の子どもが遊んでいたりすると、『みんなが場を使いこなしていて良いじゃん』という雰囲気になっていくんですよね。
そもそも、『朝からそこに行けば誰かがいる』というのは共有空間の使いこなしとしては最高で、共有空間自体が中庭だと思うんです。そこを使っている人たちから学ぶことはたくさんあるし、いつも共有空間にいらっしゃるとお互いに名前は知らないけど顔は知っている関係性になって挨拶をしたり、ジャズ喫茶『中庭』でおでん屋をしたときに足を運んでくれたりするようになりました。仲間じゃないと思っていた人が仲間になる瞬間があるんですよね。そしてそれを一緒におもしろがってくれるジャズ喫茶『中庭』のご夫婦が商店街にいてくれるというのがすごく大きいと思っています。」
富士見台トンネル外観
富士見台トンネル・能作さん「富士見台トンネルは自分の家の問題を解くというところから始まった本当に1人ぼっちのスタートだったので、仲間集めはかなり重要でした。なので自分たちと同じ思いの人がどれくらいいるのか、その数を可視化したかったこともあり、クラウドファンディングという形で仲間集めを行いました。
江澤さんの、自分と全然関係ない人とも仲良くなれるかもという言葉がすごく刺さっています。寛容さというのはとても重要ですよね。団地ってみんなで同じ家に住んでいるすごく面白い環境なので、ひょんなことからチームってできていくし、自分しか興味がないと思っていたマニアックなことに興味を持っている人が意外といたりして繋がりが生まれていくこともあるんだなと勇気が出ました。」
鶴川団地・鈴木さん「団地が違うと前提条件も違って、それによって展開がこんなにも異なるということに気付かされました。皆さんのお話を聞いて、自分の日々の生活のなかにもヒントはいろいろ転がっていると感じたので、物事の捉え方を見直しながら次の鶴川団地の活動を考えていきたいと思います。」
参加者さんからチャットへ多くの質問やコメントが寄せられ、またゲストの皆さんもなかなか知る機会のないお互いの団地の活動から学びを得た様子で、あっという間に終了時間になってしまったトークセッションでした!
4つの団地のお話から、「地域の中庭」としての団地は、地域に住む人々やまちが持っているポテンシャルを顕在化する力を持っていると感じた方も多いのではないでしょうか。それぞれの地域が求める「地域の中庭」としての機能が異なるのが難しいところではありますが、今回のゲストの方々のように、「中庭」として団地を機能させるキーパーソンを中心に団地の役割を捉え直すことができれば、未来の暮らしはもっと自由で、もっとおもしろいものになっていくのかもしれません。
鶴川団地、Facebookグループ始動!
イベント開催日となった6/29、未来団地会議「鶴川団地プロジェクト」では、Facebookグループをオープンしました。鶴川団地プロジェクトに関する情報発信や、鶴川団地・周辺エリアに関する情報交換を行っていきますので、こちらもぜひチェックしてみてくださいね!
文/橋本彩香