手前味噌、手前醤油、手前電力
YADOKARIをご覧の皆さん、こんにちは。
唐突ですが、皆さんの中に、お味噌やお醤油をご自分で仕込まれたご経験のある方はいらっしゃいますか?最近は、塩糀・醤油麹といった調味料や、夏バテに良いということで甘酒が注目を浴びることも多いので、ご自身で発酵食品を仕込んでいらっしゃる方も多いかと思います。
かくいう私も、ここ数年、自分で何かを仕込み、自前でまかなってみることにチャレンジしてみた一人です。最初は発酵食品といった食べものを、それに続いてミニ太陽光発電システムを組み立て、電気(の一部)をまかなってみることをしてみました。
生活に必要なものを自分でまかなえるというのは、成果物が美味しかったり役に立ったりするだけでなく、お金に頼らない部分が増えて生活の自由性が高まるように思います。
元来不器用かつ大雑把な性格である私の経験や方法は、皆さんの参考になるようなものではないのですが、「宮原でも出来たのだったら」と勇気を持っていただけることもあるかもしれない(笑)と思い、生活の中でほんの一部ではありますが「自分でまかなってみる」ということに挑戦したいくつかのことを、今回は書かせていただこうと思います。
はじめての手前味噌
私が初めてお味噌を仕込んだのは2007年。かれこれ6年前になります。いきなり一人で仕込むのは不安があったため、最初はお味噌仕込み講習に参加しました。ベテランの方に習いながら、他の参加者の方と一緒に大豆を潰し、麹を混ぜ、楽しく仕込みました。
仕込んだお味噌は約1年間の熟成を待った後、ご開帳!?となります(笑)蓋を開ける時のワクワクとドキドキ感はいまでも覚えています。
どうなっているのか、楽しみ半分、不安半分の面持ちで蓋を開けたら…その表面には、カビのようなものが!その瞬間「失敗した!ガビーン…」と早とちりしましたが、表層にできるカビは取り除けば、その下は問題はないとのことで、ホッと一安心。その下にあったお味噌の出来は、材料にこだわったおかげか、フルーティーさもあってとても美味しかったです。
それからは、塩を変えてみたり、麹を変えてみたり(米麹、麦麹など)、毎年マイナーチェンジをして味を食べ比べたりしました。何年か続けて仕込んで、1年熟成や2年熟成といった具合に、熟成期間によって出てくる味の違いを楽しんでみるのもオススメです。
(1年モノと2年モノ、麹の違いを食べ比べた時の様子)
お味噌を仕込むというと、料理好きのマメな人間だと思われることもあるのですが、お味噌は私のようなズボラな人間が仕込むのに適した発酵食品だと思っています。
お味噌は空気になるべく触れさせないよう仕込み、その後は基本的に放置しておいてもOKなのです。寒い冬の時期に仕込んで、梅雨前後ぐらいに上下をひっくり返す天地返しをします。ただ私はこれすらせずに1年間放置。それでも美味しかったので、「ま、いっか」と毎年放置発酵です(笑)
(かといって、この方法を推奨するのもいかがなものか、という自覚がありますので、ご興味を持たれた方は、インターネット上に作り方を丁寧に教えているサイトや、発酵教室のご案内がたくさんありますので、そちらを参照されることをオススメいたします)
醤油仕込みへの誘い
何年かお味噌を仕込み続け、甘酒など他の発酵食品も醸しましたが、お醤油にはなかなか手が出せませんでした。お味噌とちがい、お醤油は仕込んだ後も空気に触れさせてあげる必要があります。その為、定期的に蓋を開けてかき混ぜてあげる必要があります。
これはものぐさな私にはハードルが高い(笑)
そう思っていたのですが、友人が仕込んだ自家製醤油が美味しく、そんな時に鎌倉treepさんで、ソソられるお醤油仕込みセットに出会い(現在は販売終了)、昨年お醤油仕込みにも初挑戦してみました。
案の定、時々かき混ぜるのを忘れることもありましたが、旅行に行って不在が続く時は、家族にも撹拌を協力してもらい、なんとか1年目を無事終了。
こちらは醤油を熟成中の常滑焼きと、醸造の神様が祀られている京都の松尾大社で購入してきた醸酒守というお守り。菌頼みの発酵、最終仕上げに神頼み中といったところです(笑)
最後は絞って出来上がりです。
(漬け物容器を使って、お醤油絞りをしている様子)
生醤油だから、きっとお刺身に合うハズ!と勝手に思っていたのですが、かき混ぜるのをサボって、ときどき産膜酵母らしきものを発生させてしまったせいか?、スッキリ洗練された味に仕上がっておらず、お刺し身には微妙に合わない感じでしたが、妙なコクがあるぶん!?磯辺焼きには合いました(笑)
お醤油を今後も仕込み続けるかは、私の性格からすると再考する必要がありますが、気になったことはとにかくやってみたくなる性分。次に自分でまかなってみたいもの、ということで、電気をまかなってみたくなりました。
手前電力への挑戦!
