家入一真さん vol.1 クラウドファンディングは小さき物語の集積。“声を上げられる”ことが大事

2017年2月23日 、 YADOKARIが運営するイベントスペース・オープンカフェキッチン「BETTARA STAND 日本橋」で、「『お金』と『コミュニティ』の新たな価値を捉え、「小さな経済圏」をつくる。僕らが目指す◯◯の民主化。」と題し、家入一真さんへの公開インタビューを行った。

多くのビジネスやウェブサービスを立ち上げてきた家入さん。現在は居場所づくりにも力を入れている

この特集記事では、4回にわたって公開インタビューの内容を編集してお届けする。第1回は、YADOKARI編集部がモデレーターとなり、家入さんのキャリアや働き方について伺った。連続起業家とも名乗っていた家入さんが、今、クラウドファンディング「CAMPFIRE」に最も注力している背景はどんなところにあるのだろう。

vol.1 『クラウドファンディングは小さき物語の集積。“声を上げられる”ことが大事
vol.2 誰もに居場所をつくりたい」、そのための“人生定額プラン”構想
vol.3 共犯の関係性と、マネージメントしないマネージメント
vol.4 いい人って実はしんどい。いい人でなくても生きていける世の中に

家入一真(いえいり かずま)
1978年生まれ、福岡県出身。株式会社paperboy&co.(現GMOペパボ)を福岡で創業し、「ロリポップ」「カラーミーショップ」「ブクログ」「minne」などを創る。2008年にJASDAQ市場へ上場。退任後、クラウドファンディング「CAMPFIRE」を運営する株式会社CAMPFIREを創業、代表取締役に就任。他にも「BASE」「PAY.JP」を運営するBASE株式会社、数十社のスタートアップ投資‧育成を行う株式会社partyfactory、スタートアップの再生を行う株式会社XIMERAなどの創業、現代の駆け込み寺シェアハウス「リバ邸」の全国展開なども。インターネットが趣味であり居場所で、Twitterのフォロワーは15万人を超える。

クラウドファンディングは声を上げられる場所

──家入さんはこれまでに複数の会社を創業したりプロジェクトを立ち上げたり、いろいろなことをされています。最初に伺いたいのですが、ご自身で今の肩書は何だと思いますか。

家入一真(以下家入):クラウドファンディングの「CAMPFIRE」、スマートECサービスの「BASE」、現代の駆け込み寺としてのシェアハウス「リバ邸」などいろいろやってますが、「CAMPFIRE」の代表っていう感じですかね。「肩書にこだわってない」って言えば言うほどこだわってるみたいになっちゃうので、一時期は、“連続起業家”って言ってたんですけど、そうすると今度はなんだか胡散臭くなっちゃうし……。

肩書き、なんですかねえ。生きるハードルをなるべく下げたい、家入一真です(笑)。

──(笑)。生きるハードルをなるべく下げつつ、今はクラウドファンディングの「CAMPFIRE」に一番力を入れていると。

たとえば最近だと地方に呼ばれてお話をしたり、地方行政や地方の方々と連携してプロジェクトを立ち上げたりすることがすごく多いんです。実は「CAMPFIRE」は地方のいろんな課題に対して割とシンプルに仲間を集めて、お金を集めるっていうことができるんですよ。

今までも、「こぼれ落ちた人のためのシェアハウスつくろう」とか「学費が払えない学生の学費をみんなで集めよう」とか「完全無料のプログラミングスクールやろう」とか、いろんな形でやってきたことを、全部クラウドファンディングのプラットフォームに落とし込めるというか。それが今の自分にはすごいフィットしているんです。

──クラウドファンディングで特に力を注ぎたい領域やプロジェクトはありますか。

家入:クラウドファンディングって有名な方や大きいお金が集まったものが注目されがちですが、名もないような地方の学生やクリエイターなどが、小さい金額、例えば5万円とか10万円を集めて、「個展をやりたい」「フリーペーパーを作りたい」みたいなものこそがクラウドファンディングの本質だと思ってますので、そういったプロジェクトは個人的には超絶応援しています。

──家入さんが、以前から行っているスタートアップに出資するといったことも、「名もなき活動を支えたい」ということと、通じますね。

家入:よく起業したいという若い子が事業計画書を持ってくるんですけど、「なんでそれをやろうと思うんですか」ってことをまず聞くんです。そのときに「面白そうだから」とか「もうかりそうじゃないですか」なんて答えが返ってきたら、その時点で僕の興味は半分薄れちゃってる。

