
7月22日(水)、YADOKARIがエリアブランディングを手掛ける、相鉄本線(星川〜天王町駅間)の高架下施設・星天qlayのBゾーン「qlaytion gallery」にて、第12回目となる「星天qlay LAB(ラボ)」が開催されました。
「星天qlay LAB(ラボ)」は、暮らしやまち・消費・学び・働き方など多様な切り口を”遊び”の視点で捉え直し、探求するトーク&ワークショップイベントです。
今回のテーマは、「日常の中の循環 」。
ゲストには、2026年8月に循環文化創造拠点としてOPENした「Sta.R」を運営している、アーティクル株式会社の石塚和人さんとRoute Design合同会社 代表の津田賀央さんをお迎えしました。
ものをつくり、使い、次へとつないでいくこと。人と人が出会い、新たな活動が生まれていくこと。
おふたりのこれまでの活動や、場所づくりに込めた想いをたどりながら、私たち一人ひとりが、まちや日常の「循環」にどう関わっていけるのかを考えました。
いつもの景色の中に、新しい可能性を見つける。そんな気づきが生まれた当日の様子をレポートします。

「循環」と聞いて、何を思い浮かべる?
イベントは、ファシリテーターのYADORESI住民日置さんによるアイスブレイクからスタート。
「『循環』という言葉を聞いて、どんなことを思い浮かべますか?」
そんな問いかけに対し、参加者は、思い浮かぶことの多さを手の高さで表現してみます。たくさん思い浮かぶ人は手を高く、まだあまり思い浮かばない人は膝の上に。
同じ言葉を聞いても、思い浮かべることは人それぞれ。まずは自分自身が「循環」という言葉をどう捉えているのか、身体を使って確かめる時間となりました。
「トークが終わったときには、最初よりも手が高く上がっているといいですね。」
そんな言葉をきっかけに、今回のLABが幕を開けました。
「捨てる」から「循環させる」へ。石塚さんが考える、ものとの新しい関係
最初のトークは、アーティクル株式会社の石塚さんから。
石塚さんは、前身のHarch株式会社に在籍していた頃から、循環型社会をテーマにさまざまな活動に取り組んできました。これまで星天qlayとの関わりもあり、今回の会場となった「qlaytion gallery」でアップサイクル商品の展示・販売を行ったこともあります。
そんな石塚さんがまず紹介したのは、「線形経済(リニアエコノミー)」と「循環経済(サーキュラーエコノミー)」という2つの考え方です。

石塚さん(以下敬称略):「従来の社会は、一方通行の社会。使い終わったら捨てる、という線形の社会でした。一方で私たちが大切にしているのは、何かからものをつくって使う。そして、使い終わったらリサイクル・アップサイクルして再度使う。そうやって、ものを循環させていく社会です。」
つくって、使って、捨てる。その一方通行の流れを見直し、使い終わったものにも新たな役割を見つけていく。そうした考え方を、石塚さんはこれまでの実践を交えながら紹介。
たとえば、社会を「もっと」よくするアイデアを集めたウェブマガジン「IDEAS FOR GOOD」や、横浜市内のサーキュラーエコノミーを加速させるプラットフォーム「Circular Yokohama」などの取り組み。
身近なところでは、過去にqlaytion galleryで、コーヒーかすを使って絵を描くワークショップを開催するなど、素材の新たな可能性を探る実践も行ってきたといいます。
「使い終わったら、捨てる」。そんな当たり前になっていたものとの関係を、少し違う角度から捉え直してみる。石塚さんの話からは、日常の中にも、循環のきっかけがたくさん隠れていることが伝わってきます。
「循環・創造・文化」が交わる、新たな拠点「Sta.R」
そして話は、星天qlayに新たに誕生する「Sta.R」へ。
Sta.Rは、「循環・創造・文化」をテーマにした循環文化創造拠点です。館内には、アップサイクル商品を購入できるショップをはじめ、さまざまな素材に触れられるマテリアル・ライブラリー、素材や作品を展示・発信するギャラリーが設けられています。

