第12回:不確かさに向かって、ともに走り出すとき|元新聞記者の、非日常生活。
新年の抱負というわけでもありませんが、今年は砂漠を走るレースの年間チャンピオンを目指すことにしました。1週間で250kmを自分の足で走り切る大会を4戦して総合順位を競うレースシリーズです。
最初は完走で満足していたのに、慣れというのは恐ろしいものです。毎年出場していると、もっと走れたはず、まだまだ行ける、という風に自分に挑むことに。挑戦しつづけることが日常に溶け込みつつあります。その一環で出場費用を募り、クラウドファンディングはじめました。
仕事がなくなるからこそ、新しい挑戦
挑戦するのはいいとして、1レースにつき大会の前後を合わせて2週間ほどの休みが必要になります。なぜそんなに休めるのかというと、3月末で現在メインになっている地域おこし協力隊の任期が終わり、フリーランスになるからです。収入が読めない、仕事量に波が生まれる、営業活動をしなくては。などなど、まだ立ち上がってもいない状況ですので、ネガティブな要素は挙げようと思えば、簡単に挙げられかと思います。
でも、不確定だからこそ、むしろ楽しめるというのが僕の心情です。2014年に勤めていた新聞社を退職したことを振り返り、そう感じるのかもしれません。当時は、ジャングルを走る275kmのランニングレースに挑み、その後福岡にやってきて今に至ります。
詳しい経緯は過去の記事に↓
「第1回:日常から、一歩踏み出せばそこはジャングル 」
「第5回:僕たち野蛮なミニマリスト 」
「第11回:退職して、走っていたらシゴトを発見 」
世界の砂漠を走り、年間王者を目指す
ジャングルの道なき道を進むのも、新しい土地で生活していくことも、未知なることに身を投じる面白さです。
だから、仕事が終わるというタイミングで、新しいチャレンジを始めることにしました。仕事は未定、フリーハンドな状況だからできることをやってみようと。
こんどの目標は砂漠の年間チャンピオン。砂漠を走る250kmのレースを4戦して総合順位でトップを狙う、日本人選手が誰も成し遂げていない試みです。
挑戦するタイミングはいま
ところが問題がひとつ。総額260万円を超える参加費です。
砂漠レースは参加費が高額で、1レースにつき40万円ほど。渡航費や滞在費を含めると、1度の海外遠征で60〜100万円になります。これまで情熱を注いで出場するほどに、熱い思いとは裏腹に蓄えは溶けていきました。
仕事のなさ(涙)と体力的な充実ぶりを考えるにつけ、いまのタイミングを逃すと次に挑戦できるという保証はどこにもありません。
そこでもうひとつチャレンジを追加。クラウドファンディングをはじめました。金額は、参加費の260万円。田舎暮らしの強い味方である軽トラが新車で2、3台買えてしまいます。社会的な意義はほとんどゼロ。上記のとおり、とても個人的な挑戦のためです。
ちなみに内訳は以下のとおりです。
サハラレース(ナミビア) 418,000円
ゴビマーチ(モンゴル) 418,000円
アタカマクロッシング(チリ) 418,000円
ザ・ラストデザート(南極) 1,419,000円
計 2,673,000円
※南極でのレースが異常に高いのはアルゼンチンから現地に行くまでの船賃が込みだからです。
ファンディングで感じる道なき道を走った成果
実は、クラウドファンディングをはじめましたどころか、この記事の公開時点で終了まであと5日と、すでに佳境に入っています。
開始する前は、社会的な意義の薄いことをやってよいのだろうか。自分のやりたいことなら自分の力だけでやればよいのではないか。そんな迷いもありました。ふたをあけてみると、これまでに160人以上の方々にスポンサーとして賛同していただけました。中には過去に1度お会いしただけという方や、まったく面識のない方も。
そうやって、今までなら思いもよらなかった形で、さまざまな方から支援をいただくと、それもまた、ジャングルから続く道なき道を歩み続けてきたひとつの成果のように思えました。
クラウドファンディングを始める前の迷い。それは、不確かなことに対する不安です。誰にも相手にされないかもしれない、あるいは非難されるかもしれない。社会的な意義があるかもわからないことを積極的にやる必要があるのか。
いまもって価値の定まらない不確かさです。だからこそ、ジャングルに向かって走り出したときのように、未来の不確かさにむかって歩を進めることでしか、先にあるものをつかむことはできません。
そして、まだ僕は1歩、2歩と踏み出したばかりです。たどり着いた先に待っているのはなにか。楽しみでなりません。残りの期間で悩み、不安を感じながらも、伸びやかにさらに1歩前へ。
というわけで、まだまだ非日常な生活が続いていきます。
末尾になりましたが、今年もよろしくお願いいたします。