電気をまかなってみることには、以前から興味がありましたが、実行に移すキッカケになったのは 3.11での経験でした。自分のいたオフィスも住居も、地震発生後にそのまま深夜まで停電が続きました。いつ電気が復旧するのか判らない状況でしたが、近隣には電気がきている様子が判っていたので、「明日には復旧するだろう」と思い、スマートフォンのバッテリーをセーブするまでのことはせず、家族とtwitterで連絡を取り合うことができました。
前回の記事でも書かせていただいたように、以前から「いつか住まいをオフグリッドにできたらいいな」とは思っていましたが、この経験から、緊急時に家族と連絡が取れたり、情報を集められるよう、まずは小型のデバイスの充電をできるようにしたくなりました。
そこでお邪魔したのが、藤野電力さん。
ミニ太陽光発電システム組み立てワークショップを開催されているとのことで、そちらに参加させていただいてきました。
小型太陽光発電システムは、自分で組み立てることをせずとも、完成品が販売もされています。ただ、私は電気のことはチンプンカンプンだったため、仕組みも少し教えて貰いながら、自分で組み立ててみようと思いました。
電気のことは判らず、工作も大変苦手。「大丈夫かな〜?…」という若干不安な気持ちで申込み、参加をしてきましたが、そんな人間でも無事に組み立てられる簡単な作業でした。(それでもオロオロしていると、スタッフの方がヘルプしてくれるので大丈夫です!)
配線がつながって電気がついた時には、参加者一同拍手と歓声。「おらが村に電気がきたど〜!」というテンションになりました(笑)電気がない時代に、電線が通って、はじめて電気がついた時はこんな気持だったのかもしれませんね。
電力出張とソーラーのポットラック
その後、組み立てたミニ太陽光発電システムは、自宅で無事に稼働を続けていましたが、2012夏に藤野で開催された「ひかり祭り」というお祭りに電力出張をする機会がありました。
お祭りで使用する電力を、100%自給でまかなおう、という取組みの一つで、それまで開催されたワークショップに参加された方々へ、それぞれのミニ太陽光発電システムの持ち寄りを呼びかけられたのです。そうして持ち寄られて集まったシステムで、お祭りでの電力の一部が担われました。電力の持ち寄り、さしずめソーラーのポットラックパーティーといったところでしょうか。
見た目が同じソーラーシステムが揃うので、自分のものが判るように、各々システムに個人電力名を命名したりもしました。
私のものは名付けて「元美電力」。そのまんまです…。
元美電力も「ひかり祭り」に出動し、お手洗いでの明かりを担当させていただきました。物陰から、星飛雄馬を見守るお姉さんの気分で、稼働中の様子をパチリ…。
ミニ太陽光発電システムを組み立てた後も、相変わらず電気のことはよく判らないことも多いのですが、ワークショップに参加したことによって、そこで出会った方々と、今でも近況の報告や情報の交換をさせてもらっています。
ミニ太陽光発電システムが、電気だけではなく、そういった方々との繋がりやコミュニケーションも生んでくれました。これは、もし完成品を購入していたら得られなかった、嬉しい副産物(あるいは主産物?)でした。
お味噌や醤油に、ミニ太陽光発電システム。かたや発酵食品、かたや工業製品ですが、制作プロセスの最中や、完成後に生じたコミュニケーションの内容は、意外と似ていることもありました。
「自分はこのパネルと、あのバッテリーで組み立てたよ」
「自分はこの大豆と、あのお塩で仕込んだよ」
という材料(素材)の話に、
「我が家はベランダにパネルを設置して、エアコンの穴から引き込んで設置した」
「マンションで仕込んだお味噌を置いておくのに適した場所がないので、
寝室に置いている」
という置き場所の話。
発酵の仕組みも、電気をつくる仕組みも、全く別のものではありますが、「意外と似ていることもあるもんだ」と思った時、ちょっと小難しそうで、とっつきにくそうに思っていた「電気」が、今までより身近なものになったように思います。
昔はお醤油をお隣りに借りに行ったように、もしかしたら電気もご近所同士で融通しあう時代がくるかもしれない。絵空事かもしれませんが、そんなことを、ふと思いました。
「お醤油きらしちゃったから、ちょっと貸して」
「電気きらしちゃったから、ちょっと貸して」
なんてね。