【イベントレポート】音、彩り、笑顔が溢れる団地の1日 鶴川ラクガキオンガク祭-2-

団地で暮らす「コミュニティービルダー」が団地住民や地域の方々と一緒に、鶴川団地の新たな魅力を創造・発信していく未来団地会議「鶴川団地プロジェクト」。

2022年3月には「鶴川万福祭(以下、万福祭)」、9月には「鶴川ラクガキオンガク祭」といったコミュニティビルダー主体のイベント開催され、鶴川に所縁のあるアーティストの音楽ライブや読み聞かせ、ワークショップなど、”みんなで”鶴川団地を楽しむ様々な企画が行われてきました。

そして2023年4月23日には、待望の「鶴川ラクガキオンガク祭-2-」を開催!第2回目となりパワーアップしたイベント当日の様子をお伝えします。

朝から大盛況!てづくりカスタネットワークショップ

11時のイベント開始と共にたくさんの子どもたちが集まっていたのが、町田市相原町にある家具工房「くうちん工房」さんのてづくりカスタネットワークショップです。ひもを選んで取り付ける「簡単コース」と工具を使って木材に穴をあけるところから作業をする「最初からコース」が用意され、子どもたちは世界に一つの、自分だけのカスタネットづくりに熱中!

今回のラクガキオンガク祭のライブでは、カスタネットを使って演奏に参加できる演目をアーティストさんが用意しており、「ライブが始まる前にカスタネットを完成させたい!」という子どもたちで、ワークショップがとても賑わっていました。


使用する木材から選ぶことができ、会場にいる子どもたちの間で、「それは何の木のカスタネット?」、「私のはチェリーの木!」といった会話が飛び交う場面も見られ、くうちん工房の大川さんは「私が同業者とする会話みたい!」とても驚いていました。

みんなノリノリ!ミュージック紙芝居

11:45になると、皆さんお待ちかねのライブがスタート!最初の演目は、鶴川団地に住まいながら、コミュニティビルダーとして団地・地域を盛り上げている鈴木さん、石橋さんと、団地内にある音楽教室「和音の木」によるコラボ―レーション企画であるミュージック紙芝居です。

鶴川図書館とのコラボレーションから始まった読み聞かせ企画に端を発し、今ではすっかり鶴川団地お馴染みの催しに。お話に合わせて奏でられる生演奏を子どもたちも楽しく観賞していました。

子どもたちがカスタネットの音色で参加できるお話も用意されており、音を鳴らしたり身体を動かしたり、ノリノリでお話の世界を楽しんでいました!

ドラムを演奏してくださった和音の木の講師である真野さんにお話を伺いました。

真野さん「ラクガキオンガク祭は2回目の参加で、お天気もよく、子どもたちも楽しんでくれていたように思います。紙芝居に即興で音楽を付けることにも慣れてきて、楽しく演奏できました。」

和音の木の生徒さんはレッスン前にセンター広場で遊んでいることも多く、「遊んでいる子どもたちに『練習するよー』と声をかけてレッスンが始まることもあります」と、団地の原風景のようなエピソードもお話してくれました。

さらにこの日は、演奏だけでなく「音楽教室の駄菓子屋さん」も出店。子どもも大人も、駄菓子をたくさん積んだ屋台を囲んでいました。鶴川ご出身である和音の木・代表の和田さんにも、お話を伺いました。

和田さん「私は生まれも育ちも鶴川で、昔の全盛期の団地の雰囲気を知っているので、イベントやお祭り以外にも日常的に賑わいを作れるよう、そして子どもの声が聞こえる団地にできるよう、和音の木を始めました。

言葉を交わさずとも心を通わせることができるのが音楽の強みだと思うので、参加型で子どもたちに生音を届けられるラクガキオンガク祭はとても良いなと思っています。イベントに関わる人たちが少しずつ増えていますが、団地周辺には素敵なお店がたくさんあるので、どんどん輪が広がって、団地内外のいろいろなお店や場所が楽しめるようになったら良いなと思います。」

カスタネットを一緒にクラップ!かりんちょ落書きwith清水くん

続いてお昼過ぎからライブを行ったのは、「かりんちょ落書きwith清水くん」。東京都内を中心に活動するシンガーソングライターであるかりんちょ落書きさんと、ピアニストの清水さんのコラボレーションユニットです。

2人が演奏を始めると、客席からは「かっこいい~!」と歓声が。カスタネットを叩きながら、立ち上がってノリノリで踊る子どもたちの姿も見られました。

鶴川出身のかりんちょ落書きさんに、ライブの感想を聞きました。

かりんちょ落書きさん「普段演奏している環境とは違うので最初は不安な部分もありましたが、子どもたちが楽しんでくれて、いつもと違う景色を観れて良かったなと思います。

僕は鶴川が地元で、子どもの頃はセントラル商店街にある『おもちゃの三景』に行ったり、鶴川センター広場で友達と喋ったりという日々を過ごしてたので、鶴川団地には思い出がたくさんあります。そんな場所でライブができるとは思っていなかったので、とても嬉しいです。」

商店街のお店を巡ってつくる、自分だけの団地ウィッチ

お昼時は団地ウィッチをつくるお客さんで行列が!

