小屋×都市 #14 可能性を追求する小屋|都市を科学する〜小屋編〜 – オンデザインパートナーズ×YADOKARI

丸かったり、尖っていたり、浮いていたり。
通常の建物とは形が異なる小屋がある。
人の居場所となる「機能」だけでなく、
「楽しさ」「個性」を探求しているような、
小屋の事例を眺めてみたい。

ユニークな形の小屋たち

小屋はしばし、建物としてあまり見かけない形になる。

ヒュッゲなタイニーハウスが新風を巻き起こす?ニューヨークのとんがりキャビンに注目
via: baunetz.de

幾何学模様にこだわってみたり、

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ひし形だけで構成されたエストニアのサマーハウスvia: dornob.com

球になったり、

森の小人になった気分で楽しもう。球体のツリーハウス
Via: freespiritspheres.com

生物を模してみたり。

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繭の形のツリーハウス「Cocoon」
via: Dezeen

何を求めて、こんな形に?

こうしたユニークな形の小屋は、なぜつくられるのだろう?

与えられた条件の中で、機能を追求した「結果」ということはあるだろう。

低予算スモールハウス「Trailer」。トレーラーの上で組み立てるには、五角形が理にかなっていた。
via: http://www.architecturetoday.co.uk/

でも明らかに、その範疇を超える小屋もある。

キュートなふりして、実は頑丈。りんごのツリーハウス
via: http://www.homecrux.com/

「機能」とともに、「楽しさ」「美しさ」なんかを探求しているようだ。

UFO-Treehotel-1
スウェーデンの森に出没した宇宙からの訪問者?!「The UFO」
Via:inhabitat.com

加工技術や素材の進歩が、小屋の可能性を高める

ユニークな小屋ができる背景には、テクノロジーにより加工の自由度が上がったことがあるだろう。

職人技とデジタル製作の融合。DIYで作られたマイクロオフィス「Lighthouse」
via: archdaily.com

レーザーカッターや3Dプリンタなどのデジタル工作機械によって、ものづくりの環境は大きく変わっている。

3D技術を駆使したつくった未来型スモールハウス
via: http://www.archspace.cz

素材の選択肢も、増えている。

自然と一体になれる不思議空間。透明なバブルテントが持つ可能性
via: nouvo.com

ダンボールだって、素材にできるようだ。

全て段ボールでできたオフグリッドな家「Nido House」
via: http://www.abitare.it/

これはさすがに少し、“攻めすぎ”な気もするけれど。

-20℃もOK!雪上ダンボールハウス

可能性を追求する小屋

人は、可能性を追求したい生き物なのかもしれない。

建築家なら、建築が生み出す価値を高めたい。

空間を探求したらこうなった。立方体と球体が組み合わさったコンパクトな家
via: stevenholl.com

アートとしての表現を追求したかったり、

思い出と未来の建築アート。アルゼンチンの燃料タンクのシェルター
via: martinmarro.blogspot.com © Martín Marro

思いついた“遊び心”を実現してみたかったりすることはあるだろう。

Via:humble-homes.com
怖いもの知らずのあなたのための、ツリーハウスとブランコ「La Casa del Árbol」
Via:humble-homes.com

人の居場所という「機能」を備えつつも、DIYで手が届き、自由度が高い小屋。

試しにつくって何かの「可能性を追求する」のに、ちょうどよいのかもしれない。

(了)
<文:谷明洋、イラスト:千代田彩華>

【都市科学メモ】

小屋の魅力

いろいろな可能性を追求できる

生きる特性

DIYで手が届く規模感、素材や加工の高い自由度、物理的な制約

結果(得られるもの)

楽しさ、美しさ、遊び心の発揮場所、個性、発信力、建築の可能性

手段、方法、プロセスなど

おもしろい追求を考える
興味を持って追求できるテーマを考えたい。機能をところん突き詰めるでも良いし、形や素材に自らルールを課すこともできる。“遊び心”を発揮できれば、楽しい追求になるだろう。
実現方法を考える
ユニークな形でも、やり方次第で実現することはできるだろう。レーザーカッターや3Dプリンタといった、デジタル工作機械の活用も考えたい。
デジファブがかなえる、人と地域を結ぶ家づくり
いろいろな小屋を見て楽しむ
ユニークな小屋は、自分で所有したりつくったりせずに、見て回るのも楽しい。YADOKARIのサイトなどから情報を集め、訪ねてみてはどうだろう。
【Theory and Feeling(研究後記)】
長野県南部の松川町で2019年ゴールデン・ウィークから営業を始める「ツリードーム」があり、縁あって見学させてもらうことができました。「建っている」のではなく、吊られて宙に「浮いている」光景は、実際に見るとなかなかのインパクト。ドームからは、森の見え方なんかもずいぶんと変わるんだろうなぁ、と想像したら楽しくなりました。(たに)

 

「都市を科学する」の「小屋編」は、横浜市の建築設計事務所「オンデザイン」内で都市を科学する「アーバン・サイエンス・ラボ」と、「住」の視点から新たな豊かさを考え、実践し、発信するメディア「YADOKARI」の共同企画です。下記の4人で調査、研究、連載いたします。

谷 明洋(Akihiro Tani)
アーバン・サイエンス・ラボ主任研究員/科学コミュニケーター/星空と宇宙の案内人
1980年静岡市生まれ。天文少年→農学部→新聞記者→科学コミュニケーター(日本科学未来館)を経て、2018年からオンデザイン内の「アーバン・サイエンス・ラボ」主任研究員。「科学」して「伝える」活動を、「都市」をテーマに実践中。新たな「問い」や「視点」との出合いが楽しみ。個人活動で「星空と宇宙の案内人」などもやっています。

小泉 瑛一(Yoichi Koizumi)
建築家/ワークショップデザイナー/アーバン・サイエンス・ラボ研究員
1985年群馬県生まれ愛知県育ち、2010年横浜国立大学工学部卒業。2011年からオンデザイン。2011年ISHINOMAKI 2.0、2015年-2016年首都大学東京特任助教。参加型まちづくりやタクティカルアーバニズム、自転車交通を始めとしたモビリティといったキーワードを軸に、都市の未来を科学していきたいと考えています。

さわだいっせい / ウエスギセイタ
YADOKARI株式会社 共同代表取締役
住まいと暮らし・働き方の原点を問い直し、これからを考えるソーシャルデザインカンパニー「YADOKARI」。住まいや暮らしに関わる企画プロデュース、空き家・空き地の再活用、まちづくり支援、イベント・ワークショップなどを主に手がける。

また、世界中の小さな家やミニマルライフ事例を紹介する「YADOKARI(旧:未来住まい方会議)」、小さな暮らしを知る・体験する・実践するための「TINYHOUSE ORCHESTRA」を運営。250万円の移動式スモールハウス「INSPIRATION」や小屋型スモールハウス「THE SKELETON HUT」を発表。全国の遊休不動産・空き家のリユース情報を扱う「休日不動産」などを企画・運営。黒川紀章設計「中銀カプセルタワー」などの名建築の保全・再生や、可動産を活用した「TInys Yokohama Hinodecho」、「BETTARA STAND 日本橋(閉店)」などの施設を企画・運営。著書に「ニッポンの新しい小屋暮らし」「アイム・ミニマリスト」「未来住まい方会議」「月極本」などがある。