小屋×都市 #12 廃材を蘇らせる小屋|都市を科学する〜小屋編〜 – オンデザインパートナーズ×YADOKARI
木や金属の板、コンテナ、土管。
世の中にはいろいろな廃材があり、小屋へと姿を変えることがある。
廃材を活用した小屋の事例を集め、その価値を考えてみた。
物語の続きを紡ぐ小屋
廃材で小屋をつくると、どんな良いことがあるだろう?
まず、材料費が抑えられる。
そして廃材は、それまで何かに使われてきた物でもある。
その物語に続きが紡がれ、独特の雰囲気が生まれる。
車両の再活用は、外観も内装も面白い。
このバスはかつて、どんなところを走っていたのだろう?
小屋と廃材=ニワトリとタマゴ?
小屋をつくることを決めてから、材料となる廃材を探してもいい。
建材のリサイクルショップがあれば活用してみたい。
逆に、面白い廃材に出会ってから、「小屋にする」を思い付くこともあるだろう。
思いもよらない外観が、好奇心を刺激する。
「廃材の利用」と「小屋づくり」は、どちらが目的で、どちらが手段でも良さそうだ。
「リサイクル」「継承」という響き
廃材でつくった小屋は、メッセージの発信に一役買うこともある。
「リサイクル」や「変身」を、分かりやすく体現するからだ。
不法投棄されたベッドのフレーム、板材、車の部品、洗濯機の扉などでホームレスに住まいを提供するプロジェクトもある。
古ドアでつくられたパビリオンも、アートの色合いを強く感じさせる。
コストだけではない、廃材利用の価値
「廃材活用」と「小屋づくり」が手段にも目的にもなるのは、互いの相性が良いからだろう。
そして、いずれにしても、独特の雰囲気やコンセプトが生まれ、物語が紡がれる。
「資源を大切に」
「あれもこれも、まだ使えるよ」
「積み重ねてきた時間を、大切に継承します」
確かなメッセージ性に、コスト削減にはとどまらない価値がある。
(了)
<文:谷明洋、イラスト:千代田彩華>
【都市科学メモ】 | |
小屋の魅力 |
廃材を活用できる |
生きる特性 |
小ささ、DIYしやすさ |
結果(得られるもの) |
コスト減、雰囲気、物語、環境保全などのメッセージ、ゴミの削減、廃材の価値創出 |
手段、方法、プロセスなど |
「小屋に使えそうな廃材ください」と宣言してみる 「小屋づくり」が目的なら、廃材活用は手段。使えそうな材料を自分で探しに行くのも良いが、インターネットなどで「小屋をつくりたい」と宣言して寄贈を求めても良い。掘り出し物が向こうからやってくる可能性も、そこから仲間や応援者が増えることも、あるだろう。 |
「リビルディング・センター」のような仕組みを活用する 長野県諏訪市に2016年にオープンした「リビルディング・センター・ジャパン」は、建物の解体現場から引き取った古材や古道具を、低価格で販売している。下記リンクはYADOKARIによる、設立者の東野唯史さんのインタビュー記事。本家はアメリカ・ポートランド。 古材を通してつくり出したい「ReBuild New Culture」という理念 |
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手元の廃材を小屋にできるか考える 手元にまとまった廃材があったら、それで小屋をつくることができるか、考えてみるのも面白い。廃材活用が目的で、小屋づくりが手段となるパターンだ。コンテナやコンクリート管のような空間をつくるもの、木材や鋼矢板のような面をつくるもの、それぞれに使い道がある。 |
【Theory and Feeling(研究後記)】 |
建材の切れ端、よく分からない鉄板、大きなボウルのようなもの…。実家の倉庫には、父の集める廃材が、あれやこれやと転がっていました。 「何かに使えそうだから」と言うものの、明確な「何か」がないのか、仕事が忙しいのか。使うよりもまた拾ってくる量の方が圧倒的に多く、廃材は増える一方です。倉庫を自営店舗の在庫管理に使う母の悩みのタネでもありました。 廃材活用は「収集能力」だけでなく、完成形を思い描く「創造力」と、実現する「実行力」も大事なんだと、昔のことを思い出しながら感じました。(たに) |
「都市を科学する」の「小屋編」は、横浜市の建築設計事務所「オンデザイン」内で都市を科学する「アーバン・サイエンス・ラボ」と、「住」の視点から新たな豊かさを考え、実践し、発信するメディア「YADOKARI」の共同企画です。下記の4人で調査、研究、連載いたします。
谷 明洋(Akihiro Tani) アーバン・サイエンス・ラボ主任研究員/科学コミュニケーター/星空と宇宙の案内人 1980年静岡市生まれ。天文少年→農学部→新聞記者→科学コミュニケーター(日本科学未来館)を経て、2018年からオンデザイン内の「アーバン・サイエンス・ラボ」主任研究員。「科学」して「伝える」活動を、「都市」をテーマに実践中。新たな「問い」や「視点」との出合いが楽しみ。個人活動で「星空と宇宙の案内人」などもやっています。 |
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小泉 瑛一(Yoichi Koizumi) 建築家/ワークショップデザイナー/アーバン・サイエンス・ラボ研究員 1985年群馬県生まれ愛知県育ち、2010年横浜国立大学工学部卒業。2011年からオンデザイン。2011年ISHINOMAKI 2.0、2015年-2016年首都大学東京特任助教。参加型まちづくりやタクティカルアーバニズム、自転車交通を始めとしたモビリティといったキーワードを軸に、都市の未来を科学していきたいと考えています。 |
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さわだいっせい / ウエスギセイタ YADOKARI株式会社 共同代表取締役 住まいと暮らし・働き方の原点を問い直し、これからを考えるソーシャルデザインカンパニー「YADOKARI」。住まいや暮らしに関わる企画プロデュース、空き家・空き地の再活用、まちづくり支援、イベント・ワークショップなどを主に手がける。 また、世界中の小さな家やミニマルライフ事例を紹介する「YADOKARI(旧:未来住まい方会議)」、小さな暮らしを知る・体験する・実践するための「TINYHOUSE ORCHESTRA」を運営。250万円の移動式スモールハウス「INSPIRATION」や小屋型スモールハウス「THE SKELETON HUT」を発表。全国の遊休不動産・空き家のリユース情報を扱う「休日不動産」などを企画・運営。黒川紀章設計「中銀カプセルタワー」などの名建築の保全・再生や、可動産を活用した「TInys Yokohama Hinodecho」、「BETTARA STAND 日本橋(閉店)」などの施設を企画・運営。著書に「ニッポンの新しい小屋暮らし」「アイム・ミニマリスト」「未来住まい方会議」「月極本」などがある。 |