小屋×都市 #09 空間や時間の隙間にはまる小屋|都市を科学する〜小屋編〜 – オンデザインパートナーズ×YADOKARI

都市には、隙間がある。
ビルの間や屋上などの、空間の隙間。
再開発の過程で現れる、時間の隙間。
短工期、移動可能、低コストな、
小さな居場所がピッタリはまる。

点在する空間の隙間に

ビルの間の僅かなスペースでも、意外といろいろなことができる。

たとえば、幅2.4mの極細レストラン。

レトロなビルの隙間が光が注ぐレストランに。しっかりした建築でもあるが、サイズ感に小屋らしさも残る
Via:archdaily.com

幅1.2mでも、生活に必須なベッドルーム・バスルーム・キッチンは備えられるようだ。

世界再薄?!居住する家の法規サイズを満たしていないため、短期滞在で活用される
Via:design-milk.com

屋上にも、居場所をつくることができる。

屋上に設置された、膨らませるモバイルオフィス「Roof Pod」
Via:Airclad
都市農園にホテルやサウナ…。屋上をハックしよう
Via:archdaily.com

都市には屋内にも「隙間」がたくさんある。

空港・駅・公共施設等のデッドスペースを有効利用できるモバイルホテル「Sleepbox」
Via:dezeen.com

時間の隙間に「短工期、移動可能、低コスト」

小屋は、こうした「空間の隙間」だけでなく、都市の再開発の前に一時的に現れる「時間の隙間」にもハマりやすい。
「短工期、移動可能、コスト安」という特性を、最大限に発揮する。

たとえば再開発が始まる前の空き地は、コンテナハウスが活躍する。

コンテナをおしゃれに使いこなす「CPH Shelter」。土地の高騰と宿不足に悩むコペンハーゲンで、移動可能なコンテナハウスを学生に開放した
Via:Spotted by Norman Copenhagen

駐車場跡地に、DIYで作った屋台やタイニーハウスを持ってくれば、賑わいスペースに生まれ変わる。

ストリートフードの聖地として生まれ変わった巨大倉庫「PAPIRØEN」。空間の開発が未定だったため、機動力がある「ワゴン」を誘致した
Via:DAC&

時間や空間の隙間を柔軟に活用する小屋は、災害復興のような局面でも活躍する。

東日本大震災で被災した石巻市で、復興期の賑わい創出に貢献した「橋通りCOMMON」(写真:古里裕美)

隙間は余白

変化のスピードが激しい現代の都市。
土地が狭く、災害も多い日本の都市。

あちらこちらに現れては消える「隙間」は、
小屋が価値を生み出す余白なのかもしれない。

あなたの周りには、どんな隙間があるだろうか?

(了)
<文:谷明洋、イラスト:千代田彩華>

【都市科学メモ】

小屋の魅力

空間や時間の「隙間」を活かす

生きる特性

小ささ、短工期、移動できる機動性、低いコスト

結果(得られるもの)

土地の有効活用

手段、方法、プロセスなど

「隙間」を見つける
ちょっとした隙間の土地や、一時的に現れる空き地を見つけるために、ネットワークや情報収集力が必要だ。もしくは、災害などで突如「隙間」が発生した際に、瞬発力や機動力を発揮しよう。
「短工期、移動可能」といった特性を活かす
特に「時間の隙間」を活かす時は、移動可能であることが大きな強みとなる。輸送できるコンテナハウスや、自走できるトレーラーハウスなどをカスタマイズして活用するのが良さそうだ。
大型プロジェクトにする考え方も
都市における「隙間」を活かして価値を生み出す活動は、個人の趣味の域を超え、社会性を伴うことがある。まちづくり組織や行政、土地の所有者らと相談や連携するプロジェクトとしてくことも考えたい。
【Theory and Feeling(研究後記)】
隙間。うーん、パッとは思いつかない。(ぼくの人生は隙間だらけですが)

ちなみに大学時代は森林生態学を勉強してました。森では大木が倒れたり山火事が起こったあとに、太陽光が射し込む「ギャップ」ができると、いろいろな植物の競争が繰り広げられます。乾燥に強かったり、最初の生長が速かったりと、植物によって異なる生存戦力があります。隙間を活かす小屋と比べてみると、小屋っぽい生き方をしている植物とか、あるんでしょうか。

岡山県の西粟倉村で聞いた、森林の生態系の営みから事業戦略を考える話を思い出しました。

 

「都市を科学する」の「小屋編」は、横浜市の建築設計事務所「オンデザイン」内で都市を科学する「アーバン・サイエンス・ラボ」と、「住」の視点から新たな豊かさを考え、実践し、発信するメディア「YADOKARI」の共同企画です。下記の4人で調査、研究、連載いたします。

谷 明洋(Akihiro Tani)
アーバン・サイエンス・ラボ主任研究員/科学コミュニケーター/星空と宇宙の案内人
1980年静岡市生まれ。天文少年→農学部→新聞記者→科学コミュニケーター(日本科学未来館)を経て、2018年からオンデザイン内の「アーバン・サイエンス・ラボ」主任研究員。「科学」して「伝える」活動を、「都市」をテーマに実践中。新たな「問い」や「視点」との出合いが楽しみ。個人活動で「星空と宇宙の案内人」などもやっています。

小泉 瑛一(Yoichi Koizumi)
建築家/ワークショップデザイナー/アーバン・サイエンス・ラボ研究員
1985年群馬県生まれ愛知県育ち、2010年横浜国立大学工学部卒業。2011年からオンデザイン。2011年ISHINOMAKI 2.0、2015年-2016年首都大学東京特任助教。参加型まちづくりやタクティカルアーバニズム、自転車交通を始めとしたモビリティといったキーワードを軸に、都市の未来を科学していきたいと考えています。

さわだいっせい / ウエスギセイタ
YADOKARI株式会社 共同代表取締役
住まいと暮らし・働き方の原点を問い直し、これからを考えるソーシャルデザインカンパニー「YADOKARI」。住まいや暮らしに関わる企画プロデュース、空き家・空き地の再活用、まちづくり支援、イベント・ワークショップなどを主に手がける。

また、世界中の小さな家やミニマルライフ事例を紹介する「YADOKARI(旧:未来住まい方会議)」、小さな暮らしを知る・体験する・実践するための「TINYHOUSE ORCHESTRA」を運営。250万円の移動式スモールハウス「INSPIRATION」や小屋型スモールハウス「THE SKELETON HUT」を発表。全国の遊休不動産・空き家のリユース情報を扱う「休日不動産」などを企画・運営。黒川紀章設計「中銀カプセルタワー」などの名建築の保全・再生や、可動産を活用した「TInys Yokohama Hinodecho」、「BETTARA STAND 日本橋(閉店)」などの施設を企画・運営。著書に「ニッポンの新しい小屋暮らし」「アイム・ミニマリスト」「未来住まい方会議」「月極本」などがある。