ちょうどお腹が空いてくるライブとライブの間の時間は、あるいて・はさんで・たべて楽しむ「団地ウィッチ」の企画が大人気!配布ブースでかわいい包み紙を受け取り、センター広場沿いにあるベーカリーフジヤでパンとサラダを、お隣の佐藤商店でお惣菜を集めます。

パンは3種類の中から、お惣菜は佐藤商店のコロッケやメンチカツなどのお惣菜から自由に選ぶことができます。

具材が揃ったら、パンにはさんで……

自分だけの、団地ウィッチが完成です!

佐藤商店の店主さんで、鶴川団地商店会の会長も務める佐藤さんに、店頭から見たラクガキオンガク祭の様子を伺いました!

佐藤さん「普段はあまり商店街を巡る機会のないお客様も、お店をハシゴして、自分だけのある種の作品を作るというのは面白い試みだと思いました。鶴川団地は昔からイベントが多い商店街ではありますが、こういった新しい発想は、コミュニティビルダーさんを中心に新しく団地に関わってくださるようになった方々がいるからこそできたことだと思います。

今日のイベントには団地周辺以外の方も足を運んでくださっているようで、商店街としてはありがたい気持ちです。次回はまた違った角度の企画を行い、商店街の色々な業種のお店が関われるようになっていったら楽しいかもしれませんね。」

鶴川団地センター商店街には、団地ウィッチにご参加いただいた店舗さんの他にも、コーヒーとお弁当販売にご協力いただいた「プラスハート カフェ 劇場」をはじめ、魅力的なお店がたくさん。ご来場いただいた方々は、センター広場を囲むように軒を連ねる様々なお店を巡って、団地の魅力を再発見しているようでした。

リピーター続出!出張!つるぼう

団地ウィッチ、駄菓子屋さんと共に、ライブの間に子どもたちが楽しんでいたのは、鶴川冒険遊びの会が主催する「出張、つるぼう!」のブースです。鶴川中央公園にある冒険あそび場「つるぼう」が、この日は鶴川団地に出張出店!ヨーヨー釣り、スーパーボールすくいと、ラムネ販売を行いました。

ヨーヨー釣りやスーパーボールすくいにはリピーターが多く、イベント中に大人たちがヨーヨーを買い足しに走っていたんだとか。つるぼうの代表である市川さんに感想を伺いました。

接客をする子どもたち

市川さん「今日は普段からつるぼうに来ている親御さんや子どもたちもたくさん遊びに来てくれました。子どもたちはこういうお店が好きなので、やりたい!と言ってレジの手伝いなどもしてくれました。こういう広い場所にチョークで落書きができるのはすごく良いなと思うし、ラクガキオンガク祭をきっかけに、つるぼうにも音楽遊びコンテンツを作るのもありだな、と思いました。」

鶴川でしか見られないスペシャルユニット!ハ〜モニ〜ズ

14時過ぎには、ライブのトリを飾る「ハ〜モニ〜ズ」が登場!新百合ヶ丘にある昭和音楽大学の卒業生で結成されたサックスカルテット(4重奏)にパーカッションを入れた5人組ユニットで、万福祭、第1回目のラクガキオンガク祭に続いて3度目の出演となります。

ちなみに、ユニット名はセントラル商店街にある『古着 雑貨 趣味の店 ハーモニーゼネラルストア』で購入した洋服や小物を身に付けて演奏していることに由来しているそうです。

3回目の出演とあって、客席からメンバーの名前を呼ぶ歓声が聴こえる場面も。ディズニーの名曲から昭和の歌謡曲まで、大人も子どもも楽しめるラインナップで、会場全体が一体となって心地よい熱気を帯びていました。

サクソフォニスト・そうしさん「今回が3度目の参加となりますが、万福祭から回を重ねるごとにお客さんが増えてきたなと感じます。あまりの盛り上がりに、今日はライブ中に思わず、『アリーナ―!』と叫んでしまったくらい(笑)。イベントも、この団地も、どんどん賑やかになっているように感じて、とても嬉しく思っています。」

パーカッショニスト・ひろしさん「僕は物心つく頃から鶴川に住んでいます。大人になると地元と距離ができてしまうことも多いと思いますが、ラクガキオンガク祭のように子どもから大人までみんなで楽しめるイベントが続いていってほしいです。地域のまだ巻き込めていない人たちも巻き込んで、イベントがもっと大きくなっていったら幸せだなと、鶴川に住む者としては思います。そして僕らも、それに応えられたら嬉しいです。」

広場全体がラクガキで埋まる!?