石塚:「マテリアル・ライブラリーには、たとえば小学校の体育館で使われていた床材を細かなブロック状にしたものなど、さまざまな場所から集められた素材が並びます。例えば、かつて体育館の床だったものが、別の場所では工作の素材になることもありますよね。
そんなふうに、ものの過去を知り、実際に手で触れることで、『捨てられるはずだったもの』の新たな可能性に気づくことができるのが、マテリアル・ライブラリーです。」
実際に、マテリアル・ライブラリーをきっかけに、地域の人から「うちにもこれがある!」「こういったものは使えないだろうか?」といった声が上がることもあったそう。使われなくなったものに改めて目が向き、会話が生まれる。そんな何気ないやりとりも、ものの新たな可能性を探る第一歩です。
また、マテリアル・ライブラリーにある素材を使って、クリエイターが作品を制作したり、ワークショップを開催したこともあるといいます。
Sta.Rで素材と出会い、そこで生まれた作品やアイデアを再びまちへとひらいていく。
施設やテナントという枠を越えて、人や場所がつながることで、循環の輪が広がっていく。石塚さんの話からは、星天qlayの中でこれから生まれていく、新たな活動への期待が膨らみました。
人がつながることで、新しい活動が生まれる。津田さんがPILEに込めた想い
続いては、Route Design合同会社代表であり、PILEの運営代表を務める津田さんのトークです。
PILEは、星天qlay Dゾーンにある「新たな創造のための、自由な協働空間」をコンセプトに掲げるクリエイター向けの協働制作スタジオ。パソコンを使ったデスクワークはもちろん、ペインティングや工作といったアナログな制作にも対応しています。
また、PILEでは年間100本以上のイベントを開催。施設を訪れる人の「こんなことをやってみたい」という声を拾いながら、地域の人や通うクリエイターと一緒に、さまざまな企画をつくり出しているといいます。

そんなPILEの背景には、津田さんが長野県富士見町で運営してきた「富士見 森のオフィス 」の経験があるそう。
津田さん(以下敬称略):「PILEを語る上で欠かすことができないのが、長野県富士見町にある富士見 森のオフィスです。当時、サラリーマンとして大きい会社に勤めていたけど、働き方ってそれだけでいいんだっけ。と思い、富士見 森のオフィスをつくりました。」
2015年12月にオープンした富士見 森のオフィスは、八ヶ岳の麓にある木造の複合施設。コワーキングスペースや個室オフィス、キッチン、宿泊施設などを備え、周辺住民や都心から訪れる人たちが集う場所として運営されてきました。
さまざまな人が同じ場所で働くうちに、つながりが生まれ、一緒に取り組むプロジェクトが動き出す。単に仕事をするための場所ではなく、人と人との出会いから、新しい活動が生まれる場所となったそうです。
さらに、2020年からは、働く場から自然環境に対して責任ある意識と行動を広めるプロジェクト「GREEN COMMUNITY」を推進。オフィス運営における環境負荷の改善にも取り組み、日本で初めてゼロ・ウェイスト認証(廃棄物削減や資源循環の取り組みを評価し、事業者や地域の活動を公的に認証する制度)を取得したコワーキングスペースとなりました。
そして、津田さんが次に挑戦したいと考えたのが、生まれ育った横浜だったそうでーー。
津田:「仕事をする場所としての機能だけでなく、そこに集まる人たちがつながり、地域の人と一緒にプロジェクトを動かしていく。富士見 森のオフィスにある光景は、富士見町だからできたのか、再現性をもってできるのか?生まれ育った横浜で挑戦したいと思いました。」
こうして誕生したのが、星天qlayのPILEです。
津田:「日本のコワーキングスペースは、綺麗で、スペースが仕切られていて、個々がパソコン持ってきて作業するという形式が多いですが、もっと人がつながれる場があってもいいと思ったんです」。
人が集まり、互いの活動を知り、時には一緒に手を動かしてみる。そうした関わりの中から、ひとりでは思いつかなかったアイデアや、新たなプロジェクトが生まれていきます。
津田さんがつくろうとしているのは、単に作業をするための場所ではなく、人と人がつながることで創造が生まれる場所なのだと語ってくださいました。

