Bather's Cabinは、イギリスの建築スタジオBuilt Worksがイースト・サセックスの森に手がけた小屋だ。黒く焼いたカラマツをまとった角ばった建物で、苔むした屋上にはサウナとホットタブ、アイスバスが並んでいる。
Built Worksは、屋上のデッキを「入浴という儀式のためだけに捧げたかった」と話す。森に根ざしながら、少しだけ別の世界へ運ばれるような場所。そんな屋上から、この家での時間ははじまる。
屋根から迎え入れる、斜面のふもとの小屋
建っているのはGreat Park Farmという農場の一角だ。ここにはBuilt Worksが営む宿泊事業Architects Holidayのための木の建物がいくつも点在している。ヨガスタジオを中心にしたYogi's Cabinや、Drying Shed Saunaもそのひとつだ。
Bather's Cabinは急な斜面のふもと、小さな小川のそばに置かれた。屋上がちょうど斜面の上と同じ高さになるよう、場所が選ばれている。
だから訪れた人は、まず屋根の上にたどり着き、そこから中へと降りていく。建物と土地の高低差が、そのまま体験の順序になっているのが面白い。
屋上を彩るのは、この小屋を建てた土地からそのまま移した苔や草、シダだ。まるで森の地面が持ち上げられて、そこに置かれたかのよう。植栽の上には板張りの通路が浮かぶように架けられ、緑のあいだを歩きながら湯と水を行き来できる。
古い穀物倉に学んだ、黒い段の外壁
角ばったかたちは、敷地や周辺に残る1960年代の穀物倉がモデルだ。包み込まれるような、守られている感覚を意図したという。
外壁には地元の製材所から仕入れたカラマツを使い、パインタールで黒く仕上げた。板は段状に重ねられ、伝統的な穀物倉の階段のような形を思わせる。
どっしりとした塊のような建物なのに、段があることで輪郭がほどける。特に夜は、黒いシルエットが少しずつ森に溶けていくのだとBuilt Worksは語る。
扉の少ない十字の間取りと手の仕事
室内は十字形に組まれ、東西南北それぞれに眺めが開く。中心には開かれた場所があり、さまざまな機能がそのまわりに配置されている。
扉はできるだけ減らし、プライバシーが必要なところはカーテンでやわらかく仕切る。そのカーテンも手づくりで、この家の平面図のかたちがブロックプリントされている。
素材は、地元のもの、手を加えすぎないものが選ばれた。バスルームのタイルは、共同代表のHarry Kayが家族と一緒につくったものだ。花の型押しとともに、子どもたちの指の跡が残されている。
家具は杉のブロックから削り出され、建物の幾何学的なかたちと呼応する。床には現場で手切りした英国産オークの寄木が敷かれ、断熱には英国で育てて加工されたヘンプが使われた。
湯に浸かり、冷たい水に身を沈め、苔の上を歩く。大きな設備を誇るのではなく、土地の緑や手の跡をそっと重ねていくことで、この小屋は森の一部になろうとしている。
湯を浴びることを暮らしの儀式として大切にしてきた感覚は、日本の私たちにも馴染み深い。小さな建物だからこそ、ひとつの時間を丁寧に味わえるのかもしれない。
Bather's Cabinのデータ
- 物件名:Bather's Cabin
- 設計:Built Works
- 国:イギリス
- 地域:イースト・サセックス(Great Park Farm)
- 写真:Connor Duffy
Bather's Cabinのよくある質問
Q. Bather's Cabinはどこにある?
A. イギリス・イースト・サセックスのGreat Park Farmの森の中にある。急な斜面のふもと、小川のそばに建っている。
Q. Bather's Cabinを設計したのは誰?
A. イギリスの建築スタジオBuilt Worksだ。2018年にHarry KayとWill Gowlandが立ち上げたスタジオである。
Q. 屋上には何がある?
A. 敷地から移植した苔や草、シダの庭があり、サウナとホットタブ、アイスバスが設けられている。庭の上には浮かぶように板張りの通路が架かる。
via: https://www.dezeen.com/2026/09/12/bathers-cabin-built-works
関連:トレーラーハウスの記事一覧/小屋の記事一覧/タイニーハウスの記事一覧