第4回:毎日が自由研究!小笠原のプロに聞く秘密の島遊び。|スゴイ!が日常!小笠原
「小港海岸にいく途中、暗い森の中を通るんだけど、満月の夜は、そこに月明りの木漏れ日ができるんだよね。もしも女の子と一緒なら、ドキドキして手をつないじゃうとこなんだけど、森を抜けて砂浜に出た瞬間、急にスポットライトを浴びるような月明りに照らされるんだ。
それはもう、お互いの顔が見えすぎて恥ずかしくなるくらいに。」
そう話してくれたのは、「小笠原エコツーリズムリゾート」代表の竹澤博隆さん。
川崎で生まれながらも、17歳から小笠原に通い始め、22歳の若さで移住を決断。ダイビングショップのインストラクターを経て独立へ。移住歴も20年を迎える現在では、海も山もフルサポートでガイドする「竹ネイチャーアカデミー」、多くの要人が宿泊する「ハートロックヴィレッジ」、海の見ながら鮫バーガーなどユニークなメニューも味わえる「ハートロックカフェ」など、数々の事業を代表として束ねる、島で唯一の総合観光業者として活躍されています。
つまり、小笠原の海も山も知り尽くすプロフェッショナル。そんな竹澤さんは、小笠原をどう遊び、どう暮らしているのか。ガイドブックには載っていない島の本当の魅力について、リアルなお話を聞かせていただきました。
「毎日が自由研究」と話す竹澤さん。
数ある思い出の中でも、忘れられない1日とは?
小笠原って観光地としての素材は最高だと思わない?海に行けばイルカに会えるのが当たり前だし、冬はクジラが当たり前だし、透明度がいいですねって港を見て言われるしさ。町のメインストリートのすぐ裏の砂浜にウミガメが産卵に来るとか、おかしいだろって今でも思うよ(笑)。
南島でジンベエザメと泳いだときはすごかった。その日は夏の終わりで、お客さんも少なくなってきた頃。たまたま南島の浅くなっているところにジンベエザメが入り込んでてさ。よく見たら、オキアミのような小さな甲殻類も大量にわいていた。
とにかくジンベエをカメラで撮ろうと海に入ってみたら、オキアミを狙ってムロアジの大群がブワーって入ってきた。ムロアジが大量にいるもんだから、今度はそれを狙ってイルカが入ってきて、そこにマンタもやってきた!ダイビングじゃなくて、シュノーケリング中にだよ?そのときの写真にはマンタとイルカとジンベエの3ショットが1枚に納まってる。
人気のナイトツアーは、“デートコース”から生まれた!?
恋愛感覚がなくなると、ツアーはつまんなくなる気がしてるんだ。彼女をデートにひっぱりだすために、どうやって楽しいことを企画するかっていう気持ちがないと、ふつうのツアーに落ち着いちゃう。自分の子どもたちをどうやって遊ばせようかって考えるのも、それに近いと思うけどね。
たとえば、『傘山』というところに満月の日に登ると、夕日が沈んで30分もすると、月が反対の海から上がってくるんだ。すごく壮大な雰囲気なんだけど、女の子には『夕日を見に行こうよ』って言って傘山に連れて行く。それで、日が沈んで帰る時間なのに、なんで帰ろうとしないのかなって不安にさせながら、『もう少し、あと少し、夕焼けを見ていよう』って。そう言ってるうちに、空がだんだん暗くなってくる。
そこで、『ちょっと反対側見てみなよ』って言って、振り返る。すると、すっかり暗くなった東の海の水面が赤く染まっていて、そこから赤い月がぽわーと上がってくるんだ。それがオレンジ色になって、だんだん白い月になっていく。
それくらいの時間になると、満月の明かりだけでジャングルの中を歩いて帰れるんだ。でも、なんとなく怖いから手をつないでみたりね(笑)。
あれは最強のデートスポットだった。傘山のふもとにクルマが停まってたら、上がっちゃ駄目だよっていう暗黙のルールがあったぐらいだもん。今あるナイトツアーも、もともとはデートコースなんだよね(笑)。
ほかにも、浜辺にいくとヤドカリの足跡があるでしょ?ツアーだとヤドカリを探して、『足は何本あると思いますか?』みたいな話もするけど、デートだと『この跡をずーっと追いかけて行ったら何があるのかな?ヤドカリに会えるんじゃない?』って言って、ひたすら砂浜をジグザグ歩きまわる。最後はヤドカリに行き当たってほっこりしちゃったりしてね。
たとえ海岸林の藪ん中に続いてたりしても、『あー駄目だった!じゃあ次のに行こう!』って、またジグザグ歩きはじめる。ただ砂浜でイチャイチャしてるだけなんだけどね(笑)。そういうのがすごく楽しいと思うんだ。
気軽さの裏側にある、とんでもない自然が小笠原のスゴイところ。
竹澤さんが伝えたい“メニューにない”島遊びとは。
たとえば、夕方に夕焼けがキレイだなーって思ったら、ぶらっとウェザーステーションに上がってみるとか。小笠原では、好きなときに、好きなところで、好きな時間を過ごすのもいい。楽器を弾いてもいいし、ぼーっとしてもいいし。そんなふうに、ガイドツアーに加えて、『俺の遊びに付き合わない?』ということもやってみたい。
たとえば、夜空が晴れてるから、今からスターツアーに行こうよって。そしたら、天体写真みたいな物凄い星空と出会えたり。その気軽さの裏側にある、とんでもない自然というのが小笠原のスゴイところだと思う。
俺が島に来たばかりの頃は、週に1度の休みがあるかないかだったけど、休んでた記憶は1日もないね。台風が来ても遊んでた。台風なら台風でやれる遊びがある。そのころの遊びはとんでもなく楽しくて、ばかげてて。何やったかって言うとたいしたことやってないんだけど、とにかく楽しかった。
あの楽しさはお金を払ってもやりたいというような楽しさだったの。それを、ツアーという型にはめずにどうやったらできるかって考えてる。
何をやるかはその日にならないとわからないけど、付いて行くと絶対に楽しいっていう。自分の家族や友だちが遊びに来てくれたときみたいに、みんなに小笠原を見せてあげられたらって思うんだ。
(後編に続く)
スゴイ!が日常!小笠原の「ひと」。ガイドブックを読みながら旅するだけでは物足りない。そんなときは、島遊びのプロ「竹澤博隆」さんにお世話になるとよいかもしれません。旅を豊かにしてくれるのは、やっぱり現地で暮らす「ひと」!海も、山も。冒険を毎日続けている、竹澤さんだけが知る小笠原を体感させてもらえます。
ぜひWebサイト「小笠原エコツーリズムリゾート」をチェックしてみてください。そのクオリティに、きっとあなたも驚きます。