でも、その裏に「自分はこういう生き方をしてきて、こういうふうにいろんなことを感じて、今それを解決すべく、こういうことをやろうと思ってます」ってなると、物語が文脈で繋がるというか、その人だからこそやる必然性があることじゃないですか。人にひも付くんですね、すべて。

小さな物語の集積っていうのがすごく大事だと思っていて、これこそがインターネットの本質だな、と。

当日は家入さんの話を聞こうと満席の盛況ぶり

──クラウドファンディングで成功する・しないにかわわらずいろんな物語が生まれて、その物語を応援する人がつながっているのですね。

家入:そうですね。僕らはプラットフォームとしてなるべく多く成立する人を増やしたいなとは、もちろん思ってるんですけど、お金が集まるプロジェクトもあれば、集まらないプロジェクトもある。

それでもまず第一に大事なのは、誰でも声を上げられることだと思ってるんですよ。「クラウドファンディングを使えば、必ず夢は叶います」っていう嘘は、絶対僕はつきたくない。「夢は叶うかもしんないし叶わないかもしんないし、叶わない人のほうが大多数だけど、まず声を上げることはできますよ」っていうことが、クラウドファンディングで言いたいことなんです。

──家入さんが名もなき人や小さな単位に思いを寄せる動機は、どこから来るのでしょうか。

家入:僕、インターネットがすごく好きなんです。それはインターネットって、いろんな物事を“民主化”したなと思っているからで。

不特定多数の人たちの前で歌ったり踊ったりするのって、かつてはある意味テレビの向こう側の特権だったわけですよね。出版も同じ。一般の人がなかなかできなかったことが気づけば今は手元のスマホでやれちゃうわけです。これ、民主化ですよね。本来歌ったり踊ったりというのはもっと身近にあったはず。遠くに行ってしまったモノゴトを再度僕たちの手元へ取り戻せたってのが、インターネットの役割だと思っていて。

じゃあクラウドファンディングって何だろうって考えたときに、それはお金集めの民主化なんじゃないかと。何かやりたいと思ったときに、銀行にお金を借りに行くとか、投資家を見つけてくるとか、なかなかハードルが高いじゃないですか。その、「自分がやろうとしてること」を心から応援してくれる人たちから、少しずつお金をカンパしていただいて、それで物事を始めるっていうのは、これはもう、お金集めの民主化であり、最近何かと話題になる「フィンテック」と呼ばれることの本質であると僕は思っています。

──「CAMPFIRE」について、家入さんはそれをどこまで成長させたいのか、何のために成長したいのか、伺いたいのですが。

家入:いい質問ですね。「頑張れ、頑張れ、頑張れ、頑張れ」みたいな時代でもないし、「大きいことがいいことだ」っていう時代でもない。むしろ「大きいと逃げ遅れる」。そう思ってるんですけど。一方でもっと関わる人を増やして、もっとやばい集団にしたいみたいな思いもあるし、そのためには稼がなきゃいけない。「CAMPFIRE」の経済圏を大きくして、その中でダイナミックな動きをしたいってのも、もちろんあります。動かせるお金が大きくなれば、それだけ選択肢も増えますから。こうした相反する気持ちが自分の中に同居してる感じですかね。うまく言語化できないんですけど、あえて答えを出さないっていう感じかもしれないです。答え出しちゃうと、どっちかを否定してしまうので。

本当は成長とかどうでもいいんですよね。ただ、今いるスタッフも含めて「CAMPFIRE」にかかわる人間が「ああ、ここで働いてよかったな」って思える場所をつくれたら、というのはすごくあります。


人間が本来身近にやっていたことを取り戻すことが民主化であり、インターネットの本質だと家入さんは言う。

20代前半からインターネットの世界で多様なサービスを展開してきた家入さんの働き方に通貫するのは、「名もなき市井の小さな物語を応援する」ということ。

クラウドファンディング「CAMPFIRE」はインターネットプラットフォーマーとしての立ち位置を貫いてきた家入さんの集大成と言ってもいい。小さな物語について声を上げる人、具体的に応援したい人、それぞれの居場所を提供することで、経済的な切り口から物語の出発や継続を支援するという流れは今後より活発になるに違いない。

第2回は、家入さんの考える、居場所について掘り下げていく。シェアする暮らしで目指す優しい社会とは?

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