世界の小さな住まい方

完成まで7年!アニメで見た理想の小さなコテージを夫婦でDIY!「Rudolph Cottage」

伊藤 愛プロフィールアイコン | 2015.4.4
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三角のうろこ屋根、木製の椅子が並べられた広いデッキのあるポーチ、下見板張りのペパーミントグリーンの外壁と、白く塗られたドアや窓枠のコンビネーション。オハイオ州に住むRonさんとSueさん夫婦のご自宅は、まさに「可愛らしい洋風のおうち」と聞いて私たちが思い浮かべるイメージそのものです。

この家はSueさんが子供の頃に観たアニメーションの、憧れの小さなコテージをイメージして建てられました。しかしこの「おうち」が建つまでには、その可愛らしい風情からは想像もできないような、大変な労力と膨大な時間が費やされていたのです。

この家は約12万㎡、東京ドームのおよそ2.6倍の広さのある、起伏に富んだ森林地帯の一角にあります。この広大な土地の購入時、夫婦にはあまりお金がなかったことから、まずは1968年式のキャンパーに二人は暮らし始めます。通常なら住宅ローンの関係上、土地を購入してあまり時間を空けずに家を建てますが、こちらのご夫婦の家はデザインも建築もご主人のRonさんが手がけ、家の資材をすべて集めるまでに二年、建て始めてから実際に住むまでにはさらに5年と、通常ならまずあり得ない、7年もの長い年月をかけてやっと完成させたマイホームなのです。

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隙間だらけで冬は大きなつららも下がるほど寒かった仮住まいのキャンパー。そこに家が完成するまでの約7年間、夫婦と一匹の犬、三匹の猫たちと共に暮らしました。一体どれだけの人がそんな長きに渡って自宅の完成を仮住まいで耐えることができるでしょうか?そのため約48㎡の「広い」新居に晴れてお引越しとなった時には、まるで豪邸にでも引っ越してきたかように感じたと言います。

けれどもいくら手間のかかるセルフビルドとはいえ、材料の調達になぜ2年もかかってしまったのでしょうか?これは既存の物を購入するのではなく、その土地の木材を伐採して乾燥させ、柱などに加工するという気の遠くなるような手間をかけているから。これは家具デザイナーであるRonさんのこだわりが関係しているのかもしれません。樹木の自然な形を活かした外壁のサイディングや、壁や床などの内装の木材も、全てRonさん自身の手でカットされています。

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資材集めから家づくりを始めたことは一見遠回りに見えるものの、サッシなど値段が高めの部材の購入ではこの方法がコスト対策に一役買いました。なんと窓は新品の在庫品をオークションで一枚5ドルで入手。あらかじめ決められたプランに沿って資材を調達するのではなく、安く手に入れた材料に合わせて家をデザインしているので、ユーティリティーの配管などの工事を含めても、全体の材料費はおよそ18,000ドル(約214万円※1ドル119円で計算、2015年3月末時点)に抑えることができました。Craiglistなどの不用品の売買サイトやオークション、ガレージセールなどを探してみれば、必要な材料が格安で見つかるはずとRonさんは言います。

この家の建築は家具職人のRonさんがこれまで手掛けた中で一番大きなキャビネットを製作するように進められました。玄関を入って正面にはコカ・コーラのレトロな看板を扉にはめ込んだカラフルでコンパクトなキッチンがお目見え。最近のお宅ではこのような壁付けのI型キッチンは少なくなってきましたが、光溢れるキッチンで、窓の外の景色を眺めながらのお料理やお皿洗いは作業がスイスイとはかどりそうです。

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そのキッチン左手には約18㎡のリビングが広がっています。寝室のあるロフトへのアクセスは、年齢を重ねた時のことを考え、はしごではなく階段を採用しました。夫婦二人とも物づくりが得意なアーティスト同士、ロフトの勾配屋根の塗装も水色とクリーム色のダイヤ柄にシダの模様を描くなど、普通のお宅ではなかなかできないような大胆な色使いが印象的です。家を自分たちのパレットに見立て、思う存分家づくりを楽しんでいる様子がここからも伝わってきます。もし失敗しても、あまりお金をかけずに短時間で修正できるのが小さな家のメリットなんだそう。

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長い間キャンパーの小さなバスルームで頑張ってきたので、この家のバスルームとシャワーは贅沢に空間を使いました。広々とした明るいバスルームには解体された建物から持ち帰った100年前のボードを張りました。ネイビーに塗られた腰壁や真っ白な天井のマリンテイストあふれる爽やかな空間に、ポップなビンテージ雑貨があちらこちらに飾られて、まるで一つの独立したお部屋のような雰囲気を持つ贅沢なバスルームになっています。

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家は買うものだという一般的な常識からみれば、キャンパーでの生活を続けながら7年の歳月をかけて小さな家を建てることの意義を見い出すことは難しいかもしれません。しかし家の購入も他の多くのモノと同様、手に入れた瞬間を頂点として、徐々にその喜びは色あせていくということはないでしょうか?

Ronさんが長い年月を費やして建てたこの家は、膨大な手間をかけた分愛着もさらに増すことでしょう。
「クリエティビティーはあなたの親友だ」と主張するこのご夫婦に、「理想の家作り」という生涯何度も味わうことのない楽しみを、長きに渡って二人に与えてくれたようです。

ローンがなければ本当の意味での持ち家なので、資産価値を考えて無難な間取りやインテリアにしなくとも、思いっきりやりたいように家に手を加えることも可能です。
せっかく自分たちの家を持つのなら、このご夫婦の真似はできなくとも、少しづつ楽しみながら家作りに積極的に関わってみたいもの。その過程の中で、所有欲を満たすための「house」から、心身ともに癒してくれる「home」へと、そこに住む私たちと住まいとの関係が、徐々に確かなものへと変化していくのではないでしょうか?

Via:
smallhousebliss.com
minimalismissimple.com

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YADOKARI「未来働き方会議」オープン!

伊藤 愛プロフィールアイコン

Writer 伊藤 愛

1975年、北海道羊蹄山麓の雪深い町に生まれる。
半ミニマリスト的生活を送る中で小さな家に興味を抱く。
元々美しい家やインテリアが三度の飯よりも好き。

学生時代訪れたイギリスで古い建築が市井の人々の生活の場として機能していることに感銘を受ける。
そのノリで札幌市郊外の中古住宅に住み、真夜中に突如思いつきで家のペイントを始める「ゲリラ的DIY」を敢行するも、
往々にしてあまりに微妙過ぎて家族にも気付かれていない。

そんな生活から一変、降って湧いた引っ越しで持ち家や車を手放すと、人生一度きりという言葉がリアルに迫ってきた。
今では美しい風景を求めて旅に出たいとウズウズする毎日。

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