これまでご紹介したコンテンツと並行してイベント開始時から行われていたのが、センター広場全体を使ってのラクガキ!!子どもたちはチョークを手にとり、友達と同じお題でお絵描き対決をしたり、マルバツゲームをしたり、「広場全部をうめるぞ~」ととにかくたくさん絵を描いたり、思い思いに楽しんでいました。

ライブに出演したかりんちょ落書きさんのラクガキも発見しました!

前回のラクガキオンガク祭よりもたくさんの絵が描かれ、イベントが終わり人がまばらになった後も、ラクガキによってイベントの賑やかさが伝わって来るようでした!

出店者さんもイベントを満喫!

14時頃にはカスタネットが完売していたくうちん工房さんのワークショップ。ご自宅が鶴川団地の近くだというお二人は、つるぼうさんのブースでラムネを購入したりと、参加者としてもイベントを楽しんでいる様子でした。出店者として、そして周辺住民のお一人として、大川さんご夫婦にイベントの感想を伺いました。

奥様「娘が小さい頃は、保育園の帰りに佐藤商店さんでコロッケを買って、よくこの広場で遊んでいました。今でも日常的に団地の商店街を利用しているので、鶴川団地のイベントならもちろん行きます、と喜んで参加させていただきました。私たちは色々な場所のイベントにワークショップを出店していますが、今日はミュージシャンの方々が振り付けにカスタネットを入れてくださって、作ったものをこの場ですぐに使えたのがすごく良かったなと思います。滞在時間が長いのも、普段から人が集う団地の広場ならではなのかなと感じました。」

ご主人「鶴川団地の良さは、団地住民だけでなく、近隣の人が場に集まって知り合いと言葉を交わせる場になっていることだと思います。今日はそういった地域に開かれた場で、音楽、ワークショップ、ラクガキという複数の要素がかけ合わさることで、人が集まりやすい、楽しいイベントになったのかなと思います。若い人たちが団地に入ってきたことによって、イベントの形態も今までにないアプローチをしているのがおもしろいと感じています。自分たちもただ出店するのではなく、プラスアルファでおもしろいことを考えようという発想になり、とても刺激になりました。」

子どもたちの心に残るイベントを、みんなで一緒に創っていく

最後に、今回も皆さんに楽しんでいただけるイベントづくりに奔走してくださった、コミュニティビルダーのお二人に、ラクガキオンガク祭-2-を振り返っていただきました。

鈴木さん「万福祭から始まり、回を重ねるごとにイベントの根本が少しずつ育ってきたように感じています。音楽に強い高校や大学が近くにあるからか、鶴川は音楽系のコンテンツが強いまちのように感じているので、音楽を軸に据えてコンテンツを展開していくと、地域の方々にとっても、参加してくださるパフォーマンス側にとっても、良いものができるのではと感じています。今日のラクオンガク祭のように体験型のコンテンツがあると記憶に残りやすいと思うので、一方通行ではなくみんなで一緒に創りあげるイベントを今後もやっていけたらと思っています。」

石橋さん「ライブの演者さんも出店者さんも、子どもの心をぐっと掴むのが上手い人たちが集合していて、学ぶことの多い1日でした。地域の小学生の中で、「またラクガキオンガク祭あるらしいよ」と噂になっていたようで、イベントを目当てに団地に足を運んでもらえるようになったのがすごく嬉しいです。地域に所縁のあるミュージシャンが演奏してくれることをありがたく思うと同時に、鶴川という限られたエリアでこれだけ所縁のあるミュージシャンやおもしろい人を集められる、鶴川というまちのおもしろさ、ポテンシャルを改めて感じました。

今後も、『団地に行ったらこんな面白いことがあったね』という子どもたちの記憶に残るような体験を作り続けられたらと思っています。将来彼らが大きくなったときに、『子どもの頃、地域でこんなに楽しい思い出があるから、自分も何か地域にコミットしたいな』と思えるようなことを、これからも続けていきたいです。」

大盛況で幕を閉じたラクガキオンガク祭-2-。出演アーティスト、出店者さんをはじめ、イベントに関わる人々が、鶴川というまち、そして鶴川団地を大切に想っていることが伝わる、温かく優しい1日となりました。次回のイベントでは、この場所でどんな景色が生まれるのか、とても楽しみです。

取材・文/橋本彩香