Sta.RとPILEを行き来する。ものも、人も、創造も循環するまちへ
石塚さんと津田さん、それぞれの話を通して見えてきたのは、Sta.RとPILEがつながることで生まれる、新しい循環のかたちです。
津田:「Sta.Rができた今、星川にあるSta.Rでアートの素材を収集して、その素材をつくって天王町にあるPILEで工作をする。そこでできた作品をSta.Rで展示する。あつめてつくって、外で展示する。いったり来たり、クリエイティブが循環する場になることを目指しています。循環するのは、ものだけではなく、人の循環もあると思います。」
Sta.Rで素材を見つけ、PILEで作品をつくる。そして、その作品をSta.Rで展示し、また誰かが新しい発想を得る。
ものが場所を移動するだけでなく、人が場所を行き来し、出会いが生まれ、次の活動へとつながっていく。Sta.RとPILEは、そんな循環を星天qlayの中から育んでいこうとしていることが、私たちにも伝わってくるおふたりのトークでした。

おふたりのクロストーク。「わたし」は、どう関われるだろう?
それぞれのトークの後は、ファシリテーターの日置さんと、YADOKARIの君塚さんも交えたクロストークへ。

日置さん:「Sta.Rをどう使ってほしいですか?」

石塚:「これからみんなでつくっていく場所。ぜひ一回きて、どんなふうに関われるのか、考えてみてください。」
津田:「正直、もう少し後になってから来てほしいです(笑)。その時はもっと楽しめると思いますから(笑)。」
会場から笑いがこぼれる、和やかなやりとり。完成した場所を利用するだけでなく、これからどんな場所になっていくのかを、一緒に考え、関わっていく余地がある。そんなおふたりの言葉から、Sta.RとPILEが目指す場所のあり方も伝わってきました。

トークの締めくくりには、参加者同士で感想を共有する時間もありました。
「今日の話を聞いて、どう思いましたか?」
「あなたにとって、循環とはどんなものですか?」
隣の人と話しながら、自分の中に生まれた気づきを言葉にしていきます。


イベントの冒頭では、まだ漠然としていた「循環」という言葉が、ものづくりや働き方、人とのつながりといった具体的な話を聞き、誰かと感想を交わすことで、少しずつ自分自身の暮らしに近づいていきます。
そして最後に、もう一度「循環」という言葉を思い浮かべ、手の高さで表現してみると…。参加者のみなさんの手は、イベントの始まりよりも高く上がっていました。
まちの循環は、日常の小さな関わりから
「循環」と聞くと、環境問題やリサイクルなど、少し大きなテーマを思い浮かべるかもしれません。
けれど、今回のLABで見えてきた循環は、もっと身近なところにもありました。
ものの過去を知り、新しい使い道を考えてみること。いつもと違う場所に足を運び、誰かの活動に触れてみること。自分の「やってみたい」を誰かに話してみること。
そうした小さな行動が、ものの新たな価値を見つけたり、人とのつながりを生み出したり、次の創造へとつながっていくのかもしれません。
今回のLABが、参加してくださった一人ひとりにとって、自分ならどんなふうに循環に関われるだろう、と考えるきっかけになっていたらうれしく思います。
Sta.RとPILEを行き来しながら、ものも、人も、アイデアも巡っていく。星天qlayから生まれるこれからの循環に、ぜひ注目してみてください。
ご参加いただいた皆さま、ありがとうございました!