世界の小さな住まい方

必要なものはここにある、大富豪バートが小さな家を選ぶ理由「Tiny House of Burt’s Bees」

石井敦子プロフィールアイコン | 2014.11.24
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この小さくてかわいらしい家は、蜜蝋を使ったリップクリームやハンドクリーム製品でお馴染みのBurt’s Beesの共同創業者、バート・シャヴィッツの現在の住まいだ。

髭もじゃで、よれよれの帽子を被った彼の似顔絵と名前がロゴとなったパーソナルケア製品は、いまや1000億円*規模のブランドとなっている。これだけの成功を成し遂げた後も尚、シャヴィッツはお金には無頓着らしい。

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今年79歳のシャヴィッツは、ニューヨーク近郊で生まれ育ち、ドイツで従軍した。帰国してからは報道カメラマンとして44年前のニューヨークのセントラルパークで行われたアースデーに参加し、ジョン・F・ケネディーやマルコムXの姿を映した写真をタイムライフに寄稿している。その後、米国メイン州の田舎に移り住んだ。

彼がメイン州を選んだのにはわけがあった。子供のころから親に連れられてメイン州の田舎町に出かけ、そこにある湖で泳いだ楽しい記憶があったからだ。そのときに、いつかメイン州に住みたいと思っていたという。

シャヴィッツは当時を振り返って言う。「僕がメインに来た当初、住む家もなくお金もほとんどなかった。でも僕にはよき隣人たちがいた。彼らは、僕の仮住まいとなる小屋を建てるだけの木材を提供してくれたんだ。
僕の家にはゴミ捨て場から拾ってきた大きな窓が取り付けられていた。僕は夜、その窓から月が横切るのを観るのが好きだったよ。僕には馬毛のマットレスがあったし、キャンドルもあったし、電気が切れてしまっても特に困ることもなかった。僕は最高の場所にいたんだ。」

意図せずに1000億円*規模のブランドを築くきっかけになったのが、フェンスの支柱の上にいた蜂の群れたちだった。

「この仕事を始める前の年、僕が行商のためにはちみつを仕入れていた男が、僕が養蜂家になるための必要な材料をすべてくれたんだ。彼自身も養蜂家で、ハチの巣箱、マスク、手袋、巣箱の道具、なんでもだよ。その時、フェンスの支柱にいた蜂に僕は『おお、神よ、これぞ神の仕業か。絶対このチャンスを無駄にはしません!』と誓ったんだ。」彼はウェブ雑誌「デイリー・ビースト」にそう語っている。

この運命の糸によって、数年後シャヴィッツは彼がかつてはちみつを売り歩いていたバンを運転していた際に、ヒッチハイカーでシングルマザーだったロクサーン・クインビーと出会う。クインビーはシャヴィッツと小さなはちみつ工場を立ち上げ、その運営に夢中になった。ふたりは意気投合し、後に世界的に有名なブランドを立ち上げることになる。

残念ながら、シャビッツは従業員と関係を持っていたという問題で、クインビーに未公表額でこのブランドを買収されてしまった。シャビッツは現在、彼が養蜂と出会ったメイン州の田舎にある37エーカーの土地に戻った。
シャビッツはこれこそが彼の求めていたものだと語っている。 「僕の心はこの土地につながっていて、ここのすべてを愛している。ここには僕がひとりで住むのに十分なものがある。ここは静かで、子供の叫び声も聞こえないし、朝5時の車のエンジンの音もない。人にはそれぞれの心の故郷があると思うが、僕にとってはここがそうなんだ。」

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会社を不本意な形で退いた後でも、シャヴィッツは気に留める様子もない。「長い目で見たら、僕は土地を手に入れたし、それがすべてなんだ。土地はまさにすべてだ。金は小競り合いをする原因になる。 金によって人間は葬り去られてしまうんだ。そんなもの僕には価値がないし、いらないよ。」とシャビッツは語る。

大富豪であり、ブランドアイコンでもあるにも関わらず、シャビッツの心はヒッピーのままだ。雑然とした小さな家でテレビもなく、暖房器具も水を温める薪ストーブだけ。食事もベジタリアンという実に質素な暮らしぶりだ。しかもこの家の前には彼は七面鳥小屋に寝泊まりしていたという。

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贅沢な生活ができる経済力を持ちながら、彼はなぜ質素に暮らしているのだろうか。シャヴィッツは言う「単純に費用対効果のためだね。僕が暮らすのに誰の手を煩わすこともないし、それが気ままでいいんだよ。」

彼にとっての贅沢とはなんだろうか。「僕はたまにラジオを聴くよ。持ち運びができるタイプのラジオだ。アンテナもついている。アルミを巻きつけることで音が良くなるんだ。それから、冷蔵庫かな。」

幸せとは誰と比較するものでもなく、自分の心に従って自由に生きることなのかもしれない。

「僕は若くて美人な妻をお飾りにしているようなヤッピー的な上昇志向はないんだ。豪勢な家も、高価な車にも興味がない。僕はそんなものを求めていたわけじゃないからね。僕は必要なものはすでに手に入れていたんだ。誰も僕が野心的だなんて責めたことはないよ。」と彼は語っている。

彼の自由な精神に興味がある方、彼を題材にしたドキュメンタリー映画「Burt’s Buzz」が公開されている。日本では未公開だが、どこかの映画配給会社に問い合わせたら、もしかしたら日本で観る機会ができるかもしれない。

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*2007年にBurt’s Beesは洗剤などでも有名なClorox Companyに約1000億円($925,000,000 USD)で買収されている。

Via:
tinyhousetalk.com
nytimes.com
columbian.com
timesunion.com
mnn.com
denverpost.com
burtsbuzzdoc.com
en.wikipedia.org

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石井敦子プロフィールアイコン

Writer 石井敦子

世界の小さな住まい方ライター担当。

1970年東京生まれ、鎌倉育ち。幼少から未知の世界を求めて三輪車で近所を徘徊。米国への留学をきっかけに徘徊の規模が世界へと広がる。好奇心旺盛で、異文化への興味は特に強い。お呼びがかかれば、インドの結婚式にも馳せ参じるフットワークの軽さと、虫以外はなんでも食べる食欲がウリ。異国の住民目線の生活を好むため、旅の手段も現地人の家に転がり込む居候型。世界中で家族を増やす計画を実行中。鎌倉在住。好きな言葉「Nothing is useless(人生に無駄な経験なし)」

TW:@azkoishii
HP:Nomad Azko的世界